不動産の税金

REITと転売のデメリットを徹底解説

不動産投資を始めたいけれど、まとまった自己資金がない、または物件を管理する時間が取れない。そんな悩みを抱える人にとって、J-REITを短期で売買する「REIT転売」は手軽な選択肢に映ります。しかし一見スマートに見える手法にも思わぬ落とし穴があります。本記事では、REIT転売の仕組みと2025年時点で考慮すべきデメリットを分かりやすく整理し、リスクを抑えながら投資効果を高めるヒントを提示します。

REITとは何かをおさらい

REITとは何かをおさらいのイメージ

まず押さえておきたいのは、REITが「不動産投資信託」の英訳であるReal Estate Investment Trustの略称だという点です。東京証券取引所に上場しているJ-REITは、投資家から集めた資金で複数の賃貸ビルや物流施設を保有し、賃料収入や売却益を分配金として還元します。つまり一口買うだけで、実物の物件を共同で所有するイメージです。

金融庁の2025年7月時点の公表資料によると、J-REITの平均分配利回りは3.7%前後で推移しています。これは長期国債利回りの約1.5%を上回り、国内株式の平均配当利回りに近い水準です。また、上場株と同様に市場でリアルタイム取引ができるため、流動性が高いことも特徴といえます。

一方で、REIT価格は保有物件の賃料や空室率だけでなく、金利動向や株式市場の心理にも左右されます。日銀が金利をわずかに引き上げただけでも、分配金の割引率が変わり、価格が大きく振れるケースがあります。価格変動リスクがゼロではない点を念頭に置かなければなりません。

転売投資の基本と魅力

転売投資の基本と魅力のイメージ

重要なのは、転売という行為が「買ってすぐ売る」だけではないという事実です。株式のデイトレードと同様、短期で値幅を取って利ざやを狙うのがREIT転売の核ですが、数週間から数か月ポジションを保有するスイング取引も含まれます。投資家は市況を読み、値上がり益(キャピタルゲイン)を求めて売買する点で共通しています。

REIT転売が注目される理由の一つは、売買手数料の低さです。オンライン証券では売買代金の0.1%前後が一般的で、物件転売で発生する仲介手数料や登記費用に比べて格段に安く済みます。また、取引はネットとスマホで完結するため、物件調査や入居者対応に追われる心配がありません。これらの手軽さが、副業としても人気を集める要因でしょう。

さらに、少額で分散しやすい点も魅力です。例えば2025年8月時点で最も流動性の高い総合型REITの株価は1口15万円前後で、複数銘柄を同時に保有しても実物不動産よりは資金負担が小さくなります。言い換えると、短期売買を繰り返しながらもポートフォリオを広げやすい環境が整っているわけです。

REIT転売が注目される背景

実は、2023年以降のインフレ加速と金利正常化観測がREIT市場の値動きを豊かにしました。日本銀行は2024年末に長短金利操作を柔軟化し、長期金利が1.2%台まで上昇しました。その結果、利回り格差を意識した機関投資家がREITを売り、その後は価格調整で割安感が出て個人が買い戻す、といったサイクルが短期間で起こりやすくなっています。

加えて、2025年度から適用されている「国内REIT指数に連動する企業年金の比率引き上げ」が、市場に一定の資金流入をもたらしました。需給が目まぐるしく変わるため、短期的に10%以上の価格変動を示す銘柄も珍しくありません。投資経験が浅い人でも「値幅が取れそう」と感じるのは自然でしょう。

ポイントは、株式市場が下落局面でもREITが一時的に買われることがあり、逆相関を狙う形でリスクヘッジに使えると語られる点です。ただし、相関が完全に切れるわけではなく、世界的なリスクオフでは一緒に売られるケースも多いので、過信は禁物です。

実はここが落とし穴―主なデメリット

ここからが本題ですが、REIT転売には以下のようなデメリットが存在します。まず、短期売買を繰り返すと配当落ち日に保有していないため、分配金を受け取れない場合があります。分配利回りが高いREITほど、この機会損失は意外に大きく、年利換算で1%近く差がつくこともあります。

次に、値動きの方向性を読む難しさです。REIT価格は不動産市況だけでなく、米国金利や為替の影響を受けます。たとえば2025年3月に発生した米国長期金利急騰では、J-REIT指数が一週間で6%下落しました。ファンダメンタルズに問題がなくても外部要因で振れるため、テクニカル分析に慣れていない投資家は狼狽売りを誘発しやすいでしょう。

さらに、所得税の課税方式にも注意が必要です。REIT売買益は上場株と同じ申告分離課税で20.315%課税されますが、損失が出ても翌年以降3年間しか繰り越せません。安易に頻繁な売買を行い、損失が膨らむと節税メリットが限定的になります。加えて、短期集中で売買を行うと、証券口座の年間取引報告書が複雑になり、確定申告の事務負担が増える点も見逃せません。

デメリットへの対策と健全な運用法

ポイントは、デメリットを理解したうえで売買ルールを整備することです。たとえば「分配金権利付き最終日だけは保有を維持する」と決めれば、インカムゲインを確実に取り込めます。また、価格変動に備えてストップロス(自動損切り)を設定し、最大損失額をポートフォリオ全体の2%程度に限定する方法も有効です。

もう一つは、投資判断の軸を増やすことです。東証が毎月公表する「REIT月次情報」には、各銘柄のNAV倍率(純資産価値比)が掲載されています。この指標が0.9倍を下回ると市場価格が物件価値より割安と判断でき、長期保有して値戻りを待つ戦略が取りやすくなります。つまりファンダメンタルズ分析を補助線にすることで、無用な短期売買を減らせるわけです。

最後に、手数料と税負担を下げる制度活用も検討しましょう。2024年から拡充された「新NISA」は2025年時点でも有効で、年間240万円までの成長投資枠でREITを購入すれば、最長5年間売却益と分配金が非課税になります。転売益を繰り返し得ても非課税枠内なら税負担がゼロなので、資金効率を高める大きな手助けになります。

まとめ

REIT転売は、少額から参加できて流動性も高い一方、分配金の機会損失や市況読みの難しさ、課税面の制約といったデメリットを伴います。それでもルールを定め、NAV倍率や権利付き日といった基礎情報を押さえ、新NISAなどの制度を組み合わせれば、リスクを抑えつつ着実なリターンを狙うことは可能です。まずは自身の投資スタイルと時間の制約を見極め、無理のない範囲でREIT転売を活用してみてはいかがでしょうか。

参考文献・出典

  • 金融庁 – https://www.fsa.go.jp/
  • 国土交通省 不動産市場動向 – https://www.mlit.go.jp/
  • 日本取引所グループ(JPX)REIT月次情報 – https://www.jpx.co.jp/
  • 不動産証券化協会(ARES)市場データ – https://www.ares.or.jp/
  • 日本不動産研究所 都市総合インデックス – https://www.reinet.or.jp/

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