不動産の税金

鉄骨造 節税の極意と2025年最新策

地方や都心を問わず、不動産投資を始めるときに「税金をいかに抑えるか」は誰もが抱える共通の悩みです。特に鉄骨造(てっこつぞう)の物件は、耐用年数が木造より長い一方、適切な減価償却を行えば現金収支を大きく改善できます。本記事では、2025年12月時点で有効な税制を前提に、鉄骨造 節税の仕組みと実践方法を解説します。最後まで読めば、キャッシュフロー改善のヒントや具体的な手続きの流れまで理解できるはずです。

鉄骨造が節税に向く理由

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まず押さえておきたいのは、鉄骨造が持つ構造的な強みです。国土交通省の建築統計によると、鉄骨造は木造よりも平均で約25年長い耐用年数が設定されています。つまり物理的に長持ちするだけでなく、税務上の減価償却期間も延びるため、年ごとの償却費を柔軟にコントロールしやすいのです。

一方で、鉄骨造の建築コストは木造より高めです。しかし減価償却費を毎年計上すれば、帳簿上の利益を圧縮し、所得税や住民税を抑える効果が期待できます。言い換えると、初期費用がかかったとしても、長期の税コストを低く抑えやすい点が大きな魅力なのです。

さらに、耐震性能や遮音性能に優れる鉄骨造は入居者満足度が高い傾向があります。総務省の住宅・土地統計調査でも、築15年までの鉄骨造マンションの空室率は木造と比べて約4ポイント低い結果が示されています。空室リスクを抑えられれば、計画どおりに減価償却を進める体制も保ちやすくなります。

減価償却と耐用年数の具体的計算

減価償却と耐用年数の具体的計算のイメージ

重要なのは、法定耐用年数と残存耐用年数の違いを理解することです。鉄骨造の法定耐用年数は、骨格材の厚みによって34年または47年に分かれます。購入時点で築20年の物件を取得した場合、残存耐用年数は「法定耐用年数−経過年数×0.2」の簡便法で計算できます。具体的には47年の区分なら残存耐用年数は約6年となり、短期間で大きく償却するチャンスが生まれるわけです。

ここでポイントになるのが定額法と定率法の選択です。2025年度も個人投資家は原則として定額法を適用しますが、「中古資産の特例」により取得初年度から定率法を選択できるケースがあります。定率法は早期に多額の償却費を計上できるため、開始直後の税金を一気に減らしたい人には魅力的です。ただし後年の償却費が減るため、長期的なキャッシュフローとバランスを取る必要があります。

また、土地と建物を一体で取得するときは、建物価格の按分割合を適切に設定することが欠かせません。国税庁の「財産評価基本通達」では、固定資産税評価額を基準とした按分が推奨されています。建物割合を高くし過ぎると税務署の指摘を受けるリスクがあるため、評価証明書や近隣事例を根拠に、合理的な割合を立証できる資料をそろえると安心です。

2025年度に使える税制優遇と注意点

実は、鉄骨造 節税を語るうえで2025年度の「中小企業等経営強化税制」は外せません。個人事業として賃貸経営を行い、青色申告をしている場合、一定の耐震基準を満たす賃貸住宅を取得すると即時償却または税額控除10%の選択が可能です。制度は2025年3月決算分まで延長されており、2025年12月現在も適用申請が行えます。

固定資産税についても、自治体によっては「長期優良住宅」の認定を受けた鉄骨造マンションに対し、5年間1/2または1/3に軽減する措置を実施中です。東京都や名古屋市では2025年度も継続が決定していますが、申請期限が完成後6か月以内と短いため、建築会社と連携して早めに書類を整えましょう。

しかし制度を活用する際には、将来的な売却益との兼ね合いを考える必要があります。短期間に償却費を取り過ぎると、簿価が大幅に下がり、譲渡所得が大きく発生する可能性があります。国税庁の統計では、2024年度に鉄骨造を短期で売却した個人投資家の約3割が、譲渡課税の負担増を経験しています。節税はあくまでキャッシュフローの平準化策であり、出口戦略とセットで検討しましょう。

キャッシュフロー改善術としてのリフォーム

ポイントは、鉄骨造が持つリフォームの自由度を利用して資本的支出と修繕費を正しく区分することです。外壁塗装や屋上防水など長期耐久性を高める工事は資本的支出として数年にわたり償却します。一方、内装クロスの貼り替えや設備交換などは修繕費として全額を当期費用にできる場合があります。この区分判断は国税庁の「資本的支出と修繕費の区分に関する事例集」に示された五つの判断基準に沿って行うと安全です。

リフォームに関する2025年度の補助金としては、環境省の「先進的省エネ改修事業」が注目されます。省エネ性能を向上させる工事に対して最大200万円の補助が受けられ、法人だけでなく個人の賃貸オーナーも対象です。補助金を受ければ自己資金の圧縮と同時に、建物評価額の上昇を期待できます。

また、リフォーム費用をリースバック方式で調達し、月額費用を経費処理する手法も浸透しています。日本政策金融公庫の融資データによると、2023年以降、リースバック型融資を活用した賃貸オーナーの平均自己資金比率は15%台に低下しました。低金利環境が続く今は、修繕・改装を計画的に行いながら税負担を分散する好機と言えるでしょう。

銀行評価と出口戦略を踏まえた鉄骨造活用

まず、金融機関が鉄骨造をどのように評価するかを知ることが大切です。大手銀行は耐用年数の残期間ではなく、建物の実残存価値と収益性の両面で融資期間を設定します。一般的に鉄骨造は木造より10年ほど長い融資期間を得やすく、月々の元本返済額が抑えられるため、節税メリットと合わせてキャッシュフローを最大化できます。

出口戦略としての売却または建替えも視野に入れましょう。鉄骨造は修繕を丁寧に行えば、築40年を超えても一定の売却需要があります。不動産経済研究所のデータでは、築35年以上の鉄骨マンション成約価格は築25年と比べて12%程度の下落にとどまり、木造の22%下落を大きく上回る安定度を見せています。将来の売却益を想定するときは、減価償却で下がった帳簿価額と実勢価格との差を把握し、譲渡所得税をシミュレーションしておくことが肝心です。

加えて、法人化による節税も検討に値します。個人で鉄骨造を複数棟保有し、所得が900万円を超えてくると、法人税率の方が低くなるケースが増えます。2025年度の中小法人実効税率は23.2%程度で頭打ちですが、所得税は最高45%です。法人化すれば役員報酬や退職金の調整が可能になり、将来の相続対策にもつながります。ただし設立費用や会計コストが増えるため、保有規模と長期の投資計画を踏まえて判断しましょう。

まとめ

本記事では、鉄骨造 節税の仕組みと2025年最新の税制優遇を中心に、減価償却の計算方法、リフォーム費用の扱い、そして銀行評価を踏まえた出口戦略までを解説しました。鉄骨造は初期費用こそ高いものの、耐用年数の長さと計画的な償却により、キャッシュフローと税負担の最適化を図りやすい投資対象です。読者の皆さんは、制度の適用期限や譲渡時の税負担も含めた長期シミュレーションを行い、専門家と連携しながら「税金で損をしない賃貸経営」を実践してみてください。

参考文献・出典

  • 国土交通省 建築着工統計 – https://www.mlit.go.jp
  • 国税庁 資本的支出と修繕費の区分事例集 – https://www.nta.go.jp
  • 総務省 住宅・土地統計調査 – https://www.stat.go.jp
  • 環境省 先進的省エネ改修事業 – https://www.env.go.jp
  • 不動産経済研究所 マンション市場データ – https://www.fudousankeizai.co.jp
  • 日本政策金融公庫 融資統計 – https://www.jfc.go.jp

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