不動産投資に興味はあっても「実際のところ月収いくらになるのだろう」と悩む人は多いはずです。物件価格やローン返済額だけでなく、空室リスクや税金まで考慮すると答えは意外と複雑に感じられます。しかし、収入と支出の構造を正しく理解すれば、おおよその手取り額をイメージすることは難しくありません。本記事では「不動産投資 月収いくら」を軸に、計算方法の基本から収入を伸ばす戦略、2025年度の税制までをわかりやすく解説します。読み終える頃には、自分にとって現実的な目標月収と具体的な手順が描けるようになるでしょう。
月収を考える前に押さえたい計算の骨格

まず押さえておきたいのは、家賃収入から経費と税金を差し引いた手取りが実際の月収になるという基本構造です。国土交通省の「住宅市場動向調査2024」によると、区分マンション一戸の平均家賃は都心部で11万円前後、郊外では7万円前後です。
具体的な計算手順として、最初に表面利回りを確認し、次に管理費や修繕積立金、固定資産税を引いてネット利回りを求めます。そのうえでローン返済額を差し引くと、手取りの月収に近い数字が得られます。例えば都心物件で家賃11万円、管理費等が月2万円、ローン返済が月6万円なら、手取りは11万円−2万円−6万円で月3万円程度です。
しかし、空室期間を考慮しないと過大な数字になります。実は、全国平均の空室率は総務省「住宅・土地統計調査2023」で13.6%と報告されています。年間で1.5か月程度の空室を想定すると、月収はさらに1万円弱減少します。つまり、リアルな手取りを知るには「経費」と「空室」を同時に織り込むことが不可欠なのです。
物件タイプ別に異なる期待月収

重要なのは、物件の種類によって収入構造が大きく変わる点です。区分マンションと一棟アパート、さらに最近注目される戸建て賃貸では、初期費用もランニングコストも異なります。
区分マンションは購入価格が抑えやすい反面、管理費と修繕積立金が毎月発生します。前述の例では月収3万円でしたが、築年数が進むと修繕積立金が増え、月2万円台に下がることも珍しくありません。一方で立地が良ければ空室リスクは低く、安定度は高めです。
一棟アパートは複数戸から家賃を得られるため、戸数分リスクを分散できます。日本不動産研究所「投資家調査2025年10月版」によると、都心近郊の木造アパート一棟で平均利回りは6.2%です。総戸数6戸、年間家賃収入540万円の場合、管理費や共用部光熱費などで年80万円、ローン返済で年300万円を支払うと、月あたりの手取りは約13万円になります。ただし、大規模修繕の負担が重く、突発的に月収がマイナスになる可能性もある点は忘れないでください。
戸建て賃貸は初期費用が戸建て購入価格に直結し、利回りはやや低めですが、長期入居が期待できます。ファミリー層がターゲットのため年間入退去率が低く、空室期間は平均0.5か月以下というデータもあります。手取り月収は5万円程度でも、長く安定して得られるというメリットが魅力です。
コストとリスクを差し引く視点が月収を守る
ポイントは、手取り月収を計算するときに「見えにくい支出」と「突発コスト」を必ず織り込むことです。たとえばフリーレント(家賃無料期間)や入居者募集広告費、原状回復費用は、家賃収入の1〜2か月分に達することがあります。
さらに、固定資産税は毎年1〜2月に納付書が届きますが、心理的に月単位では忘れがちです。固定資産税が年間12万円なら、毎月1万円を積み立てておくとキャッシュフローが読みやすくなります。火災保険と地震保険も5年契約が一般的ですが、満期ごとに数十万円単位の支払いが発生するため、毎月積み立てる感覚が大切です。
ローン金利上昇リスクも看過できません。日本銀行の金融システムレポート(2025年4月)では、変動金利が1.0%→2.0%に上昇した場合、返済額は25年ローンで月2万円以上増加すると試算されています。金利が上昇しても耐えられる資金計画を立てることで、手取り月収を守ることができます。
つまり、安定した月収を実現するには「収入を増やす」より前に「支出をコントロールする」姿勢が不可欠なのです。
月収アップを実現する運営戦略
まず押さえておきたいのは、収入を大きく増やすのではなく「ちょっとずつ底上げする」施策が現実的ということです。家賃の数千円アップでも、長期的には大きな差になるからです。
リフォームによる価値向上は代表的な手段です。たとえば、築20年の1Kを20万円でアクセントクロスに変更し、家賃を月3千円アップできれば、7か月で回収できます。また、インターネット無料設備を導入すると、家賃2千円上乗せでも空室期間が短くなるため、実質的な月収はさらに増えます。入居者アンケートを見ると、Wi-Fi完備は「新規物件選びの決め手」上位3項目に入っており、投資効果が高いといえます。
入居者ターゲットを絞ったマーケティングも有効です。たとえば、駅から遠い物件でも駐車場付きならファミリー層を狙い、家具家電付きで単身赴任者を呼び込むなど、ニーズに合わせて賃料設定と広告手法を調整します。広告費を削減しながら空室期間を短縮できれば、その分月収が底上げされます。
さらに、複数物件をポートフォリオとして組むことで地域や構造のリスクを分散できます。区分マンションで安定収入を確保しつつ、一棟アパートで利回りを上乗せする戦略は、私自身12年間実践して堅実な成果を得てきました。
2025年度の税制と補助を活用して手取りを伸ばす
実は、税金の知識を持つだけで手取り月収は数千円以上変わることがあります。2025年度も不動産所得に適用される減価償却は健在で、木造住宅なら最短22年で償却完了となります。中古木造を購入し、残存耐用年数の短さを利用して経費計上を高めれば、所得税と住民税を圧縮できます。
また、2025年度の「住宅省エネリフォーム減税」は一定の断熱性能向上工事に対して最大25万円の所得税控除が認められています。この制度を利用してリフォームすれば、実質コストを下げつつ家賃アップも狙え、月収向上に直結します。控除対象工事は2025年12月末までの着工が条件なので、スケジュール管理が重要です。
小規模企業共済やiDeCo(個人型確定拠出年金)も節税効果が高い制度です。不動産所得と合算して所得控除を受ければ、キャッシュアウトせずに税額を減らせるため、結果として月々の手取りが増えます。つまり、税制と補助金を組み合わせて「支出を減らす」ことこそ、月収目標を現実的に達成する近道といえます。
まとめ
本記事では「不動産投資 月収いくら」という疑問に対し、収入と支出の構造、物件タイプ別の特徴、コスト管理、運営戦略、2025年度税制までを順序立てて解説しました。手取り月収は家賃収入から諸経費と税金、さらに空室リスクを差し引いた金額で決まります。まずはリアルな数字を把握し、支出の見える化とリスクの平準化を徹底しましょう。そのうえで小さな賃料アップや節税策を積み重ねれば、月収3万円を5万円、10万円へと着実に伸ばすことが可能です。今日からできる一歩として、自分の目標月収を書き出し、必要な家賃収入と許容リスクを逆算してみてください。行動と検証を繰り返すことで、安定したキャッシュフローへの道が開けます。
参考文献・出典
- 国土交通省 住宅市場動向調査2024 – https://www.mlit.go.jp
- 総務省 住宅・土地統計調査2023 – https://www.stat.go.jp
- 日本不動産研究所 投資家調査2025年10月版 – https://www.reinet.or.jp
- 日本銀行 金融システムレポート2025年4月 – https://www.boj.or.jp
- 財務省 租税調査会 資料2025年度 – https://www.mof.go.jp