不動産の税金

2027年 REIT デメリットと対策

不動産投資で手間なく分散が図れるREIT(不動産投資信託)は、ここ数年で急速に人気が高まりました。しかし「購入は簡単でも本当に安全なのか」と不安を抱える人も多いでしょう。本記事では、2025年10月時点のデータと制度をもとに、2027年に予想されるREIT特有のデメリットを整理し、その乗り越え方まで詳しく解説します。読むことで価格変動や税金への備えができ、資産形成を一歩前に進められます。

REITの基本と2027年を取り巻く環境

REITの基本と2027年を取り巻く環境のイメージ

まず押さえておきたいのは、REITが株式市場で売買できる不動産ファンドであり、物件の運営益や売却益を分配金として受け取れる仕組みです。東京証券取引所によると、2025年9月末の市場時価総額は約20兆円で、上場銘柄は65本に達しました。つまり流動性は高いものの、株式同様にマクロ経済の影響を受けやすい点が特徴です。

2027年にかけての注目ポイントは金利とインフレです。日本銀行は2024年から段階的にマイナス金利を解除し、政策金利は2025年10月時点で0.25%まで上昇しました。歴史的に見ると金利上昇は不動産価格の下落圧力につながりやすく、REITの分配原資が圧迫される可能性があります。また、総務省の消費者物価指数は前年同月比3%前後で推移しており、物件修繕費の増加も無視できません。

一方でオフィス需要の地域差が広がると見込まれています。国土交通省「都心オフィス空室率調査」では、2025年上半期の東京都心5区空室率が6%台まで上昇し、賃料は横ばいです。地方主要都市ではインバウンド需要の回復でホテル系REITが堅調ですが、住宅系REITは人口減少の影響を受けやすいとされます。これらの環境をふまえると「2027年 REIT デメリット」を正しく理解することが不可欠です。

分配金が下がるリスクとその背景

分配金が下がるリスクとその背景のイメージ

重要なのは、分配金が必ずしも右肩上がりでない点です。REITは投資法人税制により利益の90%以上を分配する代わりに法人税が軽減されますが、賃料収入が減れば分配金も直ちに減ります。金融庁のモニタリング資料では、2023年から2025年にかけてオフィス系REITの平均分配金が前年比▲3%で推移しました。

賃料下落の要因はテナントの移転や縮小だけではありません。テレワーク定着によるオフィス面積圧縮、物流施設の競争激化、ホテル系の稼働率回復の遅れなど、セクターごとに事情が異なります。たとえば物流系の場合、新規供給が増えると立地が劣る施設の賃料が先に調整されます。つまり分配金の安定度はポートフォリオの質に大きく左右されるのです。

さらに、修繕費や物件取得費の上昇も収益を圧迫します。建設コスト指数は2025年時点で前年から5%上昇しており、築古物件を多く抱えるREITほど痛手です。加えて、金利上昇局面では借入金コストも増えます。日本格付研究所の試算では、借入比率(LTV)が50%のREITが金利1%上昇で利益が約6%減少する可能性が示されました。これらの複合要因を把握しないと、想定外の減配に直面しかねません。

市場価格の変動要因と心理的な負担

ポイントは、REITの価格が不動産価値だけでなく投資家心理に左右されることです。東証REIT指数は2020年3月のコロナショックで一時50%近く下落し、その後2年かけて戻りました。値動き自体はTOPIXより小さいものの、利回り重視の投資家が投げ売りすると短期的な下げがきつくなる傾向があります。

ボラティリティが高まる要因として、外国人投資家比率の上昇も無視できません。日本取引所グループの統計では、2025年のREIT取引に占める海外投資家の売買シェアは42%で過去最高となりました。海外勢は金利や為替に敏感なため、米国FRBの政策転換で一気に資金を引き揚げることがあります。つまり海外市場のニュースで日本REITが動く場面が増えるのです。

こうした急落局面で最大の問題は、初心者ほど冷静さを失いやすい点です。価格回復を待てずに損切りすると、分配金という長期の魅力を自ら放棄してしまいます。心理的な負担を軽減するためには、日々の値動きを追い過ぎず、購入前に出口戦略を決めておく姿勢が求められます。

税制面で見落としがちなポイント

実は税金もリターンを左右する重要ファクターです。REITの分配金は配当所得として扱われ、上場株式と同じく20.315%の源泉税が課されます。ただし、配当控除の適用外である点は株式と異なります。つまり課税後利回りは想像以上に低下する場合があるのです。

NISA(少額投資非課税制度)は2024年に恒久化され、年間投資枠が拡充されました。2025年度も非課税保有限度額1,800万円は継続中ですが、枠を消費すると課税口座で買うしかありません。長期的にREITを積み立てたい人は、早期に枠を確保しつつ個別銘柄とインデックスETFの配分を考える必要があります。

また、譲渡益にも注意が必要です。高値で売却しても配当控除が使えず総合課税とも損益通算できないため、含み益が大きい銘柄は売却タイミングを慎重に計るべきです。加えて、地方税の均等割を含む住民税負担も見落とされがちです。税負担を最小化するには、損出しや翌年以降の分配予想を踏まえた売買が有効となります。

デメリットを乗り越えるための実践策

まず、分散投資の徹底が最優先です。セクターを跨いで3~5銘柄に振り分けるだけでも、単一銘柄リスクは大幅に下がります。たとえばオフィス系と住宅系を組み合わせ、残りを物流やインフラREITで補完する形が有効です。

次に、分配金の推移と借入金比率を四半期ごとに確認しましょう。J-REITの決算情報は全銘柄が英文開示も行っており、資料は無料です。分配金性向が高すぎる場合、翌期以降の減配リスクが高まります。逆に内部留保を厚く持つ銘柄は金利上昇局面で耐性を示しやすいと言えます。

さらに、長期金利とREIT利回りのスプレッドを意識する姿勢が欠かせません。日本国債10年物利回りと比較して2.5%以上の上乗せが確保できる局面では、相対的に投資妙味が高いと判断できます。加えて、ドル建て資産を組み合わせて為替ヘッジする方法も一案です。

最後に、定期積立で時間分散を図ると心理的な負担が軽くなります。毎月一定額を購入することで平均取得価格が平準化され、急落時にも保有数量が増えるメリットが得られます。これらを実践すれば、2027年に懸念されるREITデメリットを受け止めつつ、着実な資産成長を目指せます。

まとめ

本記事では、2027年を見据えたREITのデメリットとして「分配金の減少リスク」「価格変動の大きさ」「税制上の不利」を取り上げ、その背景と対策を具体的に説明しました。重要なのは、金利やマクロ経済の影響を理解し、複数銘柄への分散と税負担の最適化を同時に行うことです。今日からできる行動として、保有銘柄のLTVと分配方針を確認し、余裕資金で定期積立を始めることをおすすめします。将来の市場変動を恐れず、情報と戦略で武装して長期的なリターンを手に入れましょう。

参考文献・出典

  • 東京証券取引所 – https://www.jpx.co.jp
  • 金融庁「J-REITモニタリング資料」 – https://www.fsa.go.jp
  • 国土交通省「都心オフィス空室率調査」 – https://www.mlit.go.jp
  • 日本取引所グループ「投資部門別売買状況」 – https://www.jpx.co.jp/markets/statistics
  • 日本格付研究所「J-REITの財務分析」 – https://www.jcr.co.jp

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