不動産の税金

RC造法人化で資産を守る不動産投資術

不動産投資を始めたいものの、「木造より高いRC造(鉄筋コンクリート造)を選ぶ価値はあるのか」「個人と法人、どちらで購入すべきか」といった悩みを抱える方は少なくありません。実は、RC造と法人化を組み合わせることで、長期安定収益と税務面の両方をバランス良く狙う戦略が見えてきます。本記事では、RC造が支持される理由から法人化の仕組み、2025年度の最新税制・融資動向までを体系的に解説します。読み終える頃には、初めての一棟購入でも自信を持って判断できる基準が手に入るでしょう。 

RC造が投資家に選ばれる理由

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まず押さえておきたいのは、RC造が木造やS造(鉄骨造)と比べて持つ優位性です。国土交通省の建築着工統計によると、2024年度の賃貸マンション着工戸数の約38%がRC造でした。この割合は10年前と比べて微増しており、耐久性と資産価値の高さが評価され続けていることが分かります。

耐用年数が長い点は、収益計画にも直結します。税法上の法定耐用年数はRC造が47年、木造は22年です。つまり減価償却期間が長く、帳簿上の価値が急落しにくいだけでなく、金融機関の評価が下がりにくいという利点もあります。また、RC造は気密性が高く遮音性にも優れるため、都心のファミリー向け物件で入居者満足度が上がりやすい傾向があります。空室率が平均で1〜2ポイント低いという公庫調査もあり、キャッシュフローの安定度を底上げしてくれるのです。

一方で、建築コストは木造の1.5〜2倍ほどかかります。初期費用が膨らむ点が最大のハードルですが、長期で見れば修繕周期が延びるため、実質的な年間支出は必ずしも割高になりません。こうした特徴を踏まえると、RC造は長期保有を前提とする投資家にとって有力な選択肢と言えるでしょう。 

法人化の基本とメリット

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ポイントは、不動産所得が一定規模を超えた段階で法人化を検討すると節税余地が広がることです。国税庁の法人税申告事績によれば、資本金1億円以下の中小法人の実効税率は約23.2%(住民税含む)で、累進課税の個人最高税率55%より大幅に低い水準です。

法人を設立すると、給与所得控除を活用した役員報酬の分散、家族を役員にすることでの所得分割、退職金積立など多角的な節税策が使えます。さらに、法人は損失を10年間繰り越せるため、大規模修繕を行った年でも赤字を翌期以降に充当できるメリットがあります。金融機関との取引でも、法人名義の方が融資枠を拡大しやすい事例が多く、2025年時点で地銀や信用金庫の一部は、法人向けの最長35年ローンを商品化しています。

ただし、法人を維持するには登記費用や毎期の決算申告費用が発生します。目安として、年間家賃収入が1,000万円を超え、所得税率が23%を見込み始めるレベルが法人化の検討ラインとなります。つまり、RC造一棟を購入し家賃収入が安定したタイミングで、法人設立に踏み切るのが王道といえるでしょう。 

RC造と法人化を組み合わせる戦略

重要なのは、建物の耐用年数と法人の節税スキームをリンクさせることです。RC造の47年という長い減価償却期間を法人でフルに使うと、毎年一定額の経費を計上でき、所得を平準化しながら内部留保を増やせます。たとえば、土地建物合計2億円のRC造を購入し、建物比率を6割に設定すれば1億2,000万円が償却対象です。定額法なら年間約255万円が経費化でき、役員報酬と合わせて法人税の課税所得をコントロールしやすくなります。

また、法人化すれば減価償却費で作ったキャッシュを次の物件取得資金に回しやすくなります。金融機関の自己資金審査では、役員借入金という形で法人に資金を戻し、実質的な返済余力を可視化できるからです。一方で、個人所有のRC造を法人へ後から移す場合、登録免許税や不動産取得税が課税されます。最初から法人名義で取得するか、事業規模が拡大する直前で資産管理会社を設立するか、タイミングの見極めが肝心です。

言い換えると、RC造の高い耐久性と法人の税務メリットは、長期的な資産形成を目指す人にとって補完関係を持ちます。購入前の段階で決算シミュレーションを行い、20年先のキャッシュフローまで俯瞰した上で投資判断を下すことが成功への近道です。 

2025年度の税制・融資動向

実は、2025年度税制改正大綱では中小法人の所得800万円以下の軽減税率15%が継続される方針が示されています。この枠を活用すれば、RC造の家賃収入が年間1,500万円でも、経費計上後の課税所得を抑えることで軽減税率を享受できます。また、個人の不動産所得に対する青色申告特別控除65万円も継続しており、個人と法人を併用する「二刀流戦略」も有効です。

融資面では、金融庁の監督指針改訂により、2024年から実施されている「キャッシュフロー重視型審査」が定着しました。これに伴い、RC造のように修繕周期が長く空室リスクが低い物件は、自己資金10〜15%でも35年ローンが組める例が増えています。日本政策金融公庫では2025年度もアパート・マンション経営向け融資の上限が7億2,000万円に据え置かれており、法人での長期借入を計画しやすい環境が続く見込みです。

一方で、金融機関は金利リスクにも敏感です。長期プライムレートは2024年末から0.25%上昇し、固定金利はじわりと上昇傾向にあります。資金計画を立てる際は、金利2%上昇シナリオでも返済比率が40%を超えないか確認する慎重さが求められます。 

成功事例に学ぶリスク管理

まず取り上げたいのは、東京都23区で築25年のRC造を法人名義で取得したA社のケースです。購入価格は1億8,000万円、自己資金は3,000万円、金利1.4%・期間30年の融資を受けました。A社は減価償却と役員報酬を組み合わせ、初年度の法人税をゼロに抑え、浮いたキャッシュを修繕積立に回しています。これにより、10年後の大規模修繕の支払い原資を確保しながら、家賃下落に備えた内部留保も着実に積み上げています。

対照的に、法人化を見送って個人でRC造を購入したBさんは、所得税率45%に達したことで手残りが想定より減り、追加投資のペースが鈍化しました。結局、法人設立に踏み切ったのは購入から4年後で、その際に不動産取得税と登録免許税で約300万円のコストが発生しています。両者を比較すると、最初から法人スキームを設計しておくことの重要性が浮き彫りになります。

リスク管理では火災保険の長期契約や、賃貸管理会社との業務委託契約を複数年で締結することで、収支変動を小さくする手法も有効です。また、2025年度から導入された省エネ性能表示制度に合わせ、共用部LED化や断熱改修を行えば、入居率向上と光熱費削減を同時に達成できます。つまり、法人化とRC造の耐久性を活かしつつ、設備投資を計画的に行うことでリスクとリターンのバランスを最適化できるのです。 

まとめ

RC造は耐用年数の長さと入居者満足度の高さによって、キャッシュフローを安定させる力を持っています。そこに法人化を組み合わせることで、税率ダウンと資金調達力アップが同時に狙えます。2025年度も中小法人の軽減税率や長期融資枠が維持される見通しのため、早い段階で資産管理会社を設立し、減価償却費を活用した内部留保戦略を描くことが賢明です。これからRC造 法人化に踏み出す方は、20年後の修繕計画まで含めたシミュレーションを行い、自分に合った投資規模とタイミングを見極めてください。長期視点と堅実な資金計画があれば、不動産投資は安定した資産形成の強力な味方になります。 

参考文献・出典

  • 国土交通省 建築着工統計調査報告 – https://www.mlit.go.jp/statistics/details/t-jutakutou.html
  • 国税庁 法人税申告事績(令和6年) – https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/hojin_shinkoku/
  • 財務省 法人企業統計季報 – https://www.mof.go.jp/pri/reference/ss_index.html
  • 日本政策金融公庫 融資制度資料 – https://www.jfc.go.jp/
  • 金融庁 監督指針(金融機関モニタリング) – https://www.fsa.go.jp/
  • 総務省統計局 住宅・土地統計調査 – https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/

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