初心者の方の多くは、「何から始めればいいのか」「本当に稼げるのか」という疑問を抱えています。自己資金が少なくても収益を得られる仕組みを理解できれば、不動産投資のハードルは想像より低くなります。本記事では、収益構造、物件選び、資金計画、管理、税制の五つの観点から、2025年時点で押さえるべきポイントを順番に解説します。読み終えるころには、初めの一歩を踏み出す具体的なイメージがきっとつかめるでしょう。
不動産投資で得られる収益の種類

重要なのは、不動産から得られる収益が一種類ではないことです。家賃収入だけでなく売却益や節税効果も組み合わせることで、安定性と成長性を両立できます。
キャッシュフローとは、毎月の家賃から経費と返済を差し引いた後に残る手取り金額を指します。国土交通省の住宅市場動向調査によると、単身向けワンルームでも平均空室率は都心部で5%前後にとどまります。つまり安定した入居者を確保できれば、予測しやすい現金収入が続くわけです。また、手取りを再投資に回せば複利的に戸数を増やすことも可能です。
一方で、物件価格の上昇による売却益はタイミング次第で大きな利益を生む要素です。実は、東京23区の中古マンション平均価格は2020年以降も年率3%前後で上昇しています。将来の再開発計画や人口流入が見込めるエリアを押さえておけば、含み益が自然に積み上がります。ただし短期で転売を繰り返すと譲渡所得税が高くなるため、保有期間と税率の関係を理解しておく必要があります。
さらに、所得税や住民税を抑えられる節税効果も見逃せません。建物部分の減価償却費を経費計上できるため、現金支出を伴わず課税所得を圧縮できます。総務省の家計調査では平均年収600万円世帯の所得税率は約10%ですが、減価償却により実効税率を数ポイント下げられるケースがあります。結果として、キャッシュフローが同額でも手取りの可処分所得が増える仕組みになります。
初心者が押さえておきたい物件選定

まず押さえておきたいのは、物件選びが投資成果の八割を左右するという事実です。立地、築年数、間取りを見極めることで、空室と修繕のリスクを大幅に減らせます。
立地は最寄り駅からの距離だけでなく、人口動態を含めた将来性で評価します。国立社会保障・人口問題研究所の推計では、2040年まで人口が増えるのは東京圏の一部と政令指定都市周辺に限られます。通勤利便性が高く雇用が集中するエリアは、賃貸需要が景気変動に強い傾向があります。そのため、初心者は賃料水準よりも需給バランスを優先してエリアを絞るとよいでしょう。
築年数が古い物件は価格が手頃でも、大規模修繕の費用が膨らむ場合があります。実は築25年を境に外壁や給排水管の交換サイクルが集中し、1戸あたり平均80万円程度の追加コストが発生すると言われます。購入前には管理組合の修繕積立金残高や長期修繕計画書を確認し、将来負担が読める物件を選ぶべきです。また、2000年以降の新耐震基準に適合しているかも安全性と金融機関の評価に影響します。
間取りはターゲットとする入居者像に直結します。ポイントは、地域の世帯構成と一致した部屋タイプを選ぶことです。学生エリアであれば家賃重視のワンルームが回転率を高め、ファミリーが多い地域では2LDK以上が長期入居を促します。このように立地と間取りの組み合わせがバランスすると、広告費を抑えながら高い入居率を維持できます。
融資と資金計画の組み立て方
実は、同じ物件でも融資条件が違えば手残りは大きく変わります。金利、返済期間、自己資金割合を組み合わせて自分に合ったキャッシュフローを設計しましょう。
金融機関の融資は、大きく分けてアパートローンとプロパーローンがあります。アパートローンはサラリーマンでも利用しやすい反面、金利が1.5%前後とやや高めです。一方で、担保評価と返済能力を厳しく見るプロパーローンは0.7%台の金利が期待できますが、自己資金を2割以上求められることが多いです。自分の属性と投資戦略を照らし合わせ、どちらがキャッシュフローに有利か比較してください。
自己資金は少ないほど投資効率が高いと考えがちですが、返済比率が上がり過ぎると空室時に赤字へ転落します。金融庁が示す健全ラインは返済比率35%以下で、月の家賃総額の65%を経費と手残りに充てられる形が望ましいです。また、突発的な修繕に備えて家賃の3か月分を目安に予備資金を積み立てておくと安心です。
金利変動リスクをシミュレーションすることも欠かせません。現在の変動金利は0.9%前後が主流ですが、日本銀行が示す長期金利上昇シナリオでは1%幅の上昇も想定されています。返済期間30年の場合、金利が1%上がると総返済額は約600万円増える計算になります。こうした厳しめの前提でも黒字が保てるか、事前に確認しておくべきです。
最後に、融資の事前審査を複数行で取得し、条件を交渉する姿勢が重要です。提示された金利が高い場合でも、自己資金を追加したり団体信用生命保険を見直したりすることで0.1%程度の引き下げ余地が生まれることがあります。小さな差に見えても30年で数十万円の手残りを左右しますから、遠慮せず比較検討しましょう。
賃貸管理で収益を守るコツ
ポイントは、入居率を高く保ちつつ無駄なランニングコストを抑えることです。管理会社選定とデジタル化の活用が成果を左右します。
管理会社を選ぶ際は管理戸数やレスポンスの速さだけでなく、一棟当たりの退去後平均空室期間を確認しましょう。国土交通省が公開する賃貸住宅管理業者登録制度のデータでは、優良会社の平均は30日以内とされています。この数値が長い会社は広告戦略や内装提案の力が弱い可能性があるため要注意です。また、募集条件の柔軟さも早期成約の鍵となります。
一方で、設備トラブルの未然防止は無駄な費用を削減します。エアコンや給湯器は10年を超えると故障率が高まるため、計画的な交換が結果的に安く済むことがあります。入居者満足度が上がれば長期入居につながり、広告費と原状回復費を減らせます。この連鎖がキャッシュフローを守る基本です。
最近はスマートロックやオンライン内見など、デジタル技術が管理効率を高めています。例えば、スマートロックを導入すると鍵交換費用を年間で約1万円削減できるうえ、内見数が増えて空室期間を短縮する効果も確認されています。初期投資は必要ですが、導入後の収支改善幅は大きく、競合物件との差別化にも役立ちます。
また、家賃設定を定期的に見直す姿勢も欠かせません。周辺相場より高すぎると空室リスクが上がりますが、安すぎると収益機会を失います。レインズやアットホームの成約データをチェックし、年に一度は募集条件をアップデートすることで最適なバランスを保てます。こうした地道な管理の積み重ねが最終的な稼げる力につながります。
2025年度税制と出口戦略を考える
基本的に、税制を味方に付ければ手残りを最大化できます。売却時期と保有期間、そして相続対策を合わせて設計することが重要です。
2025年度の所得税法では、木造アパートの法定耐用年数は22年で据え置かれています。中古で築20年の物件を購入した場合、簡便法により耐用年数を4年で再計算できるため、大きな減価償却費を早期に計上できます。その分、課税所得を圧縮しキャッシュを手元に残す戦略が取りやすくなります。ただし短期間で税負担が増える反動もあるため、資金繰りの見通しを持つことが欠かせません。
譲渡所得税は保有5年超で長期課税となり、税率が約20%へ下がります。購入から3年程度で高値が付いても、あと2年保有することで税額が数百万円変わるケースもあります。具体的には、3,000万円の譲渡益に対し短期なら約1,000万円、長期なら約600万円の税額となり、差額は400万円です。この数字を理解して売却タイミングを吟味することが、出口戦略で大きな意味を持ちます。
相続を視野に入れる場合、賃貸用不動産は相続税評価額が時価の70%前後に圧縮される特徴があります。つまり現金よりも資産を継承しやすく、将来の節税にもつながります。ただし賃貸経営が不慣れな家族には負担になる恐れがあるため、生前に管理の委託先や融資残高の整理方針を共有しておきましょう。
最後に、物件の建て替えや土地活用を行いながらポートフォリオを更新する方法もあります。築古の小規模物件を売却し、その資金で耐用年数の長いRC造マンションへ乗り換えると、減価償却の再スタートと家賃単価の向上を同時に図れます。このように税制と再投資を組み合わせることで、長期にわたり稼げる仕組みを維持できます。
まとめ
ここまで、不動産投資で稼ぐ仕組みと始め方を、収益構造から管理、税制まで順に見てきました。立地と融資の選択が成功の軸となり、丁寧な管理と税制活用が手残りを押し上げます。まずは小さく試算表を作り、金融機関へ相談しながら一歩を踏み出してみてください。知識を行動に移せば、安定したキャッシュフローは確実に近づきます。
参考文献・出典
- 国土交通省 住宅市場動向調査 – https://www.mlit.go.jp/report/press/house03_hh_000174.html
- 国立社会保障・人口問題研究所 – https://www.ipss.go.jp
- 金融庁 金融リテラシー調査 – https://www.fsa.go.jp/policy/kokyakutaisaku/financial_literacy/index.html
- 日本銀行 金融システムレポート – https://www.boj.or.jp
- 総務省 家計調査 – https://www.stat.go.jp/data/kakei/
- 国土交通省 賃貸住宅管理業者登録制度 – https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_fr6_000012.html