投資用のマンションを買って民泊を運営したいものの、どの金融機関に相談すればいいのか、固定金利と変動金利のどちらが安全なのか、と悩む方は多いはずです。本記事では、不動産投資ローンの基本から民泊ビジネスの収益構造、2025年10月時点で利用できる優遇制度までを丁寧に解説します。読み終えれば、資金計画の立て方と融資の申し込み手順が具体的に見えてきますので、初めての方でも安心して一歩を踏み出せるでしょう。
民泊ビジネスの現状と収益構造

まず押さえておきたいのは、民泊がホテルよりも稼働率の変動が大きい点です。訪日客数は2025年の日本政府観光局統計で年間4,000万人を超え、東京・大阪の主要エリアでは平均稼働率70%台を維持しています。一方で地方都市では繁忙期と閑散期の差が激しく、稼働率50%を下回る月も珍しくありません。
この違いは収益構造に直結します。例えば1泊1万円の部屋を月21日稼働させれば売上は21万円ですが、15日しか埋まらなければ15万円に落ち込みます。簡易宿所としての許可申請や清掃委託費も考慮すると、家賃並みの固定費をカバーできない可能性が出てきます。つまり、民泊投資では稼働率を高める立地選びと価格設定が他の賃貸より重要になります。
さらに、2025年の民泊新法改正で定められた年間営業日数上限は撤廃されましたが、自治体ごとに独自の営業制限日が残っている点には注意が必要です。物件購入前に必ず自治体の条例を確認し、想定の稼働率が規制で削られないかをチェックすることが欠かせません。
不動産投資ローンの基礎知識

ポイントは、民泊向け物件でも一般の賃貸用ローンとは審査基準が異なる場合があることです。金融機関は宿泊業としての事業性を重視し、旅館業許可や運営実績を融資判断に組み込みます。個人名義で借りるか、合同会社を設立して借りるかで金利や担保評価にも差が出るため、事前にシミュレーションが必要です。
不動産投資ローンは大きく分けてアパートローン型とプロパーローン型があります。アパートローン型は担保力重視で金利が低めですが、民泊用途が認められないケースがあります。一方でプロパーローン型は事業計画が評価されるぶん、金利が0.3〜0.5%ほど上乗せされやすい一方、用途の自由度は高くなります。つまり、民泊で融資を受けるならプロパーローン型を前提に資金計画を組む方が現実的です。
全国銀行協会が2025年10月に公表した平均金利を見ると、変動型は1.5〜2.0%、固定10年型は2.5〜3.0%が目安です。自己資金を2割以上入れ、返済期間を20年以内に抑えると審査通過率が高まるという統計もあります。また、金利だけでなく団体信用生命保険や繰上げ返済手数料も総支払額に影響するため、複数行の条件を比較することが欠かせません。
固定金利を選ぶメリットとリスク
実は、民泊投資では固定金利を選ぶメリットが相対的に大きくなります。宿泊料は季節要因で変動しやすく、収入が読みにくい分、支出である金利を安定させることでキャッシュフローを平準化できるからです。変動金利が1.5%のとき固定10年が2.7%だとしても、将来金利が2%以上上昇するリスクを回避する保険料と考えれば納得感が得られます。
一方で固定金利には借り換えコストという見落としがちなリスクがあります。10年間の固定期間終了後に金利が高止まりしていれば、変動へ切り替えるタイミングを逃すと返済負担が一気に跳ね上がる可能性があります。また、元本均等返済を選ぶと初期の返済額が大きく、稼働率が低迷した際にキャッシュを圧迫する点にも注意が必要です。
したがって、固定金利を選ぶ際は「借入額に対する年間返済額が想定売上の50%を超えない」ように設定するのが安全圏となります。さらに、金利上昇シナリオを織り込んだ二重のシミュレーションを行い、5年後に稼働率が10%下がっても自己資金で穴埋めできるかをチェックしておくと安心です。
民泊物件で融資を引く具体的なステップ
まず必要なのは、金融機関が納得できる事業計画書の作成です。物件の立地分析に加え、宿泊単価と稼働率を月別に示し、清掃やOTA手数料を差し引いた純利益を明示します。次に、旅館業許可の取得スケジュールと施工業者の見積書を添付すると、融資担当者は事業の実現性を評価しやすくなります。
申し込みの際、個人の信用情報も当然見られます。クレジット延滞やカードローン残高が多いと、たとえ自己資金が潤沢でも評価が下がります。また、金融機関ごとに民泊の取り扱いスタンスが異なるため、最初から都心部の民泊実績が豊富な地方銀行や信金を狙うと効率的です。
契約が内諾されたら、固定金利オプションと団体信用生命保険の範囲を確認します。最近は、がん特約付きの団信でも金利上乗せ0.2%程度で済む商品が増えており、長期運営では心強い保険となります。最後に、決済から開業までの運転資金も含めて融資枠を調整し、手元キャッシュを枯渇させないようにすることが成功の鍵となります。
2025年度の優遇制度と活用ポイント
重要なのは、2025年度に実施中の中小企業省・観光庁「地域観光拠点強化事業補助金」です。この制度では、宿泊施設の開業に伴う改修費の1/3(上限2,000万円)が補助対象となります。民泊でも旅館業許可を取得し、地域活性化計画に合致すれば採択可能性があります。期限は2026年3月末までの着工なので、早めの申請が推奨されます。
また、地方自治体の多くが空き家活用補助を継続しています。東京都墨田区の「空き家宿泊施設化支援」は工事費の1/2を最大300万円まで助成し、2025年度も予算枠が確保されています。補助金は融資実行後に支払われることが多く、自己資金に余裕がない場合は金融機関に「補助金入金後に繰上返済する」旨を説明すると審査がスムーズになります。
さらに、環境省の「ZEB補助金」は宿泊施設向けの省エネ改修にも適用されます。断熱強化や高効率空調を入れるとランニングコストが下がり、固定金利で抑えた支出の効果をより高められます。こうした公的支援を組み合わせることで、自己資金を温存しながらリスクを抑えた民泊経営が実現します。
まとめ
固定金利の不動産投資ローンを活用して民泊を始めるには、安定した返済計画と稼働率に左右されない資金繰りが欠かせません。立地選び、事業計画書の作成、金融機関の選定、そして2025年度の補助金活用という四つの視点を押さえれば、初心者でも安全にスタートラインに立てます。ぜひ本記事を参考に、早めの情報収集とシミュレーションを行い、理想の民泊運営に踏み出してください。
参考文献・出典
- 全国銀行協会 – https://www.zenginkyo.or.jp
- 日本政府観光局(JNTO)統計 – https://statistics.jnto.go.jp
- 観光庁「地域観光拠点強化事業」公募要領 – https://www.mlit.go.jp/kankocho
- 東京都墨田区 空き家宿泊施設化支援事業 – https://www.city.sumida.lg.jp
- 環境省 ZEB補助金 2025年度概要 – https://www.env.go.jp