不動産の税金

築30年以上 シミュレーションで始める堅実投資

築年数が30年を超える物件に興味はあるものの、「修繕費が読めない」「融資が付きにくい」といった不安で一歩を踏み出せない方は多いものです。実際には、収益とコストを正確にシミュレーションすれば、築古物件でも安定したキャッシュフローを生み出せます。本記事では、築30年以上の物件を対象にしたシミュレーション方法をわかりやすく解説し、2025年度の融資環境や税制まで踏まえて具体的な行動指針を提示します。読み終えるころには、自分で数字を組み立てられる力が身につき、物件購入の判断材料が格段にクリアになるはずです。

築古物件投資が注目される理由

築古物件投資が注目される理由のイメージ

重要なのは、築古物件ならではの価格メリットと需要のミスマッチを正しく理解することです。国土交通省「住宅市場動向調査」によると、2025年時点でも全国の中古流通価格は新築に比べ平均で四割程度低く抑えられています。それにもかかわらず、都市部の賃料相場は築年に対する割引率が緩やかで、利回りが高く出やすい構造が続きます。つまり、購入価格の圧縮によって投資効率が高まる余地が大きいのです。

一方で、築年が進むほど設備の陳腐化は避けられず、修繕資金をどう確保するかが成否を分けます。空室リスクも「古い=埋まらない」と単純には決まりません。立地が駅徒歩10分圏内であれば、築40年でも平均空室率が一桁にとどまるという住宅金融支援機構のデータもあります。実は、需要を担保できるエリアを選べば利回りと安定性を両立できるのです。

さらに、2025年度は脱炭素化を背景にした省エネ改修への補助金が拡充され、古い物件をリノベーションする投資家に追い風が吹いています。補助上限は一戸あたり最大100万円ですが、取得後に活用すれば実質利回りの底上げが可能です。こうした制度と市場動向を合わせてプランを描くことで、築古物件の魅力がより際立ちます。

まず押さえておきたい収益シミュレーションの基本

まず押さえておきたい収益シミュレーションの基本のイメージ

まず押さえておきたいのは、シミュレーションの核となる四つの数字です。年間家賃収入、運営費率、融資返済額、そして税引後キャッシュフローがそれに当たります。この順番で積み上げれば、複雑に見える計算もシンプルに整理できます。

年間家賃収入は、周辺の過去成約事例から坪単価を割り出し、空室率を差し引いて計算します。総務省の「住宅・土地統計調査」では、2025年の全国平均空室率は13.8%ですが、駅近の築古マンションでは7%前後にとどまる例が多いです。そこで、物件の立地に応じた現実的な空室率を設定することが第一歩となります。

運営費率は管理費、修繕積立、共用部電気代、広告料などを足し合わせ、家賃収入の15〜25%で見積もるのが一般的です。築30年以上ではエレベーターや配管の更新が控えていることが多く、20%を下回る設定は危険です。さらに、将来の大規模修繕を念頭に別途キャッシュリザーブを年間家賃の5%程度積み立てると、予期せぬ出費に耐えやすい体質になります。

次に融資返済額ですが、日本銀行の統計によれば2025年12月の変動金利平均は2.0%前後で推移しています。築古物件は担保評価が伸びにくいため、自己資金は物件価格の30%を目安に多めに投入すると金利、期間ともに有利な条件を引き出しやすくなります。返済比率は家賃収入の50%以内に抑え、残りから運営費と税金を引いた金額が年間の実質キャッシュフローとなります。

修繕費と空室リスクをどう織り込むか

ポイントは、費用を「いつ・いくら」で時系列に並べ、NPV(正味現在価値)で判断する視点です。築30年以上の物件では、5年以内に給排水管の更新や外壁補修が必要となるケースが多々あります。それぞれの概算費用を工事会社から取得し、工事時期を年次表に落とし込むことで、キャッシュアウトの山を可視化できます。

修繕費の目安として、マンション一室なら給排水管交換が70万円前後、外壁塗装が20〜30万円といわれます。これらを現金で賄うか、追加融資で分散するかでCF(キャッシュフロー)の形が変わります。追加融資の場合は金利を上乗せして再度シミュレーションを行い、年間利回りが8%を下回るなら計画を再考する価値があります。

空室リスクは賃料の下落も含めて考える必要があります。住宅情報サイトのビッグデータを使うと、築20年を超えた時点で賃料は毎年0.5%ずつ下がる傾向が確認できます。築30年以降は下落幅が0.3%に鈍化するため、逆に収益は安定期に入るとも捉えられます。つまり、投資期間を20年スパンで設計する際は、家賃下落を年0.4%で組み込み、空室率を最大15%に設定すれば保守的な試算になります。

最後に、リノベーションによる賃料アップ効果を織り込む手もあります。国土交通省の「賃貸住宅市場の実態調査」では、水回りを一新した場合の平均賃料上昇率が7%と報告されています。費用対効果を比較しながら、改修投資と賃料増収の両輪でリスクをコントロールする発想が欠かせません。

2025年度の融資環境と税制を踏まえた計画

実は、融資条件と税制を把握するだけで、シミュレーションの精度は格段に上がります。2025年度の住宅ローン減税は自宅用のみ適用ですが、賃貸併用住宅に転用できる例外もあるため、投資家は制度との境界線を意識する必要があります。また、不動産所得に対する青色申告特別控除55万円を活用すれば、キャッシュフローの改善幅が大きくなる点も見逃せません。

融資面では、金融庁の監督指針に基づき、地方銀行でも築古物件向けローンの商品ラインアップが拡充しています。耐用年数超過物件でも、残耐用年数+15年を返済期間とする商品が登場し、金利は2.3〜3.0%が主流です。自己資金を増やせば2%台前半も期待でき、資本効率を保ちつつ長期運用が可能になります。

さらに、日本政策金融公庫の「生活衛生貸付・耐震改修資金」は2025年度も継続しており、耐震補強工事を行う場合に年1.1%の低利融資を受けられます。築古物件を耐震補強と同時にリノベーションする計画なら、一般ローンと組み合わせて資金調達コストを抑えられるでしょう。

税制面で注意したいのは、固定資産税評価額の見直しが2026年度に予定されている点です。評価額上昇が税負担に直結するため、2025年中に取得して改修まで終えておくと、旧評価額のまま3年間据え置かれるケースがあります。こうした時間軸もシミュレーションに織り込めば、純粋な利回り計算だけでは見えないメリットを享受できます。

シミュレーションを行う実践ステップ

基本的に、シミュレーションはエクセルと公的データがあれば誰でも作成できます。最初に購入価格、自己資金、金利、返済期間を入力し、元利均等返済の関数で年間返済額を算出します。次に家賃、空室率、運営費率のセルを作り、税引前キャッシュフローを自動で表示させます。

次のステップでは、将来の修繕費と賃料下落を年次行で入力し、10年、20年、30年後の累積CFを可視化します。ここでNPV関数を使い、割引率を3%に設定して現在価値を求めると、複数物件を公平に比較できます。

場合によってはセンシティビティ分析も有効です。空室率を5%、10%、15%と変えた場合、NPVがどこでマイナスに転じるかを確認すれば、リスク許容度が数字でわかります。エクセルのデータテーブル機能を使えば、シート1枚で一覧化でき、金融機関への説明資料としても活用しやすくなります。

最後に、出来上がったシミュレーションを不動産会社や管理会社と共有し、賃料査定や修繕見積もりのフィードバックを得ることで精度が向上します。第三者の数字とすり合わせる過程で思わぬコストや収入機会が見つかることもあり、計画を修正しながら完成度を高める姿勢が成功への近道です。

まとめ

築30年以上の物件でも、立地と数字を正しく読み解けば安定収益を狙えます。年間家賃収入、運営費率、返済額、修繕費を時系列で組み立て、NPVで判断することで、表面利回りだけでは見えないリスクとリターンを把握できます。2025年度は低利融資や改修補助金が利用しやすく、税制面でも青色申告控除が追い風です。この記事で紹介したシミュレーション手順を実践し、具体的な数字で物件を比較する習慣を身につけましょう。行動に移すことで、築古投資の可能性は大きく開けてきます。

参考文献・出典

  • 国土交通省 住宅市場動向調査 2025年度版 – https://www.mlit.go.jp
  • 総務省統計局 住宅・土地統計調査 2025年 – https://www.stat.go.jp
  • 住宅金融支援機構 賃貸住宅市場レポート 2025年 – https://www.jhf.go.jp
  • 金融庁 主要行等向けの総合的な監督指針 2025年改訂 – https://www.fsa.go.jp
  • 日本銀行 貸出・金利動向 2025年12月 – https://www.boj.or.jp
  • 日本政策金融公庫 生活衛生貸付・耐震改修資金ガイド 2025年度 – https://www.jfc.go.jp

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