年収が1500万円前後になると金融機関からの信用力が高まる一方で、借入枠が大きくなり過ぎる不安や、団体信用生命保険(団信)の仕組みが分かりにくいといった悩みが生まれます。不動産投資ローンで失敗しないためには、金利だけでなく返済比率、団信の保障範囲、税務上の取り扱いまで総合的に確認する必要があります。本記事では、2025年10月時点で利用できるローン商品と団信の最新情報を整理し、年収1500万クラスの投資家が安全に資産を拡大するための具体策を解説します。
不動産投資ローンにおける年収1500万の与信力

まず押さえておきたいのは、年収1500万円層が金融機関からどの程度の融資を受けられるかという現実です。全国銀行協会の調査によると、2025年10月時点の不動産投資ローン金利は変動型で年1.5〜2.0%、固定10年で年2.5〜3.0%が主流です。多くの銀行は返済比率35%以内を目安に審査を行うため、年収1500万円の場合、年間返済額の上限は概ね525万円前後になります。
一方で、自己資金を3割以上入れる投資家には、融資期間を30年超に伸ばす優遇や、固定金利の引き下げオプションが提示されるケースも増えています。しかし、与信枠が大きいからといって借入を最大化すると、金利上昇局面でキャッシュフローが急激に悪化するリスクがあります。つまり、年収に見合った安全圏を見極めることがスタートラインです。
特に、複数物件を同時に購入する場合は、物件ごとに返済比率を把握するだけでなく、ポートフォリオ全体で空室率15〜20%を想定したストレステストを行いましょう。このようなシミュレーションを実施することで、過度なレバレッジを回避し、余裕を持った返済計画を立てられます。
団信の基本と投資家が確認すべき保障内容

重要なのは、団信が「借入残高をゼロにする生命保険」であるという点です。不動産投資ローンでは団信加入が義務付けられる場合が多く、加入料は金利に0.2〜0.3%上乗せする形で徴収されます。つまり、金利1.7%の商品でも実質的な負担は2.0%程度になることを理解しておく必要があります。
さらに、2025年度の主要銀行は「ワイド団信」「三大疾病付き団信」など、保障の手厚い商品をラインアップしています。例えば、三大疾病付きタイプではガン・急性心筋梗塞・脳卒中で所定の状態になったときに残債が全額免除されますが、その分金利が追加で0.2%程度上がります。保障拡充は安心材料になる一方で、キャッシュフローを圧迫するため、保険料とのバランスが鍵となります。
実は、投資物件の場合でも団信保険料は生命保険料控除の対象になるケースがあります。控除額は年間4万円が上限と小さいものの、所得税と住民税の軽減効果で実質的に数千円の節税につながります。少額でも複利的に効いてくるため、確定申告で漏れなく申請しましょう。
返済計画を強化するキャッシュフロー管理術
ポイントは、返済、修繕、税金という三つのキャッシュアウトを同時に管理することです。毎月のローン返済額は分かりやすい固定費用ですが、設備更新や入居者入れ替え時の原状回復費は突発的に発生します。国土交通省「賃貸住宅修繕実態調査」では、築15年を超える物件では平均年間修繕費が家賃収入の12%前後に達しています。
これを踏まえ、家賃収入から返済額と固定資産税、修繕積立を差し引いた後に、手元に月当たり2万円以上の余裕が残るかを確認してください。もし余裕が出ない場合は、借入期間を延ばす、自己資金を追加投入する、あるいは物件価格を見直すなどの対策が不可欠です。また、管理委託料や保険料が見直し可能か定期的にチェックする習慣も、長期安定経営には欠かせません。
なお、将来的な金利上昇リスクをヘッジする手段として、固定金利期間選択型ローンを活用する方法があります。10年間は固定2.6%、以降は変動に切り替えるプランなら、当面のキャッシュフローを安定させつつ、余剰資金を貯める時間が確保できます。金利が低い間に繰上返済を行えば、総支払利息を大幅に削減できる点も見逃せません。
金利動向と2025年度の金融商品を味方にする
実は、2024年末からの日本銀行の金融政策調整で、長期金利は緩やかに上昇傾向にあります。しかし、住宅ローンと異なり、不動産投資ローンの金利は競合が少ないため、上昇幅が限定的にとどまっています。現状の変動型1.5%台は歴史的低水準であり、固定10年2.5%も依然として魅力的です。
多くのメガバンクは2025年度、年収1000万円超の投資家向けに「金利引下げキャンペーン」を継続しています。条件は自己資金30%以上、借入額1億円以内、フルローン不可といった制限付きですが、審査に通れば金利を0.1〜0.2%下げられます。また、一部のノンバンクは返済比率を50%まで許容する代わりに金利を3.5%以上に設定しています。表面利回りが高い物件であっても、金利差が収益を削り取るため慎重な比較が必要です。
さらに、地方銀行の中には環境性能に優れた賃貸住宅に対して金利を0.1%優遇する「ZEH賃貸ローン」を提供する動きもあります。補助金こそ付きませんが、長期的な空室対策としてエネルギー効率の高い物件を選ぶことは、入居者ニーズの変化に対応する上で大きなメリットとなります。
リスクシナリオと長期戦略の立て方
基本的に、不動産投資の最大リスクは空室と家賃下落です。総務省統計局の人口推計では、2025年以降、全国の総世帯数は微減に転じる見通しで、特に地方圏で影響が大きくなります。立地選定の際は、駅徒歩5分以内、大学や病院など雇用が安定したエリアを優先することで、需要の底堅さを確保できます。
また、物件の築年数と設備仕様は家賃に直結します。築25年を超えるRC造マンションでも、フルリノベーションを施しインターネット無料を導入すれば、家賃維持率を10%以上改善できた事例があります。つまり、購入前に将来の価値向上余地を見極める視点が欠かせません。
最後に、出口戦略を具体的に描くことが成功の鍵になります。売却益を狙うのか、長期保有でキャッシュフローを積み上げるのかによって、ローン期間や物件タイプの選択肢が変わります。銀行とのコミュニケーションを密にし、残債が家賃収入総額の7年分以下になった時点で売却査定を取るなど、定点観測を行うことで、想定外の価格下落を回避できます。
まとめ
本稿では「不動産投資ローン 団信 年収1500万」というテーマを軸に、与信力の目安、団信の保障内容、キャッシュフロー管理、金利動向、リスクシナリオを整理しました。借入枠が大きくなるほど、金利や保険料のわずかな違いが収益に与える影響は大きくなります。まずは返済比率35%以内、空室率20%でも黒字という保守的な試算を行い、保障内容と金利のバランスを比較検討してください。こうした丁寧な準備を重ねることで、年収1500万円層でも無理なく不動産ポートフォリオを拡大し、将来の資産形成を着実に進められるはずです。
参考文献・出典
- 全国銀行協会 – https://www.zenginkyo.or.jp
- 国土交通省 住宅局「賃貸住宅修繕実態調査」 – https://www.mlit.go.jp
- 総務省統計局 人口推計 – https://www.stat.go.jp
- 日本銀行「金融システムレポート」 – https://www.boj.or.jp
- 不動産経済研究所「全国マンション市場動向」 – https://www.fudousankeizai.co.jp