空室が増えるたびに家賃収入が減り、修繕のたびに追加費用がかさむ――このような悩みを抱え、「管理会社を替えるべきか、それとも自主管理で節約すべきか」と迷うオーナーは少なくありません。実は管理体制を見直すだけで、家賃収入の安定と物件価値の維持を同時に達成することが可能です。本記事では、収益物件の運用歴十五年の経験をもとに、管理会社の役割、選び方、そして今からでも実践できる収支改善策までを順序立てて解説します。読み終えるころには、自分に合う管理スタイルを明確にできるはずです。
収益物件を持つ意味を整理する

まず押さえておきたいのは、収益物件を保有する目的が「長期の家賃収入」と「資産価値の上昇」という二本柱である点です。家賃のみを追うと修繕を後回しにしがちですが、資産価値が低下すれば売却益も細ります。つまり収益と資産性は表裏一体であり、管理の質が両者を左右します。
次の視点として、国土交通省「令和六年度住宅市場動向調査」によれば、適切な修繕計画を持つ物件は、十年間の累積空室率が平均で七ポイント低いという結果が出ています。これは管理体制が賃貸需要に直結することを示しています。また、金融機関が融資を審査する際も、管理状況が良好な物件は評価が上がり、追加投資がしやすくなる傾向があります。
したがって、物件を購入した後も継続的に管理レベルを高める意義は大きく、将来の出口戦略を柔軟にするうえでも不可欠です。
管理会社はなぜ必要か

重要なのは、管理会社が単なる家賃集金代行ではなく、「収益と資産を守る専門家」であるという認識です。入居募集、家賃督促、退去精算、修繕手配など、細かな業務をシステム化しないと、オーナー自身の時間的コストが膨らみます。
総務省「令和七年就業構造基本調査」によると、兼業オーナーの週当たり管理作業時間は平均七時間で、自主管理の場合は十一時間に増えます。時間を本業や追加投資に充てるほうが、機会費用を考えると合理的です。また、管理会社が入ることで法的トラブルのリスクも下げられます。賃貸借契約は消費者契約法や民法改正に対応する必要があり、専門知識が欠かせません。
結論として、規模が小さい段階でも管理会社の活用は費用対効果が高く、特に複数物件を目指すなら早期の外部委託が望ましいといえます。
今から選べる管理会社の見極め方
ポイントは「管理実績」「報酬体系」「情報開示」の三要素をバランス良く比較することです。まず管理実績ですが、類似エリアでの入居率を確認し、九五%以上を安定して維持している会社が理想的です。物件規模が近い参考データを求めると、実態を把握しやすくなります。
次に報酬体系です。管理手数料は家賃の三〜五%が相場ですが、安さだけで選ぶとサポート範囲が限定されがちです。たとえば深夜トラブル対応や原状回復立ち会いが別料金となるケースがあります。トータルコストを試算し、固定費と成果報酬のバランスを確認しましょう。
最後に情報開示です。月次報告書に加え、修繕履歴やクレーム対応の詳細まで共有する会社は信頼度が高いといえます。オンラインで図面や写真を閲覧できる仕組みがあると、遠隔地オーナーでも状況を把握しやすく、意思決定が迅速になります。
これら三要素をチェックリスト化し、面談時に具体的な資料提示を求めることで、数字に基づく比較が可能になります。
管理委託後のフォローと収支改善術
実は管理会社を選んだあとも、オーナーの関与度合いが収益を左右します。まず定例の報告書が届いたら、入居率や修繕履歴を前年同月と比較し、異常値の有無を確認しましょう。改善が必要な場合は、早めに打ち手を協議する姿勢が大切です。
さらに、長期修繕計画を共同で策定することが、突発的な出費を抑える近道です。国交省「長期修繕計画ガイドライン2024」では、外壁や設備を十年単位で積立計画に落とし込む方法を提示しています。計画を基に管理会社へ見積りを依頼すれば、相見積りをとる際の基準になり、コスト圧縮につながります。
家賃アップの余地がある場合は、データに基づき改善提案を受けることも重要です。たとえば共用部へのLED照明導入で電気代が三割下がった実績があれば、数値を示したうえで家賃を月五百円上げても入居者の納得感が得られます。小さな改善の積み重ねが、最終的に年間キャッシュフローを大きく押し上げることを覚えておきましょう。
まとめ
収益物件を安定運用するには、管理会社選びとその後のフォローが車の両輪です。自主管理の節約効果は一時的でも、専門性と時間コストを考慮すると、外部委託が長期収支を改善する可能性が高いといえます。まずは本記事で紹介した三要素のチェックリストを活用し、今からでも管理体制を見直してみてください。行動を起こすことで、家賃収入の最大化と資産価値の維持を同時に実現できるはずです。
参考文献・出典
- 国土交通省 住宅市場動向調査 令和六年度版 – https://www.mlit.go.jp
- 国土交通省 長期修繕計画ガイドライン 2024 – https://www.mlit.go.jp
- 総務省 就業構造基本調査 令和七年予測値 – https://www.stat.go.jp
- 日本賃貸住宅管理協会 管理受託実績レポート2025 – https://www.jpm.jp
- 住宅金融支援機構 2025年度 フラット35利用実態調査 – https://www.jhf.go.jp