不動産投資を始めたいものの、「一棟アパート 建築費」がどのくらい掛かるのか分からず、最初の一歩をためらう方は多いものです。土地付き中古物件を買うべきか、新築で理想の間取りを作るか、悩みは尽きません。本記事では、建築費の内訳から資金計画、最新の税制まで、2025年12月時点で押さえておきたいポイントを順序立てて紹介します。読み終えるころには、総コストを正しく見積もり、利益につながる判断ができるようになるでしょう。
建築費を構成する四つの主要要素

まず押さえておきたいのは、建築費が材料費と工事費だけでは完結しない点です。実際には設計監理料や各種申請費、さらには外構工事代まで含めた総額で捉える必要があります。ここを見落とすと、完成後に資金不足に陥るリスクが高まります。
最初の要素は本体工事費です。構造躯体や内装、設備機器の費用が中心で、全体の六〜七割を占めることが一般的です。また、2025年は資材高騰が一段落し鉄骨造で坪単価六十五万円前後、木造で五十五万円前後が目安になっています。一方、電気・給排水設備の性能を高めるとコストは一割ほど上乗せされます。
次に設計監理料と確認申請費が続きます。設計事務所に依頼する場合、建築費の三〜七%が相場です。実は建設会社のパッケージプランより自由度が高い反面、従量課金方式が多くコスト変動も大きくなります。さらに地盤改良費や地質調査費が必要になるケースもあり、軟弱地盤では五百万円以上の追加も珍しくありません。
最後に外構・造成費や引き渡し前の諸費用が加わります。駐車場の舗装やフェンス設置を含む外構は、総工事費の一割前後を見込んでおくと安心です。つまり「一棟アパート 建築費」を語る際は、見積書に含まれない隠れコストまで視野に入れ、余裕ある資金計画を立てることが成功への第一歩になります。
坪単価相場を動かす三つの要因

ポイントは、表面的な坪単価だけでなく、その裏にある変動要因を読み解くことです。坪単価は同じ地域でも構造、設備グレード、工期によって大きく上下します。
一つ目の要因は構造種別です。国土交通省「建設工事費デフレーター」によると、2025年上期の木造住宅建設費指数は前年同期比で二%下落しましたが、鉄骨造はほぼ横ばいでした。木造と鉄骨造の差は坪あたり一〇万円前後まで縮まっており、耐用年数と減価償却のバランスで選択する余地が広がっています。
二つ目は設備グレードです。オートロックや宅配ボックス、IoT家電連携など入居者ニーズが高い装備は競争力向上につながりますが、初期費用だけでなく維持コストも増加します。例えば最新のスマートエントランスシステムを導入すると、一戸当たり約十二万円の追加投資が必要です。空室率を抑え収益を長期安定させる視点で、費用対効果を検証しましょう。
三つ目は工期と施工体制です。労働力不足が続く中、繁忙期に着工すると人工賃金が一割程度上昇する傾向があります。反対に、長雨期は工程管理が難しく工期延長による金利負担が重くなるため、建設会社との工期調整は必須です。つまり坪単価は単なる定価ではなく、時期と仕様で変動する「レンジ」で考えると誤算を防げます。
資金計画と融資戦略の組み立て方
重要なのは、建築費に対して何割を自己資金で賄い、どの金融機関から融資を受けるかを明確にすることです。建築費が二億円を超える案件でも、自己資金二割とすると四千万円が必要になります。自己資金を厚くすれば融資審査は通りやすくなりますが、他の投資機会を逃すデメリットも生じます。
金融機関選びでは、地元信用金庫とメガバンクで金利と融資期間が大きく異なります。2025年12月時点の平均金利は変動型で年二・〇%前後、固定二十年で二・三〜二・五%が一般的です。地方銀行では耐用年数以内を条件に融資期間を三十年まで伸ばせる事例もあり、キャッシュフロー改善効果は大きいと言えます。
一方で、工事進捗に合わせて分割融資(つなぎ融資)を受ける場合、着工から竣工までの利払い負担をどう吸収するかが課題です。実はこの期間の利払いは経費計上できるため、法人化している投資家なら節税効果を高めることが可能です。個人で建築する場合でも、不動産所得が発生する翌年以降に繰越控除を活用すればキャッシュアウトを抑えられます。
さらに、想定空室率を二〇%程度、金利上昇を一・五%見込んだシミュレーションを行いましょう。国土交通省が公表した二〇二五年十月の全国アパート空室率は二一・二%で、前年より〇・三ポイント低下していますが、地域差は依然として大きいからです。厳しい前提で耐性を確認しておくことで、不測の事態でも返済が滞らない運営が期待できます。
コストダウン実例と注意すべき落とし穴
実は建築費を抑えるだけなら、仕様を落とせば簡単です。しかし長期的な入居率低下や修繕費の増加を招く恐れがあります。ここでは品質を維持しつつコストダウンに成功した事例を紹介し、併せて注意点を整理します。
東京都郊外で木造二階建て一棟アパートを建築したA氏は、間取りを一Kから一LDKへ変更しつつ共用部面積を縮小しました。結果として建築費を坪単価で四万円減らしながら、家賃単価を一割アップに成功しています。ポイントは専有面積と収益単価のバランスを精査したことにあります。
別の事例では、設備グレードを維持しつつ建設会社を地元の中堅工務店に切り替えたことで管理コストを年間百万円削減できました。ただし、瑕疵担保保険やアフターサービス体制の確認は必須です。価格の安さだけで選ぶと、竣工後の不具合対応に追われる形になりかねません。
さらに、工事契約前に設計・施工分離方式と一括請負方式を比較検討すると、競争入札により一〜二割のコスト削減余地が生まれることがあります。しかし設計・施工分離では責任範囲が曖昧になりやすく、監理体制を強化しないと工期遅延や品質低下のリスクが高まります。節約を追求するほど、リスク管理の重要度が増す点を忘れないようにしましょう。
2025年度の税制・補助活用のヒント
まず押さえておきたいのは、2025年度も固定資産税の新築減額措置が継続している点です。賃貸住宅の場合、総床面積が一二〇平方メートル以下なら三年間、税額が二分の一に軽減されます。四年目以降の負担も視野に入れつつ、繰越控除との組み合わせでキャッシュフローを平準化しましょう。
また、長期優良住宅に認定された賃貸アパートは、登録免許税と不動産取得税が軽減されます。登録免許税は床面積と構造によって税率が変わりますが、新築評価額が大きいほど効果が高く、三〇〇万円以上の節税事例も珍しくありません。一方で認定取得に必要な性能評価や追加設計費が発生するため、事前に費用対効果を試算することが不可欠です。
融資面では、民間金融機関でも環境性能の高い建物に対し金利を〇・一〜〇・三%優遇する「グリーンローン商品」が広がっています。具体的には、太陽光発電や高効率給湯器を導入し、BELS評価★三以上を取得すると適用対象になります。利息軽減効果は三〇年で総額数百万円規模になり、建築費の増加分を十分に相殺できるケースが多いです。
最後に注意したいのが、補助金申請のスケジュール管理です。2025年度事業は予算消化が早く、申請から交付決定まで三〜四か月を要する場合があります。建築スケジュールを逆算し、設計段階から手続きを並行させなければ、着工後に対象外となるリスクがあります。税理士や設計士とも連携し、申請書類の不備を防ぐ体制づくりが肝心です。
まとめ
ここまで「一棟アパート 建築費」の内訳、坪単価を左右する要因、資金調達のコツ、そして最新の税制優遇まで幅広く解説しました。重要なのは、表面的な見積額だけでなく、工期や仕様変更がもたらす中長期的コストを見据えることです。さらに、厳しめの空室率や金利変動を設定したシミュレーションで耐性を確認し、補助制度を活用して税負担を抑えれば、安定したキャッシュフローが期待できます。今日得た知識を基に、具体的な計画書を作り、信頼できる専門家と連携して次のステップへ踏み出しましょう。
参考文献・出典
- 国土交通省 住宅統計調査 – https://www.mlit.go.jp
- 国土交通省 建設工事費デフレーター – https://www.mlit.go.jp
- 総務省 固定資産税に関する手引き2025 – https://www.soumu.go.jp
- 住宅性能評価・表示協会 BELSガイドライン – https://www.hyoukakyoukai.or.jp
- 日本政策金融公庫 グリーンローン商品概要2025 – https://www.jfc.go.jp