家賃収入で資産形成を目指したいものの、「物件価格が高くて踏み出せない」「競売は難しそう」と感じていませんか。実は、競売で取得するワンルームマンションなら、通常の相場より低い価格でマンション投資を始める道があります。本記事では、競売の基礎からワンルーム投資の収益構造、2025年10月時点の市場動向までをやさしく解説します。読み終えるころには、必要な知識と注意点を押さえ、自分に合った投資戦略を描けるはずです。
競売物件とは何かを理解する

まず押さえておきたいのは、競売物件が「債務者の返済不能により裁判所が競りにかける不動産」である点です。入札は公開形式で行われ、落札価格は市場相場の七〜八割に収まることが多いと法務省統計は示しています。つまり、同じ立地・築年でも割安に取得しやすいのが競売の魅力です。一方で、内覧が制限される、瑕疵(かし)担保責任が免責されるなど通常取引と異なるルールも存在します。結論として、低価格のメリットとリスクを正しく比較する姿勢が欠かせません。
次に、実務上の流れを確認しましょう。裁判所の「BIT」サイトで物件資料を閲覧し、現地調査や管理会社へのヒアリングを行ったうえで入札額を決めます。入札保証金として通常売却基準価額の二割前後を納め、落札後は残代金を一括納付します。また、占有者がいる場合は明渡交渉や引渡命令の手続きが必要になるため、スケジュールと費用を見積もることが重要です。
最後に、競売で発生しやすいトラブルを理解しましょう。代表例は、滞納管理費の引継ぎ、室内残置物の処分、占有者との交渉です。これらは弁護士や司法書士に依頼すれば処理できますが、費用が上乗せされます。リスクを可視化し、想定利回りに織り込むことが、競売物件を武器に変える第一歩となります。
ワンルーム物件の収益構造

重要なのは、ワンルームが「少額から始められ、単身者需要で空室リスクが読みやすい」点です。2025年の国勢調査速報では、東京23区の単身世帯数は全世帯の53%を占め、年々増加傾向にあります。家賃水準が安定しているうえ、修繕費も専有面積が小さいため抑えやすく、キャッシュフローを計算しやすい特徴があります。
収益を構成する主な要素は、賃料収入、管理費・修繕積立金、ローン返済、固定資産税です。たとえば、東京23区築20年のワンルームを競売で1,600万円で取得し、家賃8万円で貸すシミュレーションを考えます。表面利回りは6%ですが、実質利回りを把握するには、月1万円の管理費・修繕積立金、年間6万円の固定資産税、空室1カ月を想定した調整が必要です。こうした細かな計算が、投資の成否を分けるポイントとなります。
また、退去時の原状回復費や将来の大規模修繕も忘れてはいけません。日本賃貸住宅管理協会の調査によると、ワンルームの退去費用平均は15万円前後です。原価償却と見なし、月々2,000円程度を積み立てておけば、突発的な支出に慌てずに済みます。つまり、小さなコストの積み重ねを平準化する工夫が安定運営の鍵です。
競売で失敗しないための情報収集術
ポイントは、「公的情報」「市場情報」「現地情報」を三位一体でチェックすることです。公的情報としては、裁判所の物件明細書、区役所の都市計画情報、登記簿謄本が挙げられます。市場情報として、レインズやポータルサイトで近隣の成約事例を確認し、落札目標額の妥当性を検証します。現地情報では、駅からの動線や夜の治安、建物の管理状態を自分の目で評価する姿勢が欠かせません。
さらに、管理組合の総会議事録や長期修繕計画も可能な限り取得しましょう。国土交通省のガイドラインでは、長期修繕計画がないマンションは将来の修繕積立金不足リスクが高いと指摘されています。議事録に管理費滞納者が多いとの記載があれば、賃貸募集時に金融機関が融資を渋る場合があります。投資判断に直結するため、書面の細部まで読み込む習慣を身に付けましょう。
最後に、専門家ネットワークを活用する方法です。司法書士は権利関係の調査と明渡手続きを、宅建士は賃料相場の査定を、マンション管理士は管理状況の診断を担当できます。費用は発生しますが、失敗コストを考えれば安い保険と言えます。自分が不得意な領域を補完するパートナーを早期に確保することで、競売ワンルームの成功確率は格段に高まります。
資金計画と融資のポイント
まず、自己資金の目安として物件価格の二〜三割を準備すると、安全なキャッシュフローが見込めます。日本政策金融公庫の2025年度融資統計によれば、自己資金比率が20%を超える案件は審査通過率が約1.4倍に向上しています。また、競売物件は資産評価が厳しくなるため、金融機関との面談では近隣取引事例やリフォーム計画を提示し、価値向上策を具体的に説明することが効果的です。
次に、金利タイプの選択です。固定金利は返済額が一定で計画を立てやすい一方、変動金利は短期的に低コストですが、政策金利が上昇すると負担が増えます。日銀は2025年7月に長期金利の誘導目標を0.5%から0.75%へ引き上げており、変動金利を選ぶ際は金利上昇1.5%までのストレスシミュレーションを推奨します。
さらに、保守的な収支計画を作るため、空室率20%、家賃下落3%、修繕費増加1.5倍の「ワーストケース」を織り込んでみましょう。国土交通省「賃貸住宅市場の構造変化レポート」では、築30年超の家賃は築10年比で平均12%低下すると示されています。こうした数値を反映し、10年、20年先までのCFを確認すれば、長期的に破綻しにくい計画を描けます。
2025年度の制度と市場動向
実は、2025年度から不動産取得税の軽減措置が延長され、住宅用区分所有建物の課税標準を1,200万円控除する制度が継続しています。ワンルームでも居住用区分に該当すれば適用可能で、取得後60日以内に申告すれば約30万円の税負担を減らせます。また、国土交通省は「マンション管理適正評価制度」を本格稼働させ、評価が高い物件は金融機関の担保評価が上がる傾向にあります。競売物件でも、取得後に管理改善を進め、評価を引き上げれば売却益を狙う戦略が取れるでしょう。
市場面では、不動産経済研究所のデータによると、東京23区の新築マンション平均価格は7,580万円で前年比3.2%上昇しました。一方、中古ワンルーム価格は同期間で1.8%の微増にとどまり、価格差は拡大しています。つまり、中古ワンルームには相対的な割安感があり、競売を活用すれば利回りをさらに高められます。
さらに、住宅ローン減税は投資用には適用されませんが、長期譲渡所得の軽減税率(所有5年以上で税率20.315%)は依然として有効です。出口戦略として売却益を見込む場合、保有期間を5年超に設定するだけで税負担を抑えられる点は押さえておきましょう。制度と市場の両面を把握し、タイムラインを意識した投資計画を立てることが、2025年の成功モデルになります。
まとめ
ここまで、競売で購入するワンルームマンションの魅力と注意点を整理しました。割安に取得できる半面、瑕疵リスクや明渡手続きなど独特の課題があります。入札前の徹底調査、保守的な資金計画、専門家の活用という三つの柱を意識すれば、競売でも安定したキャッシュフローを実現できます。まずは裁判所サイトで情報を収集し、気になる物件をひとつ選んで現地を歩くところから始めてみてください。行動を起こすことで、数字だけでは見えない投資のリアリティがつかめるはずです。
参考文献・出典
- 法務省 競売統計 – https://www.moj.go.jp
- 不動産経済研究所 新築マンション市場2025年上期報告 – https://www.fudousankeizai.co.jp
- 国土交通省 賃貸住宅市場の構造変化レポート2024 – https://www.mlit.go.jp
- 日本政策金融公庫 中小企業向け融資統計2025 – https://www.jfc.go.jp
- 日本賃貸住宅管理協会 原状回復費用調査2024 – https://www.jpm.jp
- 東京都都市整備局 都市計画情報提供サービス – https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp