築30年以上の中古物件に興味はあるものの、老朽化や空室といったリスクが頭をよぎり、一歩踏み出せない人は多いものです。しかし、適切な見極めと計画さえあれば、初期投資を抑えつつ安定収益を狙える点が築古物件の大きな魅力です。本記事では、代表的なリスクの正体から最新の融資事情、そして価値を高める改修戦略までを網羅的に解説します。読み進めることで、不安を判断材料に変え、築30年以上でも勝てる投資モデルを描けるようになります。
築30年以上物件に潜む代表的なリスク

まず押さえておきたいのは、築30年以上 リスクの中核となる建物劣化と設備老朽化です。ここを正しく把握しないと、後の収支計画が大きく狂います。
国土交通省「住宅市場動向調査2024年版」によると、築30年以上の賃貸住宅で最も多いトラブルは給排水管の漏水と外壁のひび割れでした。築年が進むにつれ、構造部材よりも設備系の故障が収益を圧迫する割合が増える傾向にあります。つまり、見た目より内部インフラの健全性こそが長期収益のカギを握ります。
一方で耐震性能も無視できません。1981年の新耐震基準以前に建てられた物件は、現行基準を満たしていない可能性が高いです。自治体によっては耐震診断や補強に対する補助金が用意されており、2025年度も東京都では最大250万円の助成が継続しています。補助対象になるかどうかを事前に確認し、改修コストを正確に計上することが重要です。
設備更新の費用は築20年から30年で一段跳ね上がります。日本賃貸住宅管理協会の2025年調査では、築30年以上の平均年間修繕費が戸当たり約27万円と、築20年台の1.5倍でした。予備費を十分積み立てられないと、突発修繕がキャッシュフローを直撃するため要注意です。
最後に空室リスクです。総務省「住宅・土地統計調査2023」では、築30年以上の空室率は全国平均で24.7%と、築10年未満の約2倍でした。ただし都市中心部に立地が良い物件は、この差が10ポイント未満に縮まるデータもあります。立地とターゲット選定でリスクを軽減できる点を覚えておきましょう。
法定耐用年数と金融機関の融資姿勢

ポイントは、税務上の法定耐用年数と実際の使用可能年数を切り分けて考えることです。ここを混同すると、融資期間が想定より短くなり、月々の返済が重くのしかかります。
木造住宅の法定耐用年数は22年、RC造(鉄筋コンクリート造)は47年です。築30年以上 リスクが注目されるのは、この数字を超えた途端に金融機関の融資期間が大幅に縮むからです。例えば築35年の木造アパートでは、法定耐用年数超過後の残存耐用年数が原則0年とみなされ、最長でも10年程度の短期融資となるケースが多いです。
ただし実務では、耐震診断済みやフルリノベーション済みなど、建物の実質寿命を延ばすエビデンスを提示すれば、20年まで融資期間を伸ばせる金融機関も存在します。2025年時点で、地方銀行や信用金庫がこの柔軟なスタンスを取る例が増えています。実際、筆者の顧客でも築38年のRCマンションに対し、残存25年の評価で融資を得られた事例があります。
金利水準にも注目です。メガバンクは築古物件を敬遠しがちですが、ノンバンクやクラウドレンディングは1.5〜2.5%程度で資金を出す動きが続いています。返済比率を35%以内に抑えるシミュレーションを作成し、複数行へ持ち込むことが成功の近道です。
さらに、2025年度も引き続き「賃貸住宅エコリフォーム融資制度」が活用できます。省エネ改修を行うことで、通常金利から0.3%前後の優遇を受けられるため、金利と耐用年数の両面でメリットを得られる点は見逃せません。
入居者ニーズと賃料下落への向き合い方
実は、築年数そのものよりも入居者が求める機能を満たしているかどうかが、賃料維持に直結します。築30年以上 リスクを正しく測るには、周辺相場と比較した「価値のズレ」を定量化することが肝要です。
賃料下落の主因は設備の陳腐化です。日本レジデンシャル総合研究所の2025年レポートでは、インターネット無料、宅配ボックス、独立洗面台の有無で月額賃料に最大1.2万円の差が生じると明らかになりました。築古物件でもこれらを後付けできれば、賃料下落を年1%以下に抑えられるケースが多いです。
一方で間取りの古さは改修コストが大きくなりがちです。ファミリー向け3DKを2LDKへ転換する場合、平均300万円前後を要しますが、工事後の稼働率が95%を超えるデータもあります。費用回収までの期間を8年以内に設定できるかが判断ラインになるでしょう。
ターゲット設定の見直しも効果的です。高齢者や外国人労働者など、中心部で住居を探すが築年より家賃重視の層が増えています。行政の生活支援制度を理解し、入居審査の柔軟さや多言語対応を整えることで、空室期間を半減できた事例も確認されています。
最後に、賃料下落を防ぐには市場調査の頻度がカギです。半年ごとにポータルサイトと管理会社のデータを照合し、1%でも下落傾向が見えたら改修やキャンペーンを即断する姿勢が重要です。小さな手当てを積み重ねることで、大きな家賃修正を避けられます。
修繕計画とキャッシュフローの守り方
重要なのは、長期修繕計画と資金積立の二本柱でキャッシュフローを守ることです。突発修繕が起きても慌てない仕組みが、築30年以上 リスクを利益に変える土台になります。
まず長期修繕計画ですが、管理会社から受け取る10年表だけでは不十分です。外壁、屋上防水、給排水管更新といった大規模工事は20〜25年周期で訪れるため、最低でも25年間の費用曲線を描きましょう。例えば屋上防水700万円、外壁塗装400万円など具体的に積み上げることで、年平均支出を平準化できます。
次に積立方法です。修繕準備金として年間家賃収入の8〜10%を別口座にプールするのが一般的ですが、築30年以上なら12%を目安にすると安心です。三井住友信託銀行のシミュレーションでは、この比率で積み立てれば、想定外の大型修繕が発生しても資金ショート確率を5%以下に抑えられるとされています。
また、2025年度の「長期優良住宅化リフォーム推進事業」は戸当たり最大200万円の補助を継続しています。省エネおよび劣化対策を同時に実施することで補助率が高まり、自己負担を削減できます。補助金申請は工事前が条件なので、計画段階で工務店と連携することが欠かせません。
金利上昇リスクへの備えも忘れないでください。変動金利で借り入れている場合、将来1%上昇しても返済比率が40%を超えないよう、毎年ローン残高と家賃収入の関係をチェックします。余剰資金を繰り上げ返済に充てるか、修繕準備金を厚くするかを状況に応じて選択する柔軟性が求められます。
築古物件を魅力に変えるバリューアップ戦略
まず言い換えると、築30年以上 リスクを価値へ転換するには差別化と収益多角化が鍵です。単なる改装ではなく、地域特性を活かした付加価値を創出しましょう。
差別化の代表例がデザインリノベーションです。内装に無垢フローリングや間接照明を取り入れ、「映える」空間を演出することで若年層を取り込めます。クラシコ株式会社の2025年事例では、改装費250万円で賃料を月3万円アップし、投資回収を3年で達成しています。
次に収益多角化です。コインランドリーやレンタル倉庫を併設し、家賃以外の売上を確保する手法が注目されています。総務省の家計調査では単身世帯の洗濯機所有率が低下傾向にあり、都市部ではランドリー併設物件の稼働率が96%に達しました。共用部を収益化すれば、空室が出ても固定費を補えるメリットがあります。
テクノロジー活用も進んでいます。IoT鍵やスマートメーターを導入すると、管理コストを年5万円程度削減でき、人件費高騰リスクを抑制できます。2025年は初期導入補助として経済産業省の「スマートライフ支援事業」が継続中で、設備費の1/3を負担してくれます。
最後に出口戦略です。再開発予定区域やインフラ整備計画があるエリアでは、築古物件でも将来の用地取得需要が高まります。都市計画決定の情報を追い、3〜5年先に売却益を狙うシナリオを持つことで、リスクを限定的にできます。
まとめ
築30年以上 リスクは、建物劣化、融資期間短縮、賃料下落の三つに集約できます。これらを長期修繕計画と適切な資金調達、そして入居者ニーズに沿った改修でコントロールすれば、初期利回りの高さを享受しながら安定経営が可能です。まずは物件の健康診断を実施し、補助金や金利優遇をフル活用する計画書を作成してみてください。行動に移すことで、築古物件はリスクではなくチャンスへと姿を変えるはずです。
参考文献・出典
- 国土交通省 住宅市場動向調査2024年版 – https://www.mlit.go.jp
- 総務省 住宅・土地統計調査2023 – https://www.stat.go.jp
- 日本賃貸住宅管理協会 修繕費実態調査2025 – https://www.jpm.jp
- 日本レジデンシャル総合研究所 レポート2025 – https://www.jrri.or.jp
- 三井住友信託銀行 不動産投資シミュレーション資料2025 – https://www.smtb.jp