不動産の税金

マンション投資 危険?一棟買いで失敗しない術

マンション一棟をまるごと買う投資は、区分所有より高い利回りが期待できるとよく言われます。ところが想定外の修繕費や空室でキャッシュフローが赤字となり、ローン返済に苦しむ相談が後を絶ちません。特に初心者ほど営業トークをうのみにして高額物件へ突き進みがちです。本記事では「マンション投資 危険 一棟買い」という不安の正体をひもとき、2025年10月時点の市場データと制度を踏まえ、安全にスタートするための考え方と実践策をわかりやすく解説します。

なぜ一棟買いは魅力的に見えるのか

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まず押さえておきたいのは、一棟買いには「規模の経済」が働きやすいという点です。複数戸の家賃収入を一気に得られるため、満室時の表面利回りは区分所有より高くなる傾向があります。収支シミュレーション上はローン返済後の手残りが大きく映り、投資家の目をひく理由はここにあります。

実は、管理方針を自分で決められる点も魅力です。区分所有では管理組合の合意形成に時間がかかるものの、一棟物なら修繕計画や賃料改定を機動的に行えます。スピーディーな意思決定は、長期の収益力を高めるうえで有利に働きます。

さらに、建物と土地の両方を所有するため、減価償却費を多く計上できる場合があります。木造なら最短22年、RC造でも47年と法定耐用年数が長く、節税メリットが期待できる点が投資家心理を後押しします。

しかし、これらの利点は適切な資金計画と管理体制があってこそ活きます。表面利回りの数字だけで判断すると、後述するリスクが顕在化したときに取り返しがつかなくなるおそれがあります。

見落としやすい三つのリスク

見落としやすい三つのリスクのイメージ

ポイントは、一棟買い特有のリスクが同時多発的に起こりやすいことです。利点が大きい半面、その陰には複数の落とし穴が隠れています。

最初に襲ってくるのが融資リスクです。物件価格が1億円を超えることも珍しくなく、自己資金が少ないままフルローンを組むと返済比率が40%を超える例もあります。金利が1%上昇するだけで年間返済額が数百万円増え、キャッシュフローが急速に悪化します。2025年現在、金融機関は自己資金20%を目安に審査を厳格化しており、資金ショートの相談件数は国土交通省の調査でも増加傾向です。

次に運営リスクがあります。一棟物は空室が複数戸に波及するため、5戸空けば家賃が一気に15〜20%減ることも珍しくありません。国立社会保障・人口問題研究所の推計では、地方圏の単身世帯が今後も減少するとされ、入居付けの難易度は年々上がっています。つまり立地選定を誤ると、空室連鎖が長期化し資金繰りを圧迫します。

三つ目は出口リスクです。一棟物は買い手が限定され、売却までに平均9〜12カ月かかるといわれます。築年数が進むほど金融機関の融資姿勢が厳しくなり、買い手側も自己資金割合を増やす必要があるため、売却価格が想定より2割以上下がる事例もあります。出口戦略を持たずに購入すると、資金回収が難航しかねません。

キャッシュフローを守る資金計画の作り方

重要なのは、最初に「守りの計画」を立てることです。高利回りの物件を探すよりも先に、資金繰りに耐えられる仕組みを整えるほうが安全です。

まずローン借入比率は70%以下を目標にします。自己資金を3割入れると金利優遇を受けやすく、返済負担率も抑えられます。毎月返済額が家賃収入の50%を超えない範囲に収めると、金利が1%上昇しても赤字転落を防ぎやすいです。

次に修繕積立を計画的に行います。管理会社への委託費とは別に、年間家賃収入の10%を目安として「予備費口座」を用意してください。外壁補修や屋上防水は一度に500万円規模でかかることが多く、前もって積み立てておくことでローンの追加借入を避けられます。

さらに、購入前のシミュレーションでは「空室率20%・家賃下落10%・金利上昇1.5%」という厳しい条件を入れてみましょう。日本銀行の金融システムレポート(2025年4月)によれば、変動金利の平均は1.1%ですが、金融政策変更で2%台に戻る可能性も指摘されています。ストレスシナリオで黒字を確保できる物件なら、実際の運営はより安心です。

2025年時点の融資環境と税制をどう読むか

実は、2025年の融資環境は「低金利だが審査は厳格」という二面性があります。住宅ローンに比べて投資用ローンはリスクヘッジの観点から自己資金を重視する傾向が強まっています。

三井住友トラスト基礎研究所の調査によれば、2025年度の投資用ローン平均金利は変動型で1.25%、固定型で2.10%前後です。低金利自体は追い風ですが、返済比率が高いと審査落ちとなる事例が増えています。同行担当者は「自己資金2割以上と家賃収入以外の安定収入」をセットで求めるケースが一般的と述べています。

税制面では、減価償却費を最大化するための耐用年数戦略が基本です。RC造築25年物なら耐用年数残存22年となり、法定年数の1.5倍で償却できるルールにより、年間償却費が大きく取れます。それでも固定資産税は年々下がりにくいため、キャッシュフローに与える影響を試算しておく必要があります。

なお、2025年度も中古の耐震基準適合証明書を取得すれば登録免許税が一定割合軽減されますが、取得期限は2026年3月31日登記分までです。制度を利用するには、売買契約前に耐震診断と補強計画を終えておく段取りが欠かせません。

安全に始めるための物件選定と管理体制

まず押さえておきたいのは、立地選定がリスクコントロールの核心だという点です。東京都心の新築マンション平均価格は7,580万円(不動産経済研究所、2025年10月)と高騰していますが、空室率は5%前後と低水準を維持しています。価格が手頃な地方都市を選ぶ場合でも、人口が増加しているエリアに絞ることで安定性が高まります。

物件の建物調査は第三者に依頼しましょう。築20年を超えるRC造では、鉄筋の中性化や給排水管の劣化が進んでいることが多く、修繕見積もり300万円と言われた案件が、詳細調査後に900万円へ跳ね上がるケースもあります。専門家の診断報告書を取得し、買付申し込み前に修繕コストを数字で把握することが重要です。

また、管理会社選びで収益は大きく変わります。入居募集から家賃滞納対応までワンストップで任せられる体制があるかを確認してください。国土交通省「賃貸住宅管理業法」に基づく登録事業者であれば、毎月の収支報告義務があるため透明性が高まります。なお、外部委託費が家賃収入の5%を超える場合は、管理内容と費用のバランスを再検討することをおすすめします。

まとめ

結論として、一棟買いのマンション投資は高い利回りと節税効果が得られる一方、融資・運営・出口という三つのリスクを同時に抱える点が最大の難所です。自己資金を厚くし、修繕積立を先取りし、厳しいシナリオでも黒字化できる計画を組めば、危険は大きく下げられます。これから挑戦する方は、この記事で紹介したチェックポイントを一つずつ実行し、長期的に安定した収益と資産形成を目指してください。

参考文献・出典

  • 国土交通省 不動産市場動向調査 2025年度版 – https://www.mlit.go.jp
  • 不動産経済研究所 首都圏新築マンション市場動向 (2025年10月) – https://www.fudousankeizai.co.jp
  • 日本銀行 金融システムレポート 2025年4月 – https://www.boj.or.jp
  • 三井住友トラスト基礎研究所 不動産投資ローン動向 2025年 – https://www.smtri.jp
  • 国立社会保障・人口問題研究所 日本の将来推計人口 2025年版 – https://www.ipss.go.jp

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