不動産投資を始めるとき、家賃収入がどの程度残るかだけでなく、税金を抑える方法も大きな関心事になります。特に「一棟アパート 節税」と検索する方は、区分マンションより規模が大きい分、節税メリットも大きいと聞き、具体策を知りたいのではないでしょうか。本記事では減価償却の活用法から2025年度の税制ポイント、資金計画の立て方まで、初心者でも理解しやすく解説します。読後には「節税の仕組みが分かった」「次の行動が決められた」と感じていただけるはずです。
一棟アパート投資で生じる税金の仕組み

重要なのは、家賃収入にかかる「所得税・住民税」と、保有時に課税される「固定資産税」を区別して整理することです。
まず所得税は、家賃収入から必要経費を差し引いた「不動産所得」に課税されます。必要経費には管理委託料や修繕費だけでなく、建物部分の減価償却費も含まれるため、ここが節税の起点になります。一棟アパートの場合、建物価格の割合が大きく、減価償却で引ける金額も膨らみやすい点が特徴です。
一方、固定資産税は評価額に基づいて毎年支払います。建物の評価額は年々下がるため、長期保有では固定資産税が緩やかに減少する傾向があります。しかし、2025年10月時点で全国平均空室率が21.2%(国土交通省)と高止まりしているため、空室が続くと所得税は下がってもキャッシュフローが悪化する恐れがあります。つまり税金だけに注目せず、収益構造全体を把握する視点が欠かせません。
減価償却を活用した節税の具体策

まず押さえておきたいのは、木造アパート(法定耐用年数22年)か鉄骨造・RC造かで減価償却期間が異なる点です。木造は短期で償却できるため、初期数年間の節税効果が大きくなります。
例えば築15年の中古木造アパートを取得した場合、残存耐用年数の計算は「22年-15年=7年」ですが、中古特例により「7年×0.2=1.4年」、最低2年の規定が適用され、実務上は2年間で均等償却できます。2000万円の建物価格なら、年間1000万円を経費計上でき、給与所得と損益通算すれば高い節税効果が見込めます。
しかし、短期で償却が終わるということは、その後は経費が減り課税所得が跳ね上がるリスクを伴います。節税後もキャッシュフローが黒字か、長期シミュレーションを行うことが必須です。また、無理な赤字計上は税務調査の対象になりやすいため、修繕費と資本的支出の区分を正確に行い、レシートや請求書を保管しておくことが望ましいです。
2025年度税制で押さえるポイント
ポイントは、2025年度も継続している「所得税の損益通算制度」と、住宅取得資金贈与の非課税措置の延長です。損益通算では、給与所得と不動産所得の赤字を相殺できますが、2025年度も「土地取得に伴う借入金利子のうち、土地価格相当分は控除対象外」という規定が維持されています。したがって、土地値の高い都心アパートでは節税インパクトが小さくなる点に注意しましょう。
また、建物の省エネ性能を高める改修工事を行うと、固定資産税の減額措置(最大3年間1/3減額)が2025年度も継続します。ただし対象となる工事内容や工事完了期限が自治体ごとに異なるため、着工前に市区町村へ確認する必要があります。期限付き制度なので、活用するなら早めの計画がカギになります。
節税効果を最大化する資金計画
実は、節税を狙って高額なフルローンを組むと、金利負担で手残りが減るケースが少なくありません。金融庁の2025年レポートによると、平均金利は変動0.9%、固定1.5%前後ですが、融資割合が90%を超えると金利上乗せが0.3%程度発生するデータが示されています。
自己資金を2割入れ、返済比率(年間返済額÷年間家賃収入)を40%以下に抑えると、空室率21.2%という全国平均でも黒字を保ちやすいというシミュレーション結果があります。加えて、減価償却で得た節税メリットを繰上返済に充当すれば、元本を圧縮でき、償却終了後の税負担増にも備えられます。
つまり、節税とキャッシュフロー改善を両立させるためには、自己資金割合と返済年数のバランスが鍵となります。複数の金融機関で金利交渉を行い、融資条件を最適化する努力を惜しまないことが長期的なリターンを高めます。
節税だけに頼らない長期戦略
結論として、一棟アパート投資は節税メリットが大きい一方、空室リスクと償却終了後の増税リスクが常につきまといます。長期で安定させるには、節税以外の施策を組み合わせることが不可欠です。
まず、入居率を高めるためにターゲットを明確化し、設備投資を定期的に行います。国土交通省の調査では、Wi-Fi無料化と宅配ボックス設置を同時に行った物件は、未実施物件に比べ空室期間が平均15日短縮するという結果が出ています。空室が減れば、所得税や住民税が増えても手残りが増えるため、節税以上の実利を得られます。
さらに、出口戦略としての売却時期を想定し、譲渡所得税の軽減税率(所有5年超で約20%)を活用する方法もあります。建物が古くなり減価償却が終わるタイミングで売却し、売却益を次の物件の頭金に回すことで、ポートフォリオ全体の税負担を平準化できます。
まとめ
本記事では、一棟アパート投資で節税メリットを享受するための仕組みと、2025年度税制の注意点を解説しました。減価償却を中心とした所得税対策は確かに有効ですが、空室リスクと償却終了後の増税を見据えた資金計画が重要です。まずは自己資金を2割確保し、返済比率を40%以下に抑えたうえで、減価償却による税還付を繰上返済や設備投資に振り向けてください。節税とキャッシュフロー改善を両立させれば、長期にわたって安定した不動産運用が実現できます。
参考文献・出典
- 国土交通省 住宅局「住宅市場動向調査2025」 – https://www.mlit.go.jp
- 国土交通省 住宅統計「2025年10月全国アパート空室率」 – https://www.stat.go.jp
- 国税庁「令和7年度 所得税基本通達」 – https://www.nta.go.jp
- 金融庁「金融レポート2025」 – https://www.fsa.go.jp
- 不動産流通推進センター「賃貸住宅市場データブック2025」 – https://www.retpc.jp