不動産投資を始めたいものの、最初に何を確認し、どこから動けばいいのか分からないと感じる人は少なくありません。特に収益物件の購入は金額が大きく、調査項目も多岐にわたるため、「間違えたら取り返しがつかない」という不安が付きまといます。本記事では、投資初心者がつまずきやすいポイントを整理しながら、物件探しの準備から契約後の運営までをわかりやすく解説します。全体の流れを理解すれば、無駄なコストや時間を省き、安定したキャッシュフローを実現できる可能性がぐっと高まります。
投資目的を明確にする

まず押さえておきたいのは、投資目的をはっきりさせることです。キャピタルゲイン(値上がり益)を狙うのか、インカムゲイン(家賃収入)を重視するのかによって戦略は大きく変わります。たとえば高利回り物件を追い求めた結果、築古で修繕費がかさみキャッシュフローが悪化するケースは後を絶ちません。言い換えると、長期保有型なのか、短期売却型なのかを早い段階で決めておけば、リスク許容度や融資期間の設定がスムーズになります。
一方で、将来のライフプランとの整合性も見逃せません。国土交通省の住宅・土地統計調査(2023年速報)によると、賃貸住宅の供給過多が顕著なエリアほど空室率が20%を超える例が増えています。このデータは、「自分がどのくらいの期間、どの程度のリスクを受け入れられるか」を数字で見極める手がかりとなります。また所得税や住民税の負担軽減を目的に減価償却を活用したい場合も、保有期間を長めに設定するのが一般的です。
さらに、家族構成や将来の相続計画も考慮しましょう。金融庁の家計資産調査(2024年度版)では、相続対策を目的に賃貸経営を始めた世帯が前年比8%増加しています。しかし、相続税対策だけを優先すると、収益性を軽視した物件選びにつながりやすい点が要注意です。「投資」と「節税」のバランスを取ることで、長期的なリターンと家族の安心を同時に得られます。
適切な物件の探し方

重要なのは、希望条件と市場データを照らし合わせながら物件を探す姿勢です。多くの初心者はポータルサイトの表面利回りだけで判断しがちですが、表面利回りと実質利回りの差は修繕費や募集費用を含めると2〜4ポイント開くことが珍しくありません。実際、東京23区内ワンルームの平均空室期間は2025年上半期で46日(レインズデータ)とされていますが、郊外の築20年以上では80日を超えるケースが目立ちます。
次に、現地確認の徹底が欠かせません。駅からの徒歩分数が同じでも、坂道の有無や夜間の街灯の明るさで入居者の印象は大きく変わります。また、周辺の再開発計画や商業施設の開業予定は、賃料上昇の可能性を示す重要なファクターです。地方自治体の都市計画課や国土交通省「都市計画情報提供サービス」など、公的な一次資料を参照すれば情報の正確性が高まり、過剰な宣伝に惑わされるリスクが減ります。
物件情報の入手経路を多様化することも成功の鍵です。不動産会社の紹介に加え、金融機関や税理士が持つネットワーク、そして法人向けのオークションサイトまで活用すると、未公開物件に出会う確率が上がります。実は「収益物件 購入手順 どのように」と検索している読者の多くは、一つのルートだけで探してしまい選択肢を狭めがちです。複数ソースを比較することで、自分の投資目的に合致した物件を見逃さずに済みます。
資金計画と融資のポイント
ポイントは、自己資金と借入金のバランスを適切に設定し、将来の金利変動に耐えられる余力を持たせることです。日本政策金融公庫の2025年度平均貸出金利は2.23%ですが、地方銀行や信用金庫では1%台前半の事例も報告されています。0.5%の金利差は、3,000万円を20年で借りた場合に約160万円の総返済額の違いを生むため、複数行の事前打診は欠かせません。
自己資金は物件価格の20〜30%を目安にすると、金融機関の評価が上がり金利交渉で有利になります。また、購入後1年以内に発生しやすい小規模修繕費や入居者募集費用として、最低100万円の運転資金を確保するのが現実的です。総務省の家計調査(2024年版)でも、運用成績が安定している投資家ほど「手元資金比率が高い」との相関が示されています。
融資審査では、物件の収益性だけでなく個人の与信力も評価されます。年収、勤続年数、既存の借入状況を整理し、金融機関に対して根拠ある返済計画を提示することで、借入額や金利条件が改善される可能性があります。加えて、2025年度時点で一般的に利用できる「固定金利選択型」と「変動金利型」の商品特性を理解し、自身のリスク許容度に合わせて組み合わせると、長期の金利上昇局面でも耐久力を保てます。
購入前のデューデリジェンスとは
実は、契約直前で最も差がつく作業がデューデリジェンス(詳細調査)です。物件の法的リスク、物理的リスク、経済的リスクを多面的に確認することで、将来の想定外コストを最小限に抑えられます。たとえば建物の構造計算書や耐震診断書をチェックすれば、大規模修繕の必要時期と概算費用がおおよそ把握できます。
法的リスクの確認には、建築基準法や消防法の適合状況が欠かせません。区分マンションの場合、用途変更が行われていないか管理規約を精査することで、民泊など禁止されている運用への転用リスクを回避できます。一方、土地付き一棟アパートでは、接道義務を満たしていない非防火地区が存在し、将来建て替えができない事例も報告されています。
経済的リスクについては、過去3年分の賃貸借契約書と賃料推移を確認し、実質利回りをシミュレーションしましょう。国税庁「令和6年分民間給与実態統計」によると、平均年収は443万円で微増にとどまっており、家賃に充てられる金額が大きく伸びる兆しは見えません。つまり、今後の家賃上昇を前提にした収支計画は危険です。保守的な空室率(20%前後)と家賃下落(年1%)でも黒字を維持できるか確認することが、安定経営への近道と言えます。
契約から引き渡し後の運営管理
基本的に、売買契約は重要事項説明を含めて1~2時間で終わりますが、そこで交わす特約条項が将来のトラブルを左右します。瑕疵担保責任の期間や修繕履歴の未告知が発覚した場合の対応方法など、書面で明確にしておくことでリスクヘッジが可能です。また、登記手続きと同時に火災保険・地震保険を手配し、融資実行日に合わせて保険開始日を調整すると万が一の損害を最小限に抑えられます。
引き渡し後は、速やかに入居者募集と物件管理体制を整える必要があります。管理会社に委託する場合でも、賃料送金日や報告書の内容、原状回復の基準を明確にし、自分自身が最終責任者である意識を持ち続けましょう。実務的には、毎月の賃貸管理レポートをチェックし、入居者対応の履歴を残しておくと、後日売却時に買主へ信頼性の高いデータを提示できます。
さらに、長期的な視点で修繕計画を立てることが欠かせません。国土交通省「長期修繕計画作成ガイドライン」(2024年度改訂版)では、築10年目から大規模修繕費を積み立てることが推奨されています。修繕積立金を毎月家賃収入の5%程度確保しておけば、突然の外壁塗装や屋上防水工事にも対応できます。結論として、購入後の安定運営が実現できてこそ、投資の成功が確定すると言えるでしょう。
まとめ
ここまで、収益物件の購入手順を「目的設定→物件選定→資金計画→デューデリジェンス→契約・運営」の順に解説しました。各ステップで必要な確認事項を押さえ、データと実例をもとに判断すれば、過度なリスクを抱えずに済みます。まずは自分の投資目的を言語化し、複数の情報源から物件情報を集めるところから始めてみましょう。そして保守的な資金計画を立て、適切な管理体制を構築することで、将来にわたり安定したキャッシュフローを得られるはずです。
参考文献・出典
- 国土交通省 住宅・土地統計調査 2023年速報 – https://www.e-stat.go.jp
- 国土交通省 都市計画情報提供サービス – https://www.mlit.go.jp
- 日本政策金融公庫 融資制度のご案内 2025年度版 – https://www.jfc.go.jp
- 総務省 家計調査報告 2024年 – https://www.stat.go.jp
- 金融庁 家計資産調査 2024年度版 – https://www.fsa.go.jp
- 国税庁 令和6年分民間給与実態統計 – https://www.nta.go.jp