不動産投資の中でも「REIT 転売」は少額から参加でき、売買も株式と同じ感覚で行えるため注目を集めています。しかし、価格変動が激しい一方で、配当利回りを得る長期保有と違い、タイミングを誤ると利益が伸びません。この記事では、REITの基本構造から転売で収益を上げるコツ、2025年度に有効な税制優遇までを順序立てて解説します。読み終える頃には、銘柄の選び方や売買判断のポイントが具体的にイメージできるはずです。
REITと転売の基礎を押さえる

まず押さえておきたいのは、REIT(不動産投資信託)が多数の投資家から資金を集め、オフィスや住宅などの不動産を保有・運用している点です。東京証券取引所に上場しているため、株式と同じようにリアルタイムで売買でき、1口数万円から参加できます。また、運用益の九割以上を分配する仕組みが法律で定められているため、価格だけでなく分配金利回りも評価軸となります。
転売では、配当よりキャピタルゲイン(値上がり益)を重視します。短期で利益を得るには、出来高が多くスプレッド(売値と買値の差)が小さい銘柄を選ぶことが肝心です。一方で、REIT市場は株式より流動性が劣るため、売買タイミングが限定されがちです。つまり、板情報や価格帯別出来高を確認し、流動性が細る前にポジションを解消する計画が不可欠です。
ここまでのまとめとして、転売を成功させる前提は「売買が成立しやすい銘柄を選ぶ」「分配金より価格変動に着目する」という二点です。次の章では、なぜ短期売買チャンスが生まれるのか、市場背景を具体的に見ていきます。
転売戦略が生まれる市場背景

実は、REIT価格は金利動向とオフィス空室率に大きく左右されます。日本銀行の資料によると、長期金利が0.25%から0.75%へ上昇した2024年中旬、東証REIT指数は半年で約8%下落しました。金利上昇で借入コストが高まり、利回りの見劣りが意識されたためです。転売を狙う投資家は、こうしたマクロ要因による急落局面を仕込み時と捉えます。
一方で、空室率が改善する兆しが出ると価格が切り返す傾向があります。国土交通省の速報値では、2025年4月の都心Aクラスオフィス空室率は2.5%と、前年より1ポイント改善しました。需給改善が確認された月から3か月で、オフィス特化型REITの平均価格が5%戻したケースもあります。短期売買では、この「金利上昇で叩き売られた後、指標改善で戻す波」を捉えるのが典型的なシナリオです。
さらに、世界的にリスクオフが強まると、国内投資家が高配当のREITを買いに動く場面もあります。結果として、為替や海外金利が変動要因となるため、株式市場よりニュースが少ないと油断すると波に乗り遅れます。常にマクロ指標を横目で見ながら、反転初動を逃さない体制が必要です。
物件選別と価格動向を読むコツ
ポイントは、各REITが保有する物件ポートフォリオを読み解き、予想分配金の変化を先取りすることです。住宅系REITはファミリー層の転入超過が続く首都圏への投資比率が高く、空室リスクが低めです。一方、物流施設系REITはオンライン消費の拡大で安定感が増すものの、供給過多になる地域では賃料が頭打ちになるため、物件所在地を精査しなければなりません。
具体的には、有価証券報告書の「物件概要」欄で築年数、賃料改定時期、テナント構成を確認します。賃料改定のタイミングが近い物件が多ければ、早期に分配金が増える期待が持てます。また、J-REIT各社が開示する月次運用状況で、稼働率やNOI(不動産純収益)の前月比を追うと、価格変動の伏線をつかみやすくなります。
取引所の板情報では、直近5分間の出来高急増もチェックします。短時間で通常の3倍以上の約定があった場合、機関投資家の売買が入ったサインであることが多く、短期トレンドが反転する可能性が高まります。言い換えると、数値を伴うファンダメンタルとリアルタイムのテクニカルを組み合わせることで、転売の勝率を引き上げられるのです。
資金計画と税務の落とし穴
転売益を最大化するには、想定外のコストを抑えることが欠かせません。売買委託手数料はネット証券なら往復で0.3%前後に収まりますが、頻繁に売買すると累積コストがかさみます。また、REITは配当落ち日翌日に価格が下がる傾向があるため、権利取り直後に売却する場合は値幅を見誤りがちです。
税務面では、短期での売買益は上場株式同様に譲渡所得として20.315%課税されます。NISA(少額投資非課税制度)を利用すれば年間360万円(成長投資枠)の投資が非課税になりますが、2025年度も非課税期間は無期限ではない点に注意してください。損益通算や繰越控除の条件も株式と同じなので、確定申告で損失を翌年以降3年間繰り越せる仕組みを活用すると、トータルで税負担を抑えやすくなります。
加えて、信用取引でレバレッジをかける場合、金利負担が日割りで発生します。2025年10月現在、大手ネット証券の一般信用金利は年率2.8%前後で推移しており、保有期間が数か月に及ぶと想定利益を食い潰します。つまり、利幅が小さい局面で無理に信用取引を使うと、手数料と金利で赤字化する例が後を絶ちません。
2025年度の制度と公的支援の活用法
重要なのは、実際に利用できる制度だけを把握し、終了済みの施策に惑わされないことです。2025年度も継続される「一般NISA」と「成長投資枠NISA」は、上場REITが非課税投資対象に含まれます。年間360万円の投資上限内であれば、転売益も分配金も非課税となるため、短期売買戦略と相性が良いと言えます。
また、2025年度税制改正では、REIT等を対象とする「特定投資法人等の内部留保課税」が見直され、分配可能利益の弾力的な算定が認められました。これにより、各REITが柔軟に分配金を増やしやすくなり、配当落ちによる価格下落が軽減される可能性があります。転売を考える投資家は、分配方針の変更をプラス材料として先取りできるかがカギになります。
一方で、補助金や給付金を直接受けられる制度はREIT投資には原則ありません。したがって、公的支援と言ってもNISAや譲渡損失の繰越控除など税制上のメリットが中心です。最新情報を確認する際は、金融庁や国税庁の公式サイトで2025年度版の資料を参照し、不確かなSNS情報に惑わされない姿勢が大切です。
まとめ
ここまで「REIT 転売」の基礎から実践までを解説しました。流動性の高い銘柄を選び、金利と空室率に注目してエントリー時期を見極めることが第一歩です。次に、物件ポートフォリオや月次データを精査し、短期トレンドを裏付ける情報を複合的に確認しましょう。さらに、手数料・税金・信用金利を加味した資金管理を徹底すれば、損失リスクを抑えつつ転売益を狙えます。結論として、制度面では2025年度も利用できるNISAを軸に据え、公式情報を随時チェックする姿勢が長期的な成功に結び付きます。まずは少額から経験を積み、データと市場の動きを自分の言葉で説明できるようになることが、次のステップへの最短ルートです。
参考文献・出典
- 日本取引所グループ(JPX) – https://www.jpx.co.jp
- 国土交通省「オフィス市場動向」速報 – https://www.mlit.go.jp
- 日本銀行「長期金利推移」統計 – https://www.boj.or.jp
- 金融庁「NISA特設ページ 2025年度版」 – https://www.fsa.go.jp
- 国税庁「譲渡所得等の課税制度」 – https://www.nta.go.jp