不動産の税金

収益物件 競売で始める賢い不動産投資入門

家賃収入を得たいけれど、物件価格の高騰で一歩踏み出せない。そんな悩みを抱える方にとって、相場より安く買える「収益物件 競売」は有力な選択肢です。ただし、手続きやリスクを正しく理解しなければ、期待した利回りが得られない可能性もあります。本記事では競売の基礎から入札の流れ、2025年の市場動向までを丁寧に解説します。読み終える頃には、競売を活用した投資戦略の全体像がつかめるはずです。

競売物件とは何かを正しく押さえる

競売物件とは何かを正しく押さえるのイメージ

まず押さえておきたいのは、競売物件の成り立ちです。競売は、ローン返済が滞った不動産を裁判所が差し押さえ、入札によって売却する制度です。入札は誰でも参加でき、落札額が債権者への返済に充てられます。

実は、競売の最大の特徴は価格設定にあります。裁判所が定める「売却基準価額」は市場価格より二〜三割低いケースが多く、投資家にとっては高利回りを狙える点が魅力です。一方で内覧が限定的で、現況引渡しとなるため修繕コストが読みにくいというリスクも併せ持ちます。

さらに、2025年10月現在、競売情報は最高裁判所運営の「BIT」サイトで一元的に公開され、三点セットと呼ばれる資料をダウンロードできます。これらの書類を読み込み、物件の法的・物理的状態を事前に把握する力が、投資成功への第一歩になります。

競売で収益物件を探すメリットとリスク

競売で収益物件を探すメリットとリスクのイメージ

ポイントは、競売独自の価格メリットをどこまで活かせるかです。通常の不動産取引では仲介手数料が発生しますが、競売では不要なため、初期費用を抑えられます。また、入札前の調査を自分で行うことで、情報コストも節約できます。

しかし、安さの裏にはリスクが潜みます。占有者が退去しない場合の明渡し費用、長期未収賃料の回収難、さらには見落としていた違法増築への是正命令など、想定外の出費が生じる可能性があります。つまり、入札前のリスク評価が甘いと、表面利回りだけを追って失敗することになります。

一方で、最近はプロ投資家の参入により、都心のマンション一室など人気物件の落札価格が上昇傾向です。2024年度の東京地裁データでは、売却基準価額に対する平均落札率が118%を超えました。したがって、地方中核都市や築古アパートなど、競争が緩い分野に目を向ける柔軟性も重要です。

入札から取得までの具体的ステップ

重要なのは、手続きを段階ごとに整理し、計画的に進めることです。まず、BITで物件を検索し、三点セットを精読します。次に、現地調査で周辺環境と建物状態を確認し、必要なら専門家に同行を依頼します。ここまでを済ませたら、入札価格をシミュレーションし、保証金を準備します。

入札は原則郵送または裁判所窓口で行い、開札日に結果が公表されます。落札した場合は、最短で四週間以内に残代金を納付しなければなりません。このタイトなスケジュールゆえに、金融機関との事前折衝が欠かせません。2025年度現在、多くの地方銀行が競売物件へのアパートローンを取り扱っていますが、融資実行は納付期限直前になることもあります。

残代金納付後、裁判所が「売却許可決定」を出し、所有権移転手続きを進めます。占有者がいる場合は、強制執行の申立てを検討しますが、実務では立退き交渉で合意するケースが大半です。合意金額は家賃の三〜六か月分が目安と言われており、ここを交渉次第で圧縮できれば、投資効率がさらに向上します。

資金計画と収支シミュレーションの落とし穴

まず押さえておきたいのは、表面利回りだけでは投資の成否を判断できない点です。例えば、売却基準価額900万円の築30年アパートを1200万円で落札し、年間家賃収入が180万円の場合、表面利回りは15%に見えます。しかし、実際にはリフォーム費用150万円、立退き交渉金60万円、固定資産税年12万円などがかかります。

そこで、ファイナンスコストを含む実質利回りを計算すると、自己資金300万円・ローン金利2.2%・返済期間20年と仮定した場合、年間キャッシュフローは約50万円にまで下がることがあります。加えて、空室率10%と修繕積立月1万円を見込めば、手残りがほぼゼロになるケースも珍しくありません。

つまり、シミュレーションでは、最低でも空室率20%、金利上昇1%のストレスシナリオを設定し、キャッシュフローが黒字を維持できるか確認する必要があります。さらに、2025年度税制改正で導入された「中古住宅の特別償却延長」を活用すれば、減価償却費が増えて課税所得を圧縮できるため、税後キャッシュフローの改善も期待できます。

2025年の競売市場動向と投資戦略

実は、2025年は競売市場にとって追い風となる要素が複数あります。住宅ローン金利は日銀の緩やかな利上げ局面でも1%台後半を維持し、資金調達環境は依然として良好です。また、総務省「令和7年国勢調査速報」によると、地方中核都市の人口流入は底堅く、賃貸需要が安定しています。

一方で、金融庁のガイドライン改定により、投資用ローン審査で空室率や金利上昇をより厳しく見積もる金融機関が増えました。これにより、表面的な利回りだけを求める短期投資家が減り、堅実な長期保有型が主流になりつつあります。

ポイントは、この変化を味方に付けることです。競合が減るエリアで物件を確保し、リフォームや民泊許可など付加価値を高める施策を織り込めば、安定収益を得ながら将来的な転売益も狙えます。さらに、環境性能向上リフォームには2025年度「住宅省エネ2025事業」の補助金が利用可能で、最大200万円が交付される点も見逃せません(申請期限は2026年3月末)。こうした制度を組み合わせることで、競売物件でも最新トレンドに合致した資産価値を創出できます。

まとめ

本記事では「収益物件 競売」の基礎から実践ステップ、2025年の市場動向までを解説しました。競売は相場より低価格で物件を取得できる反面、情報不足や追加コストのリスクがあります。要は、三点セットの精読と現地調査でリスクを数値化し、保守的なシミュレーションで資金計画を立てることが成功の鍵です。最後に、補助金や税制優遇も活用し、長期的な視点でキャッシュフローを最適化すれば、競売は初心者にとっても有望な投資手段となります。

参考文献・出典

  • 最高裁判所「BIT不動産競売物件情報サイト」 – https://bit.sikkou.jp
  • 国土交通省 土地総合情報システム – https://www.land.mlit.go.jp
  • 総務省 統計局「令和7年国勢調査速報」 – https://www.stat.go.jp
  • 金融庁「金融機関向け監督指針」2025年改定版 – https://www.fsa.go.jp
  • 住宅金融支援機構「民間ローン利用者調査2025」 – https://www.jhf.go.jp
  • 国土交通省「住宅省エネ2025事業」 – https://www.mlit.go.jp/house/energy2025

関連記事

TOP