不動産の税金

築浅リスクを見抜く7つの視点――「新しいから安全」と思い込まないために

不動産投資を始めたばかりの方ほど、「築年数が浅ければ空室も少ないはず」と考えがちです。しかし、築浅物件でも思わぬ落とし穴に悩まされ、収益計画が狂うケースは少なくありません。本記事では、築浅 リスクを中心に、投資判断で見落としやすいポイントを具体的なデータと共に解説します。読み終える頃には、表面的な新しさに惑わされず、数字と事実で物件を評価できる力が身につくはずです。

購入価格プレミアムが収益を圧迫する仕組み

購入価格プレミアムが収益を圧迫する仕組みのイメージ

まず押さえておきたいのは、築浅物件の購入価格には「新しさのプレミアム」が上乗せされている点です。国土交通省の不動産価格指数(2025年7月速報)によると、首都圏中古マンションの価格は築10年以内と11年以上で平均15%の差があります。この差額は家賃に転嫁しづらく、利回りを押し下げる要因になります。

実際、東京都内の築5年マンションを5,000万円で購入し、月額家賃を17万円で設定した場合、表面利回りは4.08%です。一方で同エリアの築15年物件を4,200万円で仕入れ、家賃を15万円にすると利回りは4.28%に高まります。つまり、築浅だからといって必ずしも高収益になるわけではなく、価格面で不利になる可能性があるのです。

また、金融機関は築年数よりも収益力を重視する傾向を強めています。2025年度の主要都市銀行の投資用ローン平均金利は1.9%台ですが、返済比率(DSCR)が一定基準を下回ると審査が通りません。高い購入価格がキャッシュフローを圧縮し、融資条件を厳しくする点も覚えておきましょう。

家賃下落スピードは築浅ほど急になりやすい

家賃下落スピードは築浅ほど急になりやすいのイメージ

ポイントは、築浅物件ほど家賃下落の初速が大きい事実です。公益財団法人日本賃貸住宅管理協会の家賃動向調査(2025年版)では、築1〜5年の平均家賃指数を100としたとき、築6〜10年で94、築11〜15年で92となりました。新築・築浅の家賃は初期需要を取り込みやすい半面、築が進むと一気に市場家賃へ収斂する傾向があるのです。

この現象は郊外エリアで顕著です。人口推計(総務省・2025年3月)によれば、都心5区を除いた首都圏郊外では20〜39歳の転入超過数が前年から7%減少しました。若年層の減少は賃貸需要を直接押し下げ、築浅物件でも数年で家賃を下げざるを得ないケースが増えます。家賃下落シナリオを組み込まない収支計画は、資金繰り悪化の原因となるため注意してください。

さらに、築浅物件はライバルも多い点が課題です。同じ築年数帯で設備仕様が似通った物件が大量に供給され、家賃競争が激化する傾向にあります。物件選定では、周辺の供給量と差別化要素を必ず確認し、下落幅を最小化できるか検証する必要があります。

修繕積立金と大規模修繕のタイミング

実は、築浅マンションは修繕積立金がまだ低額に設定されているケースが多く、将来的な負担増が待ち受けています。国土交通省「マンション総合調査(2024年度)」では、築5年未満の平均積立金は月199円/㎡、築15年以上では333円/㎡と約1.7倍に跳ね上がります。ここで重要なのは、購入時点で月々の低コストに安心しないことです。

築12〜15年で行われることが多い外壁や屋上防水の大規模修繕は、専有面積70㎡なら一戸あたり約120万円のコストが目安とされています。この時期に合わせて積立金が改定されると、キャッシュフローが大きく変動します。特に区分所有の場合、賃料の伸びが鈍っているタイミングで負担が増えるため、長期修繕計画の内容と積立金水準を事前に確認すべきです。

一方、築浅アパートの場合も油断は禁物です。木造2階建てであっても、10年目に外壁塗装と屋根塗り替えで約200万円前後かかります。修繕費用は全額オーナー負担となるため、購入直後から修繕積立を始める姿勢が安全です。

減価償却と税メリットの薄さ

重要なのは、築浅物件は減価償却費が少ないため、当初の節税メリットが限定的になる点です。減価償却とは、建物価格を法定耐用年数で按分し、毎年経費計上する仕組みを指します。木造の耐用年数は22年、RC造は47年です。

仮に築3年の木造アパートを建物価格3,000万円で取得した場合、残耐用年数は19年です。定額法で計算すると年額約158万円しか経費化できません。対照的に築22年超の同規模物件を2,200万円で購入し、4年の短期償却(定率法)を選択すると初年度経費は約687万円に上ります。税引き後キャッシュフローが大きく違うことがわかります。

そのため、給与所得が高く節税を狙う投資家にとっては、築浅より築古のほうが有利に働く場合があります。築浅を選ぶなら、長期保有で家賃収入を積み上げる前提の戦略が不可欠です。

売却出口と市場流動性の見極め方

まず押さえておきたいのは、築浅物件を高値で売却するには、次の買い手が「まだ新しい」と感じるタイミングで手放す必要があることです。首都圏中古マンション成約データ(東日本不動産流通機構・2025年上期)を分析すると、築5年以内の平均成約期間は46日ですが、築6〜10年になると65日に延びます。流動性が下がる分だけ値下げ交渉を受け入れやすく、出口戦略に影響します。

さらに、2025年度税制改正で導入された「所有5年超の譲渡益軽減特例」(一定の省エネ改修を伴う場合、長期譲渡税率が最大15%に軽減)は築浅物件にも適用可能ですが、改修要件を満たすための追加コストがかかります。売却時にこの特例を狙う場合、改修費と税負担のバランスをシミュレーションしておくことが大切です。

築浅物件でも、地域の将来人口や再開発計画が明るいエリアであれば、築10年を過ぎても高値が付く可能性があります。逆に需要が伸び悩むエリアでは築浅プレミアムが剝落しやすいため、購入前に出口価格を複数想定しておくことがリスク管理になります。

まとめ

築浅物件は見た目の新しさと低い修繕リスクで安心感がありますが、家賃下落、購入価格プレミアム、減価償却の少なさなど、数字に表れにくい築浅 リスクが潜んでいます。本記事で紹介した価格・家賃・修繕・税制・出口の五つの視点を総合的に検証すれば、表面利回りに惑わされず堅実な投資判断が可能です。物件資料を受け取ったら、必ず長期キャッシュフロー表にリスク要素を織り込み、収益と安全性を可視化する行動から始めましょう。

参考文献・出典

  • 国土交通省 不動産価格指数 2025年7月速報 – https://www.mlit.go.jp/
  • 公益財団法人日本賃貸住宅管理協会 家賃動向調査2025 – https://www.jpm.jp/
  • 総務省統計局 人口移動報告 2025年3月 – https://www.stat.go.jp/
  • 国土交通省 マンション総合調査 2024年度 – https://www.mlit.go.jp/
  • 東日本不動産流通機構 成約価格データ2025上期 – https://www.reins.or.jp/
  • 財務省 2025年度税制改正資料 – https://www.mof.go.jp/

関連記事

TOP