不動産の税金

500万円収益物件の収支計算術

資金が潤沢でなくても不動産投資は始められるのか――そんな疑問を抱く人は少なくありません。家賃収入は魅力的でも、自己資金とローン返済、そして維持費をどう管理するか分からないという声をよく耳にします。実は、500万円という比較的小さな金額でも、正しい収支計算を行えば毎月のキャッシュフローを黒字で運用することは可能です。本記事では、初心者が押さえるべき計算の手順と2025年度の最新制度、さらに具体的なシミュレーションを通じて、堅実に成果を上げる方法を解説します。

小額からでも始められる理由

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まず押さえておきたいのは、近年の地方都市や郊外エリアでは築古の区分マンションが500万円前後で流通しているという現実です。国土交通省の不動産価格指数を見ると、都心と比べて地方は価格上昇が緩やかで、利回りが高めに設定される傾向があります。つまり、初期投資を抑えても高い表面利回りを確保しやすい土壌が整っているのです。

さらに、2025年10月時点でも金融機関は個人投資家向けのアパートローンを継続しており、500万円程度の融資であれば審査難易度が比較的低いケースが見られます。自己資金を2〜3割入れ、残りを10〜15年で返済する設定なら、返済額が家賃収入に対して過度に膨らまず、キャッシュフローを安定させやすくなります。また、借入金額が小さい分、金利上昇局面でも影響が限定的なのは大きな安心材料です。

一方で、築年数が古い物件は修繕費がかさむリスクがあります。空室に陥った際のダメージも大きいため、地域の人口動態や賃貸需要を丁寧に調査しなければなりません。購入価格だけに目を奪われると、結局は赤字を垂れ流すことになりかねません。重要なのは、想定外の出費を含めたシビアな収支計算を先に済ませることです。

収支計算の基本フレーム

収支計算の基本フレームのイメージ

重要なのは、購入前にキャッシュフローを数値化し、最悪のシナリオでも黒字を維持できるか確認することです。500万円 収益物件 収支計算では、下記の公式を起点に考えます。

年間家賃収入 − 年間経費 − 年間ローン返済 = 税引前キャッシュフロー

まず家賃収入を見積もる際、空室率を5〜10%織り込むのが現実的です。たとえば月4.5万円で年間54万円の家賃が得られる場合でも、稼働率95%なら実収入は51万3,000円程度になります。

次に経費です。管理委託料、修繕費、火災保険料、固定資産税の4点が主な項目ですが、築古物件では突発的な補修も加わるため年間収入の20〜30%を目安に計上します。最後にローン返済額を差し引き、残った金額が手取りキャッシュフローです。言い換えると、この残額がプラスである限り、投資として“回る”わけです。

また、法人化や青色申告を活用すれば経費計上幅を広げられ、節税効果で手残りが増えるケースもあります。しかし、手間とコストも伴うため、物件規模が拡大するまで慎重に検討する必要があります。一物件目は個人名義で始め、収支が安定してから法人化を検討する流れが無理のない選択肢でしょう。

キャッシュフローを左右する5つの費用

実は、購入価格よりもランニングコストの管理が最終利益を決める場面が多いものです。ここでは特に影響が大きい五つの費用に絞って確認します。

第一に管理委託料です。管理会社へ支払う3〜5%の手数料はサービス内容と比較して判断し、値下げ交渉も視野に入れましょう。第二に修繕費は築年数に応じて年10万円程度は見込むと、安全マージンを確保できます。第三に固定資産税・都市計画税は、市区町村が公表する評価額を基に計算されるため、購入前に必ず過去の納税通知書を確認することが欠かせません。

第四に火災保険料は補償範囲で大きく異なりますが、長期契約や一括払いで保険料を減らす方法があります。第五に空室損失は、内装の競争力や家賃設定で大きく変動します。たとえばWi-Fi無料やスマートロックなど、月数千円で導入できる付加価値が入居期間を延ばし、長期的にはコスト削減につながります。

こうしたランニングコストは、収支計算の段階でシミュレーションに落とし込みます。毎月のキャッシュフロープラスにこだわるだけでなく、将来の大規模修繕に備えて内部留保を積み上げる視点が安定運営への近道です。

2025年度の金融・税制ポイント

ポイントは、利用可能な制度を確実に押さえ、コストを減らすことです。2025年度の税制では、投資用不動産でも減価償却費の計上に大きな変更はなく、築古物件なら償却期間が短くなるため、早期に損益通算のメリットを享受できます。個人の場合、給与所得との損益通算上限が設けられていない点は依然として魅力です。

登録免許税は2025年度も軽減措置が継続せず、従来どおり土地0.4%・建物2%が課税されます。購入時には別途、不動産取得税が課されますが、住居用賃貸に該当する区分マンションならば建物評価額に対し3%の税率適用となる点を想定しておく必要があります。

金利動向については、日本銀行が2024年にマイナス金利を解除し、2025年10月時点で政策金利は0.5%付近で推移しています。変動金利は上昇余地を残す一方、固定金利は落ち着きを見せており、借入期間10〜15年であれば固定型を選択してキャッシュフローの安定を図る戦略も有効です。

また、地方自治体の空き家改修補助金は2025年度も多くの市区町村で継続されています。ただし、対象は“自己居住”が条件のケースが大半で、投資用賃貸は対象外が多い点に注意してください。情報を鵜呑みにせず、自治体窓口に確認する慎重さが求められます。

シミュレーション事例で学ぶ

まず、具体的な数字を見ることでイメージが明確になります。ここでは、地方政令市の築28年ワンルーム区分マンション(価格500万円)を想定します。

●前提条件(主な数値)

  • 家賃:月4.5万円
  • 稼働率:95%
  • 管理委託料:家賃の5%
  • ローン:400万円、金利2%、15年元利均等返済

この条件を用いると、年間家賃収入は54万円、稼働率を加味した実収入は51万3,000円です。管理委託料はその5%で2万5,650円、火災保険と修繕積立を合わせ年7万円、固定資産税等を7万円と仮定すると、経費合計は約16万2,650円になります。

ローン返済額は月2万6,000円前後、年間で31万2,000円です。年間キャッシュフローは51万3,000円 − 16万2,650円 − 31万2,000円 = 3万8,350円となり、税引前では黒字を維持できます。さらに減価償却費(建物価格300万円、残耐用年数9年と仮定)を年間約33万円計上すれば、所得税・住民税の負担が大幅に軽減され、手取りベースのキャッシュフローは実質で年間10万円超に伸びる可能性があります。

このように、表面利回り12%、実質利回り7〜8%を確保できれば、元本返済が進むほど手取り額は増加していきます。シミュレーションは決して予測どおりに進むわけではありませんが、赤字リスクを数値で把握しておくことで、融資の返済計画や出口戦略を早期に描ける点が大きなメリットです。

まとめ

低価格帯でも堅実に運用できる物件は確実に存在し、鍵となるのは徹底した収支計算とコスト管理です。購入前に空室率や修繕費を厳しく見積もり、2025年度の税制や金利動向を踏まえてローンを組めば、500万円物件でも安定したキャッシュフローを生み出せます。まずは自身の資金計画を整理し、試算表を作成して数字に向き合うことから始めてみてください。行動を起こすことで、将来の選択肢は大きく広がります。

参考文献・出典

  • 国土交通省 不動産価格指数 – https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/totikensangyo_tk3_000087.html
  • 総務省統計局 住宅・土地統計調査 – https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/
  • 日本銀行 金融政策決定会合議事要旨 – https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/index.htm
  • 国税庁 タックスアンサー 不動産所得 – https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/
  • 不動産流通推進センター 不動産統計集2025 – https://www.retpc.jp/archives/statistics/
  • 各自治体 空き家対策サイト(例:東京都空き家利活用ポータル) – https://www.akiya.metro.tokyo.lg.jp/

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