マンション投資に興味はあるものの、「表面利回りと実質利回りの違いが分からない」「空室や修繕リスクをどう抑えればいいのか」と悩む方は多いはずです。実際、利回りを正しく理解しないまま購入すると、予定していたキャッシュフローが得られずに後悔するケースが少なくありません。本記事では、実質利回りを軸にした投資判断のポイントを整理し、2025年10月時点の最新データを踏まえてリスク回避の具体策を解説します。読了後には、物件選定から資金計画まで、自分に合った戦略を描けるようになるでしょう。
実質利回りとは何か

まず押さえておきたいのは、表面利回りと実質利回りの決定的な違いです。表面利回りは年間家賃収入を物件価格で割ったシンプルな指標ですが、管理費や修繕費、ローン金利といったコストを考慮していません。一方で実質利回りは、これらの支出を差し引いた後の手取り収入を基に算出するため、キャッシュフローをより正確に把握できます。
東京23区の平均表面利回りは、日本不動産研究所の2025年10月調査でワンルーム4.2%、ファミリータイプ3.8%です。しかし、管理費や固定資産税を勘案すると、実質利回りはそれぞれ1〜1.5ポイント下がるのが一般的です。つまり、表面利回り4.2%のワンルームでも、実際の手取りは3%前後にとどまる可能性が高いというわけです。
重要なのは、この差を理解したうえで資金計画を立てることです。毎月の金利負担や突発的な修繕費まで織り込んだ実質利回りを確認すれば、投資後に「思ったより手残りが少ない」という失敗を回避できます。特に金利上昇局面では、ローン返済額が膨らむため、実質利回りが急速に悪化するリスクがあります。
マンション投資で利回りを高める方法

ポイントは、収入を増やす策と支出を減らす策を並行して検討することです。家賃収入を増やす王道は、駅近や人気エリアの物件を選ぶことですが、価格上昇が続く都心では利回りが伸び悩みがちです。そのため、周辺相場より2〜3分安い購入価格で仕入れる「ディスカウント物件」を探すことが実質利回り向上に直結します。
一方で支出面の削減も見逃せません。管理会社の手数料は5%から3%まで幅がありますが、サービス内容を慎重に比較すると固定費を抑えつつ品質を保てる場合があります。また、修繕費を平準化するために、共用部の長期修繕計画が詳細なマンションを選べば、大規模修繕の突然の出費を回避しやすくなります。
実は、賃料を上げるリフォームよりも、空室期間を短縮する軽微なリニューアルの方が費用対効果が高いケースが多いです。壁紙交換や照明のLED化は1戸あたり10万円以下で済み、成約までの期間を平均1カ月短縮できれば、年間の空室損失を数万円抑えられます。こうした小さな工夫の積み重ねが、長期的には実質利回りを大きく底上げします。
リスク回避に効く物件選定の視点
実質利回りを高めても、リスクを軽視すると収益計画は簡単に崩れます。空室リスクを抑える最優先条件は、人口流入が続くエリアを選ぶことです。総務省統計局の最新推計では、東京23区のうち中央区と江東区は2020〜2025年で人口が3%以上伸びています。つまり、将来的にも賃貸需要が見込めるエリアといえます。
さらに、マンションの管理体制は見逃せないポイントです。国土交通省のマンション総合調査によると、管理組合の借入金比率が高い物件ほど、大規模修繕の際に追加負担が発生しやすい傾向があります。修繕積立金が毎月1万円以上、積立総額が1戸当たり100万円を超えていれば、突発的な徴収リスクは低めです。
また、耐震基準にも注意してください。1981年6月以降に建築確認を受けた「新耐震基準」であっても、建物の劣化状況によっては地震保険料が上がるケースがあります。購入前に専門家へインスペクション(建物診断)を依頼し、将来的な修繕費を見積もることで、想定外のコストを抑えられます。これらのチェック項目を系統立てて確認することが、まさにリスク回避の土台となるのです。
収支シミュレーションで確認すべき指標
基本的に、購入前の試算に時間をかけるほど失敗確率は下がります。筆者は少なくとも3つのシナリオを作ることを推奨しています。楽観ケース、標準ケースに加え、空室率20%、金利上昇2%といった悲観ケースを用意し、30年間のキャッシュフローが赤字にならないか確認してください。
特に注目したい指標が「元利均等返済後の年間手残り」です。税引き後キャッシュフローが家賃収入の20%以上残るよう設定すれば、修繕費の増加や賃料下落にも対応しやすくなります。また、国税庁の統計によると、個人の不動産所得に適用される最高税率は今後も変わらない見通しですが、損益通算を適切に行うことで税負担を圧縮できる点も見逃せません。
ローンの金利タイプも実質利回りに影響します。長期固定金利は返済計画が立てやすい一方、変動金利より0.3〜0.5ポイント高くなるのが一般的です。金利が1%上がると、3,000万円借入の場合で年間返済額は約18万円増えるため、実質利回りが0.6ポイント下がる計算になります。金利上昇リスクをどう許容するかが、シミュレーション段階での大きな判断材料となります。
2025年度の制度と市場動向を活かす
実は、2025年度も投資家が利用できる制度はいくつか継続しています。代表例が住宅ローン減税で、投資用物件には直接適用されませんが、自宅をローン減税の対象とし、浮いた資金を投資に回す“レバレッジ戦略”を採る人が増えています。また、耐震・省エネ性能を高めた物件を保有すると、地震保険料の割引率が最大50%になる制度が続いており、長期コスト削減に寄与します。
市場動向にも目を向けましょう。不動産経済研究所のデータでは、2025年10月の新築マンション平均価格は7,580万円で前年比3.2%上昇しています。価格が高止まりする一方で、賃料の上昇ペースは緩やかなため、利回り確保が難しくなっています。しかし、築浅中古に目線を広げると価格上昇が抑えられ、実質利回りが表面で5%前後の物件も見つかります。需要が底堅いエリアの築10年前後の中古を検討することで、購入価格を抑えつつ安定したキャッシュフローを得る戦略が有効です。
最後に、FinTech系の家賃保証サービスやAI査定ツールなど、テクノロジーを活用したリスク管理方法も2025年に入って一層充実しています。賃料遅延リスクを減らし、市場賃料の変化をリアルタイムで把握できるため、実質利回りのブレを最小限に抑えられます。制度とテクノロジーの双方を取り入れることで、初心者でも着実にリスク回避が可能になるでしょう。
まとめ
本記事では、表面利回りでは見えにくいコストを織り込んだ実質利回りの考え方を中心に、利回り向上とリスク回避の具体策を解説しました。物件価格のディスカウント、管理費の見直し、人口動向を踏まえた立地選定、そして悲観シナリオまで織り込んだ収支シミュレーションが重要なカギです。さらに、2025年度に利用できる制度や最新テクノロジーを活用すれば、不確実な市場でも着実にキャッシュフローを積み上げられます。まずは気になる物件で実質利回りを試算し、今日から自分だけの投資計画をブラッシュアップしてみてください。
参考文献・出典
- 日本不動産研究所 – https://www.reinet.or.jp
- 不動産経済研究所 – https://www.fudousankeizai.co.jp
- 国土交通省 マンション総合調査 – https://www.mlit.go.jp
- 総務省統計局 人口推計 – https://www.stat.go.jp
- 国税庁 タックスアンサー – https://www.nta.go.jp