不動産クラウドファンディングに興味はあるけれど、「本当に利回りが出るのか」「マンション案件は安全なのか」と迷っていませんか。複数の物件に少額から分散投資できるメリットは大きいものの、仕組みを理解しないまま参加すると思わぬ損失を招くおそれがあります。本記事では、利回りの算出方法からマンション案件の見極め方、2025年度の制度を活用した節税ポイントまでを丁寧に解説します。読み終えるころには、初心者でも自信を持って一歩を踏み出せる具体的な判断基準が手に入ります。
不動産クラウドファンディングとは

まず押さえておきたいのは、不動産クラウドファンディングが「不動産特定共同事業法」に基づく仕組みだという点です。事業者が小口化した不動産をインターネット上で募集し、投資家は1万円程度から参加できます。従来の現物投資と違い、物件の管理や賃料の回収を事業者が担うため、投資家は運用報告を受け取るだけで済みます。
一方で、元本保証はなく、物件価格の下落や空室が続くと配当(分配金)が減るリスクがあります。したがって、案件の利回りだけを見て飛びつくのではなく、運営会社の実績や案件ごとの優先劣後構造を確認することが重要です。優先劣後構造とは、劣後出資者(多くは事業者)が一定割合の損失を先に負担する仕組みで、投資家のリスクを軽減します。
さらに、上場企業傘下の事業者かどうかで開示情報の質が変わる点にも注目しましょう。金融庁のガイドラインに沿った運営会社であっても、開示内容が詳細なほど透明性は高まります。つまり、事業者選びは利回りと同じくらい大切な要素になるのです。
利回りの仕組みと計算方法

ポイントは、表示される利回りが「表面利回り」なのか「実質利回り」なのかを見極めることです。表面利回りは分配予定額を出資額で割った単純計算で、一見高く見える傾向があります。一方、実質利回りは運営報酬や税金を差し引いた手取りベースで算出するため、投資判断にはこちらが欠かせません。
たとえば、1口10万円の案件で年間配当が6,000円の場合、表面利回りは6%です。しかし運営手数料が年率1%差し引かれると、手取りは5,000円になり実質利回りは5%へ低下します。加えて、分配金に対しては20.315%の源泉徴収があるため、最終的な手取り利回りは約3.98%まで目減りします。
東京23区のワンルームマンション平均表面利回りは4.2%(日本不動産研究所、2025年10月)なので、クラウドファンディング案件で5%台の実質利回りが出れば相対的に魅力的といえます。もっとも、運用期間が12〜18か月と短い場合は再投資の手間が生じるため、複利効果を得るには早めに次の案件を探す姿勢が必要です。
マンション案件の選び方
実は、マンション案件の質は「立地」「築年数」「出口戦略」の3点で大きく差がつきます。まず立地ですが、都心の駅徒歩10分圏は価格が高くても空室リスクが低いため、分配金の安定性が見込めます。郊外物件は利回りが高く表示されることが多いものの、人口減少による空室リスクが相対的に高まるので注意が必要です。
築年数は20年以内が目安です。築浅ほど修繕費が抑えられ、賃料水準を維持しやすいのが理由です。築25年を超えると大規模修繕のタイミングと重なる可能性が高まり、分配金が想定より下がる事例も珍しくありません。
出口戦略としては、運用終了時に物件を売却して得た差益を分配する「キャピタルゲイン型」と、物件を保有し続けながら賃料を分配する「インカムゲイン型」があります。キャピタルゲイン型は景気変動の影響を受けやすい反面、短期間で高い利回りが期待できます。インカムゲイン型は安定志向ですが、利回りはやや控えめになる傾向があります。投資目的に合わせて選択しましょう。
リスク管理と投資期間の考え方
基本的に、リスクを抑える最善策は複数案件への分散です。一つの案件に資金を集中させると、空室や災害による損失が直撃します。最低でも3案件、理想的には5案件以上に分けることで安定度が高まります。
また、運用期間が6か月と24か月ではリスクの性質が異なります。短期案件は市場変動を受けにくい一方、再投資のタイミングが合わないと資金が遊ぶ時間が増え、年間利回りが下がることがあります。長期案件は複数年の家賃収入を狙えるものの、金利上昇や経済情勢の変化にさらされる期間も長くなります。
さらに、地震リスクへの備えとして保険加入状況をチェックしましょう。多くの事業者は火災保険と地震保険をセットで付保しますが、補償額や免責金額は案件ごとに異なります。保険の範囲を確認せずに利回りだけ追求すると、災害時に分配が大幅に減る恐れがあります。
2025年度の制度と税制メリット
重要なのは、2025年度も継続する「不動産特定共同事業者税制優遇」を正しく理解することです。クラウドファンディング事業者を通じて分配金を受け取る場合、投資家は雑所得として総合課税か申告分離課税を選択できます。給与収入が多い人は、総合課税で累進税率が上がるより、申告分離課税20.315%で確定させたほうが節税になるケースが一般的です。
さらに、総合課税を選び必要経費を計上すれば、他の所得と損益通算が可能です。例えば、投資用セミナー費や書籍代を必要経費として申告し、分配金と相殺することで課税所得の圧縮が図れます。ただし、経費として認められるかは合理的な関連性が条件となるため、領収書の保管は必須です。
2025年度は、不動産特定共同事業者への出資総額が1,000万円を超えると、金融庁への届出義務が生じる点も覚えておきましょう。届出自体はオンラインで完結し、手数料もかかりませんが、提出を怠ると行政指導の対象になります。
まとめ
マンション特化型の不動産クラウドファンディングは、少額から安定したインカムを狙える一方で、利回りの表記やリスク構造を読み解く力が欠かせません。立地・築年数・出口戦略を軸に案件を選び、実質利回りを必ず計算したうえで複数案件へ分散投資することが成功への近道です。さらに、2025年度も有効な税制優遇を活用すれば、手取り利回りをもう一段引き上げることができます。今日学んだチェックポイントを参考に、まずは少額から実践し、経験を積みながら投資規模を拡大していきましょう。
参考文献・出典
- 日本不動産研究所 – https://www.reinet.or.jp
- 不動産経済研究所 – https://www.fudousankeizai.co.jp
- 金融庁「不動産特定共同事業法に関するガイドライン」 – https://www.fsa.go.jp
- 国土交通省「不動産市場動向レポート2025」 – https://www.mlit.go.jp
- 総務省統計局「住民基本台帳に基づく人口動態調査 2025年版」 – https://www.stat.go.jp