不動産融資

一棟アパート 失敗事例から学ぶ安全投資術

初心者でも魅力的に映る一棟アパート投資ですが、想定外の出費や長期の空室で苦しむ人は少なくありません。実際に私の相談者の中にも、初年度から赤字に転落し物件を手放した方がいます。本記事では「一棟アパート 失敗事例」を具体的に取り上げ、どこで判断を誤ったのかを丁寧に解説します。読後には失敗を未然に防ぐチェックポイントと、2025年度時点で活用できる支援策まで理解できるようになります。

一棟アパート投資が人気なのに失敗が多い理由

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まず押さえておきたいのは、一棟アパート投資が高いレバレッジを効かせやすい一方で、運営の難易度も上がるという事実です。表面利回りの高さに目を奪われ、リスク評価が不十分なまま購入に踏み切る人が後を絶ちません。

金融機関の融資姿勢が緩い時期は自己資金一割未満でも借り入れが可能になります。しかし月々の返済額が高いと、わずかな空室や修繕費の増加でキャッシュフローが急速に悪化します。国土交通省住宅統計によると、2025年10月の全国アパート空室率は21.2%で前年より0.3ポイント改善しましたが、地域格差は依然大きいままです。地方の築古物件では空室率40%を超えるエリアもあるため、平均値だけで楽観視するのは危険です。

加えて、一棟所有は管理会社との連携に失敗すると収益性が大きく揺らぎます。入居者ニーズに合わないリフォームや過剰な広告費を支出すると、家賃収入が増えないまま運営コストが膨らみます。つまり利回りの高さは「適切な運営」という前提条件が満たされて初めて実現するものなのです。

よくある失敗パターンと背景

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ポイントは、失敗の多くが「数字の読み違え」と「ヒトの管理不足」に大別できることです。細部を見ていくと、同じミスが繰り返されている様子が浮かび上がります。

一つ目は収支シミュレーションの想定が甘いケースです。家賃下落率を年1%と仮定したものの、実際には3%下落したため10年後の収入が大幅に減った例があります。長期保有を前提にするなら、家賃と空室率は保守的に見積もる必要があります。

二つ目は修繕積立を十分に確保しなかった例です。築25年の木造アパートを購入した投資家が、外壁と屋根の全面改修に800万円を要し、預貯金が底をついた事例を筆者は目の当たりにしました。空室が続いていたため、その間の家賃収入では改修費を賄えず追加融資も断られ、結果的に売却を余儀なくされました。

三つ目は管理会社の選定を怠った例です。仲介手数料無料をうたう管理会社に任せたものの、入居者対応が遅く1年で4室が退去。口コミ評価を調べず契約した点が致命傷となりました。数字と現場、双方に目を配る体制が欠けていたと言えます。

キャッシュフローを圧迫した実際の失敗事例

実は、筆者の顧客Aさん(都内在住40代)は、愛知県郊外のRC造20戸をフルローンで購入し、初年度から毎月10万円の赤字に陥りました。要因を紐解くと、当初計画で示された家賃が市場相場より1割高く設定されていたことが判明しました。

Aさんは現地を訪れずデータだけで判断し、仲介会社の「名古屋市のベッドタウンで人気」という言葉を鵜呑みにしました。実際は通勤圏と言えども最寄り駅から遠く、駐車場も不足していたため入居付けに苦戦。半年後には6戸が空室となり、家賃を下げてようやく成約できましたが、利回りは予定の8.5%から実質5.2%へ急落しました。

さらに、購入後2年で給水ポンプが故障し120万円の修繕費を追加負担しました。ここでも修繕積立はわずか30万円しか用意しておらず、カードローンで一時的に穴埋めする羽目になりました。フルローンは自己資金が温存できるメリットがありますが、想定外の支出が発生した瞬間に負担が雪だるま式に膨らむ危険があります。

この「一棟アパート 失敗事例」から分かるのは、現地調査の不足と修繕費の盲点が組み合わさると、表面的な利回りは簡単に崩れ去るという点です。数字の裏付けを持たずにレバレッジを高める行為は、投資ではなく投機に近づいてしまいます。

空室リスクを抑えるための具体策

重要なのは、空室率を下げる行動を購入前から組み込んでおくことです。立地や物件の特徴を改善できなくても、運営面で差別化する余地は多く存在します。

まずリーシング(入居付け)を強化するため、複数の仲介会社と媒介契約を結びます。専任よりも一般媒介にすることで物件情報の露出が増え、問い合わせ数が平均で1.4倍に伸びたデータもあります。オーナー側が広告料(AD)の上限を初月家賃の1カ月分と設定し、空室期間を短縮した事例は枚挙にいとまがありません。

次に、ターゲット層を明確にした小規模リノベーションが有効です。例えば、単身者向けワンルームに宅配ボックスとWi-Fiを設置するだけで、成約スピードが約30%向上したと東京都心の管理会社は報告しています。設備投資は1戸あたり10万円前後で済むため、家賃を維持できれば1年半ほどで回収できます。

さらに、賃貸借契約において更新料や違約金の条項を見直し、長期入居を促すインセンティブを設けることも効果的です。例えば、2年以上の入居で家賃を月額1000円減額するプランは、実際に退去率を2割下げた実績があります。運営面の工夫でリスクをマイルドにできる点は、一棟アパートならではの強みです。

2025年度に使える支援制度と資金繰りの改善策

まず押さえておきたいのは、2025年度も継続される「住宅省エネ改修補助金」です。賃貸住宅が一定の断熱性能を満たす改修を行う場合、戸当たり最大60万円が補助されます。対象工事には窓の複層ガラス化や高効率エアコンの導入が含まれ、空室対策と光熱費削減を同時に狙える点が魅力です。

また、中小企業庁が所管する「先進的省エネ投資促進事業」では、集合住宅の共用部LED化に対し補助率1/3が適用されます。申請は管理会社でも可能なため、オーナーが書類負担を抱え込まずに済むメリットがあります。期限は2026年2月末の交付決定分までです。

資金繰り面では、日本政策金融公庫の「賃貸住宅設備更新資金」が注目されます。2025年度の融資上限は7200万円で、金利は固定1.2%程度に抑えられています。民間金融機関より低利であるうえ、返済期間も20年と長いため、キャッシュフローの圧迫を避けながら設備更新を進められます。

上記の補助金や低利融資を活用すると、自己資金を温存しつつ物件価値を高めることが可能です。空室率の高いエリアほど「付加価値の見える化」が必須となるため、2025年以降も制度情報を定期的にチェックし、長期計画に組み込む姿勢が欠かせません。

まとめ

本記事では「一棟アパート 失敗事例」を通じて、過度なレバレッジと情報不足が大きな損失につながる過程を見てきました。重要なのは、購入前の現地調査と保守的なシミュレーション、そして管理会社と二人三脚で進める運営体制です。さらに、2025年度に有効な補助金や公的融資を賢く使えば、資金負担を抑えながら物件の競争力を高められます。失敗例を他山の石として学び、空室率21.2%の時代でも堅実にキャッシュフローを積み上げる投資家を目指しましょう。

参考文献・出典

  • 国土交通省住宅局 住宅統計調査報告書(2025年10月版) – https://www.mlit.go.jp
  • 中小企業庁 先進的省エネ投資促進事業 事業概要 – https://www.chusho.meti.go.jp
  • 環境省 住宅省エネ改修補助金 2025年度要綱 – https://www.env.go.jp
  • 日本政策金融公庫 賃貸住宅設備更新資金 融資条件 – https://www.jfc.go.jp
  • 東京都空室対策モデル事業 成果報告書(2024年度) – https://www.metro.tokyo.lg.jp

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