収益物件の価格が妥当かどうか、自信を持って判断できる投資家は多くありません。仲介会社の提示額が高すぎるのか、逆に安く買える好機なのかが分からず、購入タイミングを逃した経験はないでしょうか。本記事では「収益物件 査定方法 誰が」という疑問を出発点に、査定を担当する専門家の役割や代表的な計算法を整理します。そのうえで、数字だけでは見えないリスクをどう補正するかまで解説するので、読み終えた瞬間から自分で査定の根拠を説明できるようになります。
収益物件の価値を決める視点

重要なのは、収益物件の価格が「収益力」「資産価値」「市場性」という三つの軸で決まる点を理解することです。まず収益力とは家賃収入から運営コストを差し引いた純利益で、将来予測が欠かせません。次に資産価値は土地の公示地価や建物の耐用年数に左右されます。最後に市場性は同エリアの成約事例や人口動態から読める需要の強さを指します。
国土交通省の不動産価格指数によると、2025年上半期の全国平均は前年同期比2.8%上昇しました。しかし、地方中核都市では横ばいの地域もあるため、指数を鵜呑みにせずエリアのミクロデータを確認する姿勢が大切です。つまり、一つの指標だけでは正確な査定はできず、複数の視点を組み合わせる必要があります。
実は、この三つの軸を体系的に見ることで、仲介会社の「利回り○%だからお得」という単純な説明に惑わされにくくなります。たとえば利回りが高くても、空室が多いエリアなら将来の収益力は下がりかねません。総合判断が欠かせない理由はここにあります。
査定は誰が行うのか

まず押さえておきたいのは、査定に関わる専門家が複数存在することです。収益物件の査定を最も正式に行うのは不動産鑑定士で、国家資格として不動産の経済価値を判定します。銀行融資の際や相続税評価など、公的な場面での根拠資料として重宝されるのが特徴です。
一方で、実務の現場では宅地建物取引士を抱える仲介会社の担当者が簡易査定を行うケースが多いのが実情です。彼らは近隣の取引事例や募集家賃などの市場データを基に、数時間から数日で価格帯を提示します。また、金融機関の審査部門には物件評価を専門に行う「不動産調査部」が置かれ、担保価値を厳しくチェックします。
つまり、査定を依頼する相手によって、必要な費用と時間、そして精度が異なります。投資戦略に合わせて、手軽な簡易査定で方向性をつかむか、費用をかけて鑑定士評価を取るかを判断すると効率的です。
代表的な査定方法と計算手順
ポイントは、収益還元法・取引事例比較法・積算法の三本柱を場面ごとに使い分けることです。収益還元法は、将来得られる純利益を割引率で現在価値に直す方法で、プロ投資家が最も重視します。割引率には金融庁「金融レポート2025」で示される長期国債利回りに2〜4%を上乗せした数値を使うのが一般的です。
取引事例比較法は、類似物件の成約価格をもとに位置や築年数を調整して価格帯を推定します。国土交通省の「土地総合情報システム」を参照すれば、直近1〜2年の成約事例を無料で検索できます。築20年の木造アパートなら、築浅に比べて評価を15〜25%下げるなど、経験則が必要になる点が難所です。
最後に積算法は、土地価格と建物再調達価格を合計する方法で、主に金融機関が担保評価で使います。2025年度の税制基準では、木造建物の法定耐用年数は22年のままです。築年数がこれを超えると建物価値はゼロ査定になるため、土地値だけで収支を組み立てる必要があります。
これら三つの数字を並べてみると、たとえば収益還元2,800万円、取引事例比較3,000万円、積算1,900万円という結果が示されるかもしれません。ここで平均を取るのではなく、投資目的に合う指標を優先する姿勢が欠かせません。
査定時に見落としやすいリスク
実は、数字には表れにくいリスクが査定の盲点になりがちです。その一つが修繕コストで、外壁塗装や屋上防水など大規模修繕が近い物件では、表面利回りが高くても実質利回りが低下します。国土交通省の「民間住宅ローン実態調査」では、築25年超の物件で平均年間修繕費が家賃収入の18%に達するデータがあります。
また、法規制リスクも軽視できません。たとえば2025年4月改正の建築基準法で、耐震不足が判明した場合に賃貸募集が制限されるケースが増えました。さらに、2025年度税制改正で相続時精算課税の特例が拡大した結果、相続発生後に不要物件が一気に売りに出る地域があり、価格下落を招く可能性があります。
空室率の地域差も見落とせません。総務省住宅・土地統計調査によれば、全国平均空室率は13.5%ですが、地方郊外では20%を超える市町村もあります。つまり、単に家賃相場を調べるだけではなく、エリアの需給バランスを読み解くことが欠かせません。
査定結果を投資判断に活かすコツ
まず、三つの査定額の中で投資目的に最も合う指標を核に据えます。キャッシュフロー重視なら収益還元法が軸になりますが、出口戦略を短期で考えるなら取引事例比較法の価格を重視するほうが現実的です。そのうえで、前節で触れた修繕費や法規制リスクを数値補正し、利回りと自己資金のバランスを再計算します。
利回りを補正する具体的な手順としては、まず家賃収入から空室損失と修繕費を差し引き、さらに想定売却額を計画期間末に置いた内部収益率(IRR)で評価します。金融機関が提示する金利よりIRRが2%以上高ければ、リスクに見合う投資と判断できるケースが多いです。
結論として、査定額はあくまでスタート地点であり、最終的な投資判断は自己のリスク許容度と資金計画に照らして下す必要があります。自分で査定ロジックを理解すれば、仲介会社や金融機関との交渉でも説得力が増し、より有利な条件を引き出しやすくなるでしょう。
まとめ
この記事では、「収益物件 査定方法 誰が」という疑問を軸に、価値を決める三つの視点、査定を担当する専門家、代表的な計算法、見落としがちなリスク、そして投資判断への落とし込み方を解説しました。査定は一見専門的ですが、手順を分解すれば投資家自身でも妥当性をチェックできます。次に物件情報を見たときは、収益還元法・取引事例比較法・積算法の数字を自分で作成し、修繕費や空室率を補正してみてください。数字の裏側が見えるようになれば、購入のタイミングと価格交渉で主導権を握れるはずです。
参考文献・出典
- 国土交通省 不動産価格指数 – https://www.mlit.go.jp
- 国土交通省 土地総合情報システム – https://www.land.mlit.go.jp
- 総務省統計局 住宅・土地統計調査2023 – https://www.stat.go.jp
- 金融庁 金融レポート2025 – https://www.fsa.go.jp
- 国土交通省 民間住宅ローン実態調査2024 – https://www.mlit.go.jp/housingfinance