鉄筋コンクリート造(RC造)のマンション運用に興味はあるものの、「本当に空室になりにくいのか」「融資は通るのか」と不安を抱える方は多いはずです。この記事では、耐久性と収益性を兼ね備えたRC造マンションの特徴から、資金計画、管理方法、そして2025年度の最新税制までを総合的に解説します。読み終えるころには、初心者でも具体的な判断材料を得て、次の行動に踏み出せるようになるでしょう。
RC造が投資家に選ばれる理由

重要なのは、RC造マンションが長期運用に適した「資産性の高いハコ」である点です。国土交通省の耐用年数基準では、RC造の法定耐用年数は47年と木造の2倍以上に設定されています。つまり、減価償却期間が長いため毎年の経費計上額は抑えられ、それが安定したキャッシュフローに直結します。
さらに、RC造は遮音性と耐火性にも優れています。全国賃貸住宅新聞の2025年版入居者アンケートによると、遮音性を重視する借主は67.5%に上り、木造より優れた構造が訴求ポイントになります。加えて、鉄筋コンクリートは地震や火災への強さから保険料が低く設定されやすく、ランニングコストの圧縮にも寄与します。
東京23区の新築マンション平均価格が7,580万円(不動産経済研究所、2025年10月)と過去最高を更新する一方、築20年前後のRC造は相対的に割安感が出ています。耐用年数が残っている中古物件を取得すれば、初期投資を抑えつつも需要の高い立地で運用できるため、利回り向上の余地が大きいといえます。
資金計画と融資を組むときの視点

まず押さえておきたいのは、自己資金と返済比率のバランスです。経験上、物件価格の20〜30%を自己資金として投入すると、金融機関からの評価が上がり金利も交渉しやすくなります。また、RC造は担保価値が高いため、フルローンやオーバーローンを提案されるケースもありますが、長期修繕費を考慮し、返済比率は家賃収入の50%以下に抑えると安心です。
融資商品では、2025年度も住宅金融支援機構の「フラット35投資用」など長期固定型の取り扱いが続いています。変動金利との差は0.5〜0.8%程度ですが、金利上昇リスクをヘッジしたい場合には検討に値します。一方で、都市銀行は借入額1億円超の案件で0.3%台の変動金利を提示する例もあり、複数行を比較することが不可欠です。
シミュレーションを作る際は、空室率10%・家賃下落率1%という楽観的数値だけでなく、空室率20%・金利上昇2%といった厳しい条件も組み込みます。耐えられるキャッシュフローかどうかを確認しておけば、将来的な市場変動にも動じにくい体質を作れるでしょう。
安定運用を支える管理戦略
ポイントは、物件の魅力を保ちつつ支出を最適化するマネジメントです。RC造は大規模修繕の周期が12年ごとが目安とされ、長期的にみると修繕積立金の不足が最も大きなリスクになります。購入時に管理組合の長期修繕計画を確認し、積立金が不足していないかを必ずチェックしましょう。
入居者募集では、ファミリー層とDINKs(共働き二人世帯)をメインターゲットに据えると空室期間が短くなります。総務省住宅・土地統計調査によれば、都心部の単身世帯は今後も増加が見込まれますが、ファミリー層は入居期間が平均6年以上と長めです。家賃を5%下げて滞在期間を2年延ばすほうが、原状回復費と広告費を抑えられるケースも多いのです。
管理会社の選定では、賃料査定の精度と設備トラブルへの即応体制を重視します。特にRC造は配管が壁内に埋設されているため、漏水時の対応が遅れると修繕費が高額化します。24時間駆け付けサービスを標準装備する管理会社を選び、月額管理料は家賃の5%前後に収まれば許容範囲といえるでしょう。
2025年度税制と法改正の影響
実は、税制優遇と法改正を押さえておくとRC造マンション運用の手残りをより高められます。2025年度も固定資産税の「新築住宅軽減措置」は継続中ですが、適用対象は総戸数10戸以上の賃貸住宅に限られ、3年間の税額が半額になります。新築RC造を計画する場合、このメリットを家賃設定に反映させると早期の黒字化が期待できます。
一方で、金融庁は2025年4月に「個人投資家向け不動産ローンの審査指針」を改訂し、ストレスシナリオでDSCR(債務返済比率)1.1倍を下回る案件には引き締めを要請しました。つまり、計画段階から家賃下落や金利上昇を織り込まないと融資が通りにくくなっています。提出する収支表には、保守的な数値を入れておくと審査の通過率が高まるでしょう。
また、制度ではありませんが、東京都では2025年10月からRC造を含む集合住宅に対し、CO₂排出量報告義務の対象が延床面積1,000㎡以上に拡大されています。省エネ設備を導入すると設備投資減税が適用される場合があるため、リノベーション時に高効率給湯器やLED共用灯をセットで導入すると経費と税金を同時に削減できます。
将来価値を高めるリノベーション術
まず、リノベーションは「家賃を上げる投資」ではなく「空室期間を減らす投資」と考えると的確な判断ができます。築20年以上のRC造でも、キッチン交換とアクセントクロスで月額1万円アップを狙うのは現実的ですが、入居までのリードタイム短縮のほうが収益へのインパクトは大きいからです。
内装より先に共有部を整えるのが効果的です。エントランスのダウンライトをLEDに替え、非接触型オートロックを導入すると、入居者の満足度が上がり退去率が下がります。国土交通省「住宅市場動向調査」では、セキュリティを重視する入居者が73%に達しており、内装単体より費用対効果が高いことが裏付けられています。
リノベ資金は、賃貸事業ローンとは別枠で「リフォームローン」を組むと金利が0.5〜1%高くなる傾向です。しかし、修繕費として一括で損金算入できる範囲なら初年度の税負担を抑えられます。大規模工事か資本的支出かの判断は税理士に確認し、節税と資産価値向上を両立させることが肝要です。
まとめ
RC造マンションは耐久性と遮音性の高さによって、長期にわたる安定運用が期待できます。自己資金を厚めに確保し、複数の金融機関を比較することで金利と返済条件を最適化できます。さらに、入居者ターゲットを明確にした管理戦略と、税制・法改正を踏まえたリノベーションを組み合わせれば、キャッシュフローは着実に積み上がります。今できる小さな改善を一つずつ実行し、堅実な資産拡大を目指しましょう。
参考文献・出典
- 国土交通省 住宅局 – https://www.mlit.go.jp
- 不動産経済研究所 – https://www.fudousankeizai.co.jp
- 全国賃貸住宅新聞 入居者ニーズ調査2025 – https://www.zenchin.com
- 総務省 住宅・土地統計調査 – https://www.stat.go.jp
- 金融庁 不動産ローン審査指針 2025改訂版 – https://www.fsa.go.jp