不動産投資で店舗物件を検討するとき、「金利が上がったら返済負担はどうなるのか」と不安になる方が多いはずです。特に近年は日銀の金融政策が転換期に入り、変動金利のリスクが再び注目されています。本記事では、固定金利を活用して店舗投資のキャッシュフローを安定させる方法を、初心者にも分かりやすく解説します。読み終えるころには、金利タイプの選び方から最新の融資制度、返済計画の作り方まで一通りの知識が身につき、安心して第一歩を踏み出せるはずです。
固定金利の基本と変動金利との違い

まず押さえておきたいのは、固定金利が「借入期間中ずっと同じ金利が適用される仕組み」だという点です。これに対し、変動金利は半年ごとに金利が見直され、将来の返済額が読みにくい特徴があります。つまり、長期で安定した家賃収入を見込む店舗物件では、金利変動リスクを避けられる固定金利が心理的にも資金計画上も優位に立ちます。
一方で、固定金利は借入当初の金利が変動型より高めに設定されやすく、短期売却を狙う場合にはコスト過多になる可能性があります。したがって、投資期間を10年以上と想定し、家賃収入を年々積み上げるモデルを描くなら固定金利が適切といえます。日本銀行の2025年7月マネタリーレポートでも、固定金利と変動金利の差は平均0.4ポイントに縮小しており、多くの金融機関で固定化しやすい環境が整い始めました。
店舗投資に固定金利が向く理由

ポイントは、店舗経営のキャッシュフローが住宅より大きくぶれることです。テナント入替のタイミングや設備更新費が重なると、一時的に収支が悪化するケースがあります。それでも返済額が一定なら、空室期間や売上低迷時の出血を最小限に抑えられます。
実は、店舗物件の入居契約は3〜5年の定期建物賃貸借が一般的で、更新時に大幅な賃料交渉が入ることも珍しくありません。固定金利なら賃料減額を受けても返済額が急増しないため、収支の見通しが立ちやすいのです。さらに、法人契約が多い店舗は敷金が大きく、修繕積立金へ回せる内部留保を作りやすい点もメリットといえます。
空室リスクについては、国土交通省の「不動産市場動向調査(2025年版)」で、地方都市の小型店舗の平均空室期間は7.3か月と報告されています。この期間を乗り切るには、返済額が固定され予測しやすい体制が不可欠です。固定金利を選ぶことで、あらかじめリスク対応資金を積み立てる余裕を確保しやすくなります。
2025年度の融資制度と利用のコツ
重要なのは、2025年度に利用できる国と地方自治体の支援策を把握し、金利負担を減らすことです。店舗併用住宅やサービス業向けに広く使われているのが、日本政策金融公庫の「中小企業事業融資」です。固定金利で最長20年、利率は1.1%〜1.6%台(2025年10月時点)と民間より低く、テナント出店を支援する目的で融資枠が拡大されています。
自治体レベルでは、東京23区を中心に「店舗開業支援資金」を設ける区が増えています。例えば東京都墨田区は2025年度、利子補給を最大2%・5年間実施し、実質固定金利0%台を実現する仕組みを継続しています。期限付きではあるものの、申請時期を逃さなければ大幅な金利圧縮が可能です。
こうした制度を活用するには、事業計画書に売上予測と地域貢献の視点を盛り込むことが欠かせません。金融機関は2025年以降、環境負荷や地域活性化の要素を評価指標に組み込んでおり、空室対策や地域連携イベントの実施計画が評価を押し上げます。結果として、同じ固定金利でも下限に近い利率を引き出せるわけです。
キャッシュフローを守る返済計画の立て方
まず押さえておきたいのは、「月々の元利返済額を家賃収入の50〜60%に抑える」という目安です。これは、空室や修繕費が重なっても赤字に転落しない安全域として、多くの金融機関が示している指標でもあります。固定金利の場合、返済額が一定なので、この比率を初年度に固めれば長期にわたり計画がぶれません。
次に、修繕積立金を毎月家賃の10%程度積み立てると、突発的な設備更新にも対応できます。特に厨房やエアコンは3〜5年ごとに高額な交換費が発生するため、店舗投資では住宅以上に備えが重要です。また、減価償却費を内部留保に充当し、手取り現金を過大評価しない姿勢がリスク管理につながります。
最後に、金利が上昇局面にあるかどうかを毎年チェックし、固定金利期間の終了前に借り換えシミュレーションを実施することが欠かせません。仮に10年固定から20年固定へ切り替える場合、諸費用を含めても総返済額が7%程度下がるケースがあります。全国銀行協会の2025年レポートでも、固定期間満了前に借り換え相談を行う法人の7割が金利低減を実現したと報告されています。
まとめ
店舗物件への投資では、変動金利の低さに目を奪われがちですが、空室や賃料改定のリスクを考えると固定金利が安心材料になります。2025年度の公的融資や自治体の利子補給を組み合わせれば、当初金利の高さも十分カバーできます。返済額を家賃収入の半分に抑え、修繕積立を継続することで、長期にわたり安定したキャッシュフローを維持できるはずです。まずは金融機関に試算を依頼し、自身の事業計画に合った固定金利プランを検討してみてください。
参考文献・出典
- 日本銀行金融政策決定会合資料(2025年7月) – https://www.boj.or.jp
- 国土交通省 不動産市場動向調査2025 – https://www.mlit.go.jp
- 日本政策金融公庫 中小企業事業融資情報(2025年度) – https://www.jfc.go.jp
- 東京都墨田区 店舗開業支援資金(2025年度) – https://www.city.sumida.lg.jp
- 全国銀行協会 住宅・事業用ローン調査レポート2025 – https://www.zenginkyo.or.jp