不動産の税金

築浅 確定申告の基礎と節税ガイド

築浅の賃貸マンションを購入したものの、初めての確定申告で何をどう計算すれば良いのか分からず不安に感じていませんか。実は築浅物件ならではの減価償却や住宅ローン控除を正しく理解すると、手元に残るキャッシュが大きく変わります。本記事では2025年12月時点で有効な制度だけを取り上げ、初心者でも失敗しない申告手順と節税のポイントを順を追って解説します。読み終えたころには、必要書類の整理からe-Tax送信まで自信を持って進められるはずです。

築浅物件がもたらす税務上の特徴

築浅物件がもたらす税務上の特徴のイメージ

まず押さえておきたいのは、築浅物件が税務上「新築」と同等に扱われる場面が多い点です。取得した年度に大きな経費計上ができるため、申告のインパクトが大きくなります。

築後5年以内のRC造マンションは耐用年数47年のほぼ全期間を残しています。そのため減価償却費を長く計上でき、毎年の所得税と住民税を安定して圧縮できます。一方で築古物件のように数年で大きな償却を取り切る戦略は取れません。つまり長期で計画を立てる姿勢が欠かせません。

国税庁の令和5年統計によれば、個人の不動産所得を申告する人の約3割が築10年未満の物件を保有しています。初心者が多いこの層では、管理費や修繕積立金を経費計上し忘れるケースが散見されます。築浅だから修繕が少ないとはいえ、共用部分の積立金は実際に支出しているため当然経費になります。領収書の保存を怠らないことが大切です。

さらに築浅物件は家賃も高めに設定できるため、表面利回りだけを見ると十分な黒字が出ます。しかし所得税率が高い給与所得者が副業として保有した場合、税負担で手残りが減るリスクがあります。減価償却や各種控除を活用し、税引き後キャッシュフローまで必ずシミュレーションしておきましょう。

減価償却の計算方法と耐用年数

減価償却の計算方法と耐用年数のイメージ

重要なのは、築浅でも取得後の耐用年数は「残存耐用年数」を使うのではなく、法定耐用年数の残りを按分する点です。計算方法を誤ると追徴課税の原因になります。

RC造は法定耐用年数47年、木造は22年と定められています。築3年のRCマンションを購入した場合、残り44年を使って定額法で償却します。購入価格から土地値を差し引き、建物価格を44年で割るイメージです。毎年の償却費はほぼ一定になるため、長期で安定した節税効果が見込めます。

建物価格の按分比率は国税庁の「財産評価基本通達」にある建物比率を参考にしつつ、実際の売買契約書で合理的に示す必要があります。近年は土地20%・建物80%など極端な比率が否認される事例が増えています。税務署から質問状が届くと対応に時間を取られるため、市場価格から乖離しない設定が安全です。

2025年度の所得税法改正では、個人が取得した中古物件の償却方法に変更はなく、定額法一択のままです。したがって法人の定率法のように初期費用を大きく計上することはできません。それでも給与所得との損益通算ができる点は大きな魅力です。実際にシミュレーションソフトに入力し、税引き後利回りを確認しておけば安心できます。

必要経費と修繕費の判断基準

実は築浅物件でも意外と漏れがちなのが経費判定です。特に修繕関連は資本的支出との区別がポイントになります。

国税庁のガイドラインでは、一回の修繕費が20万円未満、または耐用年数を延ばさない軽微な工事は修繕費として全額当期経費にできます。例えばクロスの貼り替えやハウスクリーニングが典型例です。築浅では入居者入れ替えが少ないものの、退去時に発生するリフォーム費を忘れず申告しましょう。

一方、エアコンの一括交換やフローリングの全面張り替えなど、価値を大きく高める工事は資本的支出に分類されます。築浅ゆえに初期設備はまだ新しいため、多額の資本的支出が発生しにくいのがメリットです。しかし将来必要になる大型修繕を想定し、修繕積立金を別口座で管理しておくと資金繰りが楽になります。

また管理会社に支払う広告料や入居者募集の仲介手数料も経費計上できます。都心の築浅ワンルームなら家賃の1ヶ月分が標準的ですが、募集競争が激しいエリアでは2ヶ月分になることもあります。申告ソフトで科目を「支払手数料」に分類し、領収書をPDFで保存しておくと電子帳簿保存法にも対応できます。

2025年度の住宅ローン控除とエコ基準

ポイントは、築浅でも自宅用途なら住宅ローン控除が利用できる点です。投資用との併用はできないため、用途によって手続きが異なります。

2025年度も住宅ローン控除は、省エネ基準を満たす新築・築後2年以内の住宅で13年間適用されます。控除率は年末残高の0.7%、控除限度額は4,000万円です。築浅の区分マンションを自宅として買い、その後賃貸に転用する場合、転用した翌年から控除は受けられなくなるため注意が必要です。

投資用ローンで取得した築浅物件の場合、ローン金利は経費として全額計上します。フラット35など居住用ローンを流用すると、金利差で得をしても契約違反となり、一括返済を求められるリスクがあります。金融機関は定期的に物件調査を行うため、用途変更は必ず事前に相談しましょう。

また2025年度から、省エネ性能の高い賃貸住宅に対して固定資産税を最大3年間1/2に軽減する自治体が増えています。東京都豊島区などはZEH基準を満たす集合住宅が対象です。適用には完了検査証やBELS評価書の提出が必須なので、建築確認の段階で仕様を決めておくとスムーズです。

e-Taxでの申告手順と注意点

基本的に、不動産所得の確定申告はe-Taxを使うと控除証明書の提出がオンラインで完結します。提出漏れを防ぎ、還付も早く受け取れます。

まずマイナンバーカードを用意し、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」にアクセスします。賃貸収入と経費を入力すると、自動で貸借対照表と損益計算書が作成されます。減価償却費は前年のデータを引き継げるので、2年目以降は作業時間が大幅に短縮されます。

添付書類として、売買契約書のコピーやローン残高証明書が必要です。e-TaxではPDF化した書類をアップロードしますが、ファイル名に内容と年度を明記すると後から探しやすくなります。電子帳簿保存法に対応するクラウド会計ソフトを併用すれば、領収書もスキャナで取り込み、保存義務を満たせます。

最後に送信後の受信通知を必ず保存し、控えとしてプリントアウトかPDFで保管してください。税務調査は通常5年間さかのぼるため、データと原本の両方を整えておくと安心です。またe-Taxのメッセージボックスに届く問い合わせには期限が設定されていることがあるため、確定申告時期は週に一度はログインする習慣をつけましょう。

まとめ

築浅 確定申告では、長期の減価償却と安定収益を見込める一方で、経費漏れや按分比率の誤りが大きなリスクになります。本記事で紹介した耐用年数の考え方、修繕費の判断、住宅ローン控除の条件、そしてe-Taxの活用法を押さえれば、税負担を抑えながらキャッシュフローを最大化できます。来年の申告に向け、今日から領収書の整理とシミュレーション作成を始めてみましょう。

参考文献・出典

  • 国税庁 – https://www.nta.go.jp
  • 総務省統計局 – https://www.stat.go.jp
  • 国土交通省 住宅局 – https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku
  • 東京都 豊島区役所 – https://www.city.toshima.lg.jp
  • e-Tax 国税電子申告・納税システム – https://www.e-tax.nta.go.jp

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