不動産投資を始めたいものの、毎月いくら残るのか計算が難しいと感じていませんか。収支計算を誤ると、想定外の赤字に悩まされるリスクが高まります。本記事では「手順 収益物件 収支計算」という三つの鍵を丁寧にひも解き、初心者でも再現できる計算フローと注意点を解説します。読み終えた頃には、物件選定からシミュレーションまで自分の手で行えるようになり、投資判断に迷わなくなるはずです。
収支計算が重要な理由

重要なのは、投資判断を感覚ではなく数字に基づいて行うことです。国土交通省の「不動産投資市場動向調査」(2025年版)によると、黒字を維持できている個人投資家の約8割が購入前に詳細なシミュレーションを作成していました。一方で、計算を十分に行わずに購入した層では約5割が管理費の見通しを誤り、予定利回りを下回っています。この差は、キャッシュフローが将来の意思決定を支えるかどうかで生じると考えられます。
まず賃料収入が安定していても、金利上昇や空室が重なると純利益は一気に縮小します。だからこそ、プラス要因だけでなくマイナス要因を含めた「守りの計算」を行う姿勢が欠かせません。収益構造を把握すれば、無理のない返済計画や適切な修繕積立額を設定でき、長期保有でもブレない経営が実現します。
最後に、収支計算は金融機関交渉の武器にもなります。数字に裏付けられた計画は、融資担当者へ説得力を与え、融資期間や金利で有利な条件を引き出す助けとなります。数字は苦手という思い込みを捨て、むしろ味方につける意識を持ちましょう。
収益物件の情報収集と前提条件の整理

まず押さえておきたいのは、物件データと市場環境を正しく集めるステップです。レインズや各エリアの成約事例は価格や賃料の客観的な基準となります。加えて、総務省統計局の人口推計や各自治体の将来人口ビジョンを確認すれば、空室リスクを数値で読み解けます。こうした外部データは、収支計算の前提を現実的にする重要な材料です。
次に、物件固有の諸費用を洗い出します。固定資産税、都市計画税、管理委託料、修繕積立金、空室損失率などをヒアリングし、エクセルなどに入力します。ここで甘い見立てをすると後で帳尻を合わせるのが困難になります。築年、構造、設備のグレードによって将来修繕費が大きく異なるため、過去の大規模修繕履歴も忘れずに確認することが大切です。
さらに、金融機関の融資条件も事前に調べておきましょう。日本銀行の政策金利は2025年9月時点で短期プライムレートに連動していますが、変動金利は今後も上下の可能性があります。仮に0.5%の差でも、元利均等返済30年の場合で数百万円規模の返済差が生じるため、複数行の条件を比較する労力は決して無駄になりません。
手順で学ぶキャッシュフロー計算の基本
ポイントは、年間ベースのフローを月次に落とし、再び年間で検証するループを作ることです。以下の手順で進めれば、途中で抜け漏れが生じにくくなります。
1. 想定賃料と年間収入を算出 2. 空室率を掛けて実収入を調整 3. 管理費や修繕費など運営費を差し引く 4. 元利返済額を計上し、税引き前キャッシュフローを出す 5. 減価償却費を加味して課税所得を算定 6. 所得税・住民税を引き、手残り額を確認
まず、想定賃料は周辺成約賃料の下限値を採用し、楽観シナリオを排除します。次に、空室率は国土交通省「賃貸住宅市場データ集」からエリア平均を参照し、少なくとも5%上乗せする保守的設定が望ましいです。運営費は、RC造なら賃料収入の12〜15%、木造アパートなら20%前後を目安とし、収益性が一目で比較できるようにします。
さらに、減価償却費は税務上の節税効果を生みます。例えば築20年のRC造マンションを購入した場合、建物価格のうち約30%を残存耐用年数9年で定額償却でき、年間キャッシュフローを押し上げる要素となります。言い換えると、同じ利回りでも減価償却の大きい物件は手残りが増える可能性があるため、単純な表面利回り比較だけでは判断を誤るのです。
シミュレーション精度を高めるコツ
実は、収支計算は一度作って終わりではありません。購入前・購入後の両方でアップデートを続けることで、精度と実効性が高まります。購入後に家賃下落が見込まれる場合は、年1%の下落を前提に10年後のキャッシュフローを試算し、出口戦略を描きます。出口とは、売却益でローン残債を返済し、最終的なIRR(内部収益率)を黒字にするシナリオのことです。
また、修繕費は国土交通省の「建築物維持保全コスト調査」を参考に、外壁や屋上防水の周期と金額を具体的に盛り込みます。例えば、外壁改修を12年周期で500万円とする場合、毎年約42万円を積み立てておけば資金ショックを回避できます。こうした長期シミュレーションを取り入れると、短期の高利回りに惑わされずに済みます。
加えて、インフレや金利上昇シナリオも忘れずに検証します。日銀が2%のインフレ目標を継続する中で、家賃は上がらずに金利だけ上がるケースも想定し、金利2%上昇時の返済額を試算しておきます。リスクを数値化しておくと、融資比率(LTV)を下げるなど具体的な対策を打てるようになります。
2025年度の資金調達と税制優遇のポイント
まず押さえておきたいのは、2025年度に利用可能な税制優遇と補助制度です。個人投資家が活用しやすいのは「特定経営改善住宅投資減税」で、耐震・省エネ性能を満たす既存住宅を取得した場合、上限200万円を所得税額から控除できます。制度は2027年12月取得分まで延長されており、一定の認定手続きが必要です。
一方で、金融機関は環境配慮型ローンを拡充しています。省エネ性能BELS★★★以上の物件に対し、通常金利から年0.1〜0.3%引き下げを行うケースが増えています。日本政策金融公庫でも同様の優遇があり、省エネ基準を満たすリフォーム費用も融資対象に含められる点が魅力です。つまり、省エネリフォームを計画に組み込むことで、金利メリットと減税を同時に享受できます。
さらに、法人設立による節税も選択肢となります。法人税率は所得800万円以下で15%台に抑えられ、所得が高い個人より有利になる場面が多いです。ただし、設立費用や社会保険料負担といった固定コストが増えるため、年間キャッシュフローと合わせて慎重に検討する必要があります。税理士と早い段階で連携し、長期ビジョンに沿った形態を選びましょう。
まとめ
今回紹介した「手順 収益物件 収支計算」の流れを守れば、数字に裏打ちされた投資判断が可能になります。まず市場データと物件情報を集め、保守的な前提でキャッシュフローを作成します。次に、長期修繕・金利変動シナリオを重ね、出口戦略まで見通したシミュレーションを行います。最後に、2025年度の税制優遇や環境配慮型ローンを組み合わせることで、手残りを最大化できます。行動に移す前に、この記事のステップを自分の案件に当てはめ、数字が語る現実と向き合ってみてください。
参考文献・出典
- 国土交通省 不動産投資市場動向調査2025年版 – https://www.mlit.go.jp/
- 国土交通省 賃貸住宅市場データ集 – https://www.mlit.go.jp/
- 総務省統計局 人口推計2025年9月速報 – https://www.stat.go.jp/
- 日本銀行 金融政策決定会合資料2025年9月 – https://www.boj.or.jp/
- 建築物維持保全協会 建築物維持保全コスト調査2024 – https://www.abma.or.jp/