築20年の中古アパートやマンションに興味はあるものの、「本当に収益が出るのか」「修繕費で赤字にならないか」と不安を抱える人は少なくありません。実は、築20年物件は価格がこなれている一方で家賃が大きく下がり切っておらず、適切に運営すれば堅実なキャッシュフローを生み出せます。本記事では、初心者が押さえるべき選定基準から資金計画、2025年度の税制上のポイントまで、最新データを交えてわかりやすく解説します。読み終えるころには、築20年 キャッシュフローを最大化する具体的な手順と判断軸がつかめるはずです。
築20年物件を選ぶ理由

重要なのは、築年数と価格のバランスを理解することです。国土交通省「住宅市場動向調査」によると、築20年前後で物件価格は新築時の約60%に下がる一方、家賃は70%程度を維持しています。つまり購入価格より賃料の下落幅が小さいため、利回りが相対的に高くなる傾向があります。加えて、建物構造や設備仕様は現在の基準にほぼ合致しているケースが多く、需要が急激に落ち込むリスクも抑えられます。
もっとも、築20年を過ぎると外壁や給排水管など大規模修繕のタイミングが近づきます。購入前に長期修繕計画と過去のメンテナンス履歴を確認し、費用を見積もっておくことが欠かせません。また、耐震基準を満たしているかも要チェックです。2000年6月以降の建築確認なら現行基準をクリアしているため、金融機関の評価が得やすく融資条件が有利になる場合があります。
家賃設定と空室リスクの読み方

まず押さえておきたいのは、市場家賃を正確に把握することです。日本不動産研究所の賃料指数では、地方中核都市でも築20年時点からの家賃下落は緩やかになり、築30年までの変動幅は年平均1%程度に収まっています。そのため最初に相場より高く設定し空室を長期化させるより、周辺相場と同水準かやや低めに設定し入居期間を伸ばす方が結果としてキャッシュフローが安定します。
一方で、空室率の想定を甘くすると計画全体が崩れます。総務省「住宅・土地統計調査」を参照すると、全国平均の賃貸住宅空室率は2023年時点で13.6%ですが、立地による差が大きいことがわかります。徒歩10分圏内に駅や商業施設が揃うエリアなら、同規模物件の実績空室率は7%前後まで低下します。購入前に仲介会社へヒアリングし、募集から成約までの平均期間を確認しておくと、より現実的なシミュレーションが可能です。
融資条件と減価償却の活用
ポイントは、融資期間と自己資金のバランスです。金融庁の2025年度「金融機関貸出動向調査」によると、木造アパートでも築年数+融資期間が法定耐用年数(22年)を超えなければ、20年までの融資が期待できます。自己資金を2〜3割入れることで金利を抑え、毎月の返済額に余裕を持たせるとキャッシュフローが安定します。
また、築20年物件は減価償却費が大きな節税効果を生みます。木造なら残存耐用年数は2年と計算されますが、実務上は「定額法」で4年で償却する選択肢があり、年間の帳簿上赤字が所得税の圧縮に寄与します。ただし過度に短期間で償却すると、5年目以降の利益が急増し納税額が跳ね上がる点に注意が必要です。税理士と相談し、10年スパンでの税負担を均すプランを組みましょう。
運営コストを抑える管理術
実は、ランニングコストの数%差が長期的なキャッシュフローを左右します。管理委託料は家賃の5%が相場ですが、複数物件をまとめて委託することで3〜4%に下げられる場合があります。また、入居者トラブル対応や賃料回収体制などサービス内容を比較し、ただ安いだけでなく空室期間を短縮できる管理会社を選ぶと総合収益は高まります。
修繕費については、工事を小分けにするより計画的な大規模修繕を実施したほうが単価が下がることが多いです。国土交通省「マンション大規模修繕工事実態調査」では、まとめて発注した方が総費用は約15%低減しています。さらに、共用部の照明をLED化し電気代を削減するなど、運営に直結する細かな施策も侮れません。これらの積み重ねが、築20年 キャッシュフローを黒字で維持する鍵になります。
キャッシュフローを伸ばす出口戦略
まず、保有期間中の家賃収入で元本を着実に減らし、売却益よりもトータルリターンを意識することが大切です。東京都の住宅着工統計によると、都心部では築30年前後でも土地価格が底堅く、インフレ局面では売却価格が上昇する例も見られます。そのためローン残高が下がった10年目以降に売却し、次の投資に乗り換えることで自己資金を増やす戦略が現実的です。
一方で、家賃収入を年金代わりに長期保有する選択肢もあります。固定資産税や保険料などを差し引いても、ローン完済後は手残りが大幅に増えるため、毎月のキャッシュフローが生活費の補填となります。将来の相続を見据えるなら、建物を法人名義で持つか、2025年度も引き続き適用される「小規模宅地等の特例」を活用して税負担を抑える仕組みを設計しておくと安心です。
まとめ
結論として、築20年物件は購入価格と賃料のバランスが取れており、適切な運営をすれば堅実なキャッシュフローを生む投資対象です。家賃設定や融資条件、税制の活用、大規模修繕の計画などを総合的に管理すれば、空室や修繕リスクを織り込んでも黒字を確保できます。まずは立地と修繕履歴を丁寧に調べ、保守的な収支シミュレーションを作成するところから始めてみましょう。将来の資産形成に向け、一歩踏み出す価値は十分にあります。
参考文献・出典
- 国土交通省 住宅市場動向調査 2024年度版 – https://www.mlit.go.jp
- 国土交通省 マンション大規模修繕工事実態調査 2024 – https://www.mlit.go.jp
- 日本不動産研究所 住宅賃料指数 2025年4月公表 – https://www.reinet.or.jp
- 総務省統計局 住宅・土地統計調査 2023年確報 – https://www.stat.go.jp
- 金融庁 金融機関貸出動向調査 2025年度 – https://www.fsa.go.jp