不動産投資を始めたばかりの方は、「家賃収入がまだ少ないから確定申告は必要ないのでは」と迷いがちです。しかし、税制上は金額にかかわらず申告義務が生じる場合があります。本記事では、確定申告が必要になる基準から、2025年度の最新ルール、申告手続きの流れまでを網羅的に解説します。読み終わるころには、税務署に行く前に準備すべき書類や節税につながるポイントが明確になるはずです。
確定申告が必要になる基準を正しく知る

まず押さえておきたいのは、所得税法上の「所得」と日常で使う「収入」が異なる点です。不動産所得は収入から経費を差し引いた額で判定され、年間20万円を超えれば会社員でも原則として申告が求められます。一方、副業を認める企業が増えても、税務署の視点は変わりません。
次に、給与所得者であっても複数の給与がある場合や、年収2,000万円超の場合は自動的に確定申告の対象となります。つまり「会社が年末調整をしてくれるから安心」という思い込みは危険です。また、赤字の場合でも申告を行えば翌年以降の所得と損益通算でき、税負担を軽減できます。
国税庁の2024年度統計によると、不動産所得者の約4割が赤字申告をしています。このデータは、経費計上の重要性とともに、赤字でも手続きを怠らない人が増えている事実を示しています。言い換えると、申告するかどうかで将来のキャッシュフローに差がつく可能性が高いのです。
青色申告と白色申告の違いはどこにあるか

ポイントは、控除額と記帳方法の自由度です。青色申告を選ぶと最高65万円(電子申告なら55万円+10万円)の特別控除が受けられるほか、赤字の3年間繰越が可能になります。白色申告は手続きが簡単ですが、控除や特典が限られるため長期投資には不利です。
青色申告を選択するには、原則として開業から2か月以内に「青色申告承認申請書」を税務署へ提出する必要があります。2025年度分からはオンライン提出が標準化され、マイナンバーカードとe-Taxを使えば15分ほどで完了します。また、複式簿記に対応した会計ソフトの普及により、帳簿付けの手間も大幅に減っています。
一方で、簿記が苦手な方や規模が小さい投資家は、まず白色申告で慣れる選択肢もあります。ただし、家賃収入が年間100万円を超える段階で青色申告へ切り替える人が多いのが実情です。それは、控除幅が経費処理と相まって納税額に直接響くからです。
必要経費の考え方と記帳のコツ
実は、経費をどこまで認めるかが節税効果を左右します。固定資産税や管理委託料はもちろん、出張先での物件視察費も業務関連性が明確なら経費化が可能です。ただし、家族旅行と兼ねた場合などは按分が求められるため領収書と行程表を残しましょう。
記帳で重要なのは、支出の発生日と内容を正確に残すことです。例えば2025年4月に大規模修繕を行い、支払いが7月であっても、発生ベースで経費を計上します。この発生主義を守ることで、複数年にわたる減価償却費の計算がブレません。
さらに、毎月末にレシートを集計し、クラウド会計へ入力する習慣を持てば確定申告期に慌てることが減ります。国税庁が提供するAPI連携により、銀行口座やクレジットカードの明細が自動取り込みできるため、手入力は最小限で済みます。つまり、記帳の手間を削減しながら税務リスクも抑えられるのです。
申告手続きの流れと注意点
基本的に、確定申告期間は2026年2月16日から3月16日までです。ただし、e-Taxを利用すれば1月から送信可能であり、還付金も早く受け取れます。早期提出は混雑回避だけでなく、資金繰りにも好影響をもたらします。
申告で用意する主な書類は以下のとおりです。
- 収支内訳書または青色申告決算書
- 源泉徴収票(給与所得者のみ)
- 領収書・契約書類一式
- 金融機関の返済予定表
- マイナンバーカードまたは通知カード
提出後は、入力ミスや添付漏れの通知が税務署からメールで届く場合があります。特に青色申告の65万円控除は、全ての書類を電子提出しないと適用されない点に注意が必要です。また、電子帳簿保存法の改正により、2025年1月以降の電子取引データはダウンロード保存が義務化されました。適切に対応しないと青色控除額が10万円へ減額されるため、保存体制の確認を怠らないようにしましょう。
2025年度の税制トピックと活用できる控除
重要なのは、税制改正の動向を毎年確認する姿勢です。2025年度ではインボイス制度の完全施行が話題ですが、不動産賃貸業は基本的に免税事業者であってもインボイス登録の義務はありません。ただし、課税事業者へ転向すると消費税還付を受けられる可能性があるため、規模拡大を視野に入れる投資家は選択肢として検討すると良いでしょう。
また、住宅取得等資金贈与の特例は2025年12月末まで延長され、最大1,000万円の非課税枠が利用できます。将来的に自宅併用型の賃貸物件を取得する場合、親族からの資金援助を受ける計画も立てやすくなりました。さらに、旧耐震基準の物件を省エネ化リフォームした際に使える「2025年度 既存住宅省エネ改修特別控除」も要チェックです。一定の断熱工事を行った場合、最大25万円の所得控除が認められるため、築古物件戦略をとる投資家には魅力的な制度と言えます。
結論として、税制は毎年少しずつ改正されるため、最新情報を追う姿勢が長期的な手取り額を左右します。税理士との連携や国税庁サイトの定期確認を習慣化し、取りこぼしのない節税を実践しましょう。
まとめ
本記事では「不動産投資 確定申告 必要」の疑問に応えるため、申告義務の基準から青色申告のメリット、手続きの流れ、2025年度の注目控除までを解説しました。家賃収入が少額でも所得が年間20万円を超えれば申告は必要であり、経費計上や特別控除を活用することで税負担を抑えられます。まずは毎月の記帳を徹底し、必要書類を整理する習慣をつけましょう。そして、早めのe-Tax提出で還付時期を前倒しし、次の投資資金へとつなげる行動が大きな差となります。
参考文献・出典
- 国税庁 – https://www.nta.go.jp
- 総務省統計局 – https://www.stat.go.jp
- 財務省「税制改正の概要」 – https://www.mof.go.jp
- 中小企業庁「電子帳簿保存法特設サイト」 – https://www.chusho.meti.go.jp
- 国土交通省「住宅リフォーム支援制度一覧(2025年度)」 – https://www.mlit.go.jp