不動産の税金

初心者でもわかるワンルームマンション 確定申告の進め方

ワンルームマンションを購入して家賃収入を得ると、毎年の確定申告が欠かせません。初めての方は「何を経費にできるのか」「どの書類をそろえればいいのか」と悩みが尽きないものです。しかし正しい手順を知れば、税負担を抑えつつ資金計画を整えることができます。本記事では、2025年度の最新ルールに基づき、ワンルームマンション投資家が押さえるべき申告の基本から具体的な作業手順までを丁寧に解説します。読み終えるころには、自信を持って確定申告に取り組めるようになるでしょう。

確定申告が必要な理由

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ポイントは、家賃収入がある時点で「不動産所得」が発生するという事実です。不動産所得は給与所得と合算して所得税を計算するため、申告を怠ると追加徴収や延滞税のリスクが生じます。また、赤字を正しく計上すれば給与所得と相殺できる「損益通算」という節税効果も期待できます。つまり、確定申告はペナルティを避けるだけでなく、キャッシュフローを最適化する前向きな手段なのです。

まず、所得税法では年間20万円超の副収入がある場合に申告義務が生じます。ワンルームマンションの家賃は月7万円としても年額84万円ですから、多くのオーナーが該当します。さらに、東京都23区の平均空室率は2025年時点で約4.6%にとどまり、安定収入になりやすいため、適切な申告がより重要になります。

一方で、赤字になった場合でも申告を行うことで、その損失を翌年以降3年間繰り越せます。この「繰越控除」は青色申告で届出をしておくことが条件です。赤字繰越を活用できるかどうかが、長期運用で大きな差を生みます。

経費として認められる項目

経費として認められる項目のイメージ

実は経費に計上できる範囲を広げることが、手取りを増やす鍵となります。家賃収入から差し引ける主な経費は、管理費、修繕費、減価償却費、ローン利息、火災保険料などです。ただし私的な支出や領収書の無い費用は認められません。ここを曖昧にすると税務調査で否認される可能性があるため、領収書の保存と明細の記載が欠かせません。

減価償却費は建物部分のみが対象で、取得価額から土地評価額を除いた残額を法定耐用年数で割って計算します。例えば築5年の鉄筋コンクリート造マンションを3,000万円で購入し、そのうち建物が1,800万円、残存耐用年数が42年なら、年間約43万円を経費化できます。こうした非現金支出の経費は、キャッシュアウトを伴わず所得を圧縮できる点が大きな魅力です。

さらに、管理会社への手数料や入居募集の広告費も経費になります。2025年度から電子契約が主流になり、データ保存の要件が緩和されました。国税庁のe-Tax保存要件を満たせば紙の領収書をスキャン保管できるため、保管スペースを気にせず証拠資料を残せます。

青色申告と白色申告の違い

まず押さえておきたいのは、青色申告を選択すると最大65万円の特別控除を受けられることです。この控除額は、複式簿記で帳簿をつけて期限内に提出する場合に適用されます。白色申告は手続きが簡単ですが控除がありません。手間と節税効果を比較すると、長期的には青色申告のメリットが大きいと言えます。

青色申告では、家族を従業員として給与を支給できる「青色事業専従者給与」制度も活用できます。たとえば配偶者に年間103万円までの給与を支払えば、その分を経費にできる一方、配偶者は所得税が発生しません。家族で収入を分散することで、世帯全体の手取りが増える仕組みです。

また、30万円未満の資産を一括で経費にできる「少額減価償却資産の特例」は青色申告者限定です。エアコン交換やスマートロック設置など、短期キャッシュアウトを一気に費用化できることで、修繕負担の重い築古物件でも負担を平準化できます。

申告書作成の流れと注意点

基本的には「帳簿作成→書類収集→入力→提出」という順序で進めます。ここでは手続き全体を時系列で整理します。

1. 1月 管理会社や金融機関から年間取引報告書を受け取る 2. 2月上旬 減価償却費を含む帳簿を確定し、e-Taxに入力 3. 2月16日~3月15日 確定申告書Bと青色決算書を提出

入力時の注意点として、固定資産税は「租税公課」、ローン利息は「支払利子」に区分します。科目を誤ると控除漏れにつながります。また、2025年度からマイナンバーカード連携が進み、電子署名だけで添付書類を省略できるケースが増えました。紙提出よりもe-Taxを選ぶことで、還付金の振込も平均約2週間早まります。

一方で、システムエラーや入力ミスに備えてPDF控えを必ず保存してください。過去5年間は税務署から問い合わせが来る可能性があります。電子データだけでなくクラウドと外付け媒体に二重保存すると安心です。

節税を活かす長期的な戦略

重要なのは、確定申告を単年度の作業で終わらせず、将来の資産形成と結びつけることです。家賃収入が増えて税率が上がる前に、法人化や追加購入のタイミングを検討すると効果的です。例えば課税所得が900万円を超えると所得税率は33%に達しますが、資本金1,000万円以下の法人なら実効税率を20%台に抑えられる場合があります。

また、修繕計画を3~5年単位で立て、支出が集中する年に赤字を作って損失繰越を活用する方法もあります。これにより大規模修繕の負担を税金面で平準化できます。さらに、住宅ローン控除が受けられる自宅購入を組み合わせることで、所得控除の重複効果が期待できます。

こうした長期戦略を描く際には、税理士や不動産コンサルタントと定期的に面談し、最新の法改正情報を確認することが欠かせません。2025年度の税制改正大綱は12月に発表されるため、翌年の方針決定は必ず年内に行い、先手を打つ習慣を持ちましょう。

まとめ

ワンルームマンションの確定申告は、ルールを理解すれば難しくありません。青色申告による特別控除や損益通算を活用し、経費の範囲を適切に広げることで、税負担を大きく減らせます。さらに、e-Taxと電子帳簿保存制度を組み合わせれば、作業効率とペーパーレス化が同時に進みます。今後の資産形成を見据え、毎年の申告を通じて数字を把握し、次の投資判断に役立ててください。

参考文献・出典

  • 国税庁 – https://www.nta.go.jp
  • 総務省統計局「家計調査」 – https://www.stat.go.jp
  • 不動産経済研究所 – https://www.fudousankeizai.co.jp
  • 東京都住宅政策本部「住宅市場動向調査」 – https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp
  • 財務省「税制改正の概要(2025年度)」 – https://www.mof.go.jp

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