不動産の税金

築30年以上 空室対策で満室経営へ

築古アパートを所有していると、「家賃を下げても空室が埋まらない」「築年数だけで敬遠される」といった悩みが尽きません。特に築30年以上の物件は、最新設備を備えた新築と比較されやすく、放置すれば稼働率が下がり続ける恐れがあります。しかし視点を変え、適切な戦略をとれば、古さを魅力に変えて安定収益を得ることも可能です。本記事では、築30年以上 空室対策の基本から、2025年度に活用できる制度、そして実践例までを順序立てて解説します。読み終えるころには、明日から始められる改善策が見つかるはずです。

築30年以上でも選ばれる物件の共通点

築30年以上でも選ばれる物件の共通点のイメージ

まず押さえておきたいのは、入居者が物件を選ぶ理由は「築年数そのもの」ではなく「快適に暮らせるかどうか」に集約される点です。国土交通省の住生活総合調査では、賃貸住宅を選ぶ決め手として「間取り」「設備」「家賃」が上位を占め、新築かどうかは必ずしも第一条件ではありません。

そこで重要なのは、築年数による見た目の古さを、機能面やデザイン面でカバーする工夫です。たとえば外壁を温かみのある色に塗り替え、エントランス照明をLEDに変更するだけでも、帰宅時の安心感が高まり印象が大きく変わります。また、室内のアクセントクロスやダウンライトも低コストで導入でき、内見時の「新鮮さ」を演出できます。

さらに、管理状態の良さは入居者の信頼につながります。草木が伸び放題だったり、共用廊下が埃だらけでは、それだけで選択肢から外されかねません。一方で、月1回の清掃と簡単な植栽手入れを徹底すれば、「丁寧に管理されている物件」という強みになります。つまり築30年以上でも、清潔感と機能性を両立すれば十分に勝負できるのです。

修繕とリノベーションの優先順位

修繕とリノベーションの優先順位のイメージ

ポイントは、「投資対効果を見極め、段階的に実施する」ことです。いきなりフルリノベーションを行うと、工事費が家賃収入を長期間圧迫しかねません。まずは漏水や雨漏りなど、生活に直結する不具合を最優先で修繕し、マイナス評価をゼロに戻す作業から始めます。

次に検討したいのが水回りの刷新です。日本賃貸住宅管理協会の調査では、キッチンと浴室の新しさが入居意欲を高める要因として上位に挙がっています。システムキッチンを導入できなくても、コンロを二口に替えたり混合水栓に交換したりするだけで満足度は向上します。浴室は追いだき機能付き給湯器に替えると、家賃を3000円前後上げても成約が取りやすいというデータもあります。

最後に内装のデザイン性を高めるリノベーションです。例えば1Kを思い切って1Rの広め空間に変更し、可動式収納でレイアウトを自由にすると、女性単身層からの問い合わせが増える傾向があります。こうした差別化リフォームは、完成後すぐにSNSで拡散してもらいやすく、広告費削減にもつながります。

賃料設定と広告戦略のコツ

実は、空室が長期化する原因の半分以上が「賃料のミスマッチ」にあります。築30年以上の物件では、同エリアの同程度設備よりも500〜1000円高いだけで内見件数が激減することが多いです。したがって周辺成約事例を収集し、共益費込みの総支払額で比較することが欠かせません。

賃料を下げられない場合、フリーレント1ヶ月や礼金ゼロで初期負担を軽減すると、実質利回りを大きく落とさずに成約率を上げられます。国土交通省「不動産市場動向レポート」では、礼金ゼロ物件の平均空室期間が約20日短縮するという報告もあります。また、キャンペーン内容は期間限定にし、早期申込みを促進しましょう。

広告方法については、ポータルサイトだけに頼るのは危険です。地元仲介会社のSNS発信を活用し、物件のストーリーやリノベの経緯を短い動画で紹介すると、訴求力が高まります。さらに、家具付きモデルルームを1室だけ用意し、その写真を掲載する手法も有効です。モデルルームは「実際に入居するとこのイメージで暮らせる」という具体性を与え、問い合わせに直結します。

入居者サービスで差別化する方法

基本的に、築年数のハンデは「サービス」で取り返すことができます。無料インターネットはもはや標準装備になっていますが、速度が遅いと逆効果です。光回線1ギガプランを導入しておけば、学生やリモートワーカーの満足度が大きく向上します。

また、顔認証付き宅配ボックスや置き配ロッカーなど、オンライン購入ニーズに応える設備はコストパフォーマンスが高いです。設置費用は1戸あたり1万〜1万5千円程度で、家賃に500円上乗せしても抵抗感が少ないため、2年で償却できる計算になります。

さらに、入居者アプリによる電子契約や問い合わせ対応を導入すると、若年層だけでなく高齢者にも安心感を与えます。国立研究開発法人建築研究所の調査では、アプリ対応物件は管理会社への電話問い合わせが約3割減少し、結果としてクレーム対応コストを抑制できると示されています。こうしたソフト面の充実が、長期入居と口コミ拡散を後押しします。

公的支援と2025年度の減税制度

重要なのは、国や自治体の支援策を活用して投資回収期間を短くすることです。2025年度も継続する国土交通省「既存住宅省エネ改修推進事業」は、断熱改修や高効率給湯器導入に対して最大120万円の補助が受けられます。対象工事を複数組み合わせると補助率が上がるため、空室対策と同時にエネルギーコスト削減も実現できます。

所得税の面では、賃貸住宅の大規模修繕費を一括損金算入できる制度が2025年度も存続します。これにより、外壁塗装や屋上防水など100万円超の工事を行った年の課税所得を圧縮でき、実質的なキャッシュアウトを緩和できます。さらに、地方自治体が実施する「空家活用リフォーム補助金」は、築30年以上でも耐震性を確保すれば対象になるケースが多いため、住んでほしい世帯像に合わせ補助金を選択しましょう。

最後に、適用期限がある制度は必ず着工時期を逆算する必要があります。補助金の多くは年度内完了が条件で、3月は申請が集中しやすいです。工事計画と融資スケジュールを早めに決め、管理会社とも情報共有しておくことが成功の鍵となります。

まとめ

築30年以上 空室対策の核心は、古さを「味わい」へ変換し、現代の生活ニーズに合わせて再構築することにあります。外観や設備を段階的に改善し、適切な賃料設定と多面的な広告で物件価値を正しく伝えれば、築年数のハードルは驚くほど下がります。さらに、2025年度の補助金や減税を組み合わせれば、自己資金を抑えつつ収益性を高めることも可能です。まずは管理状態の見直しとターゲット設定から始め、優先順位を明確にした計画を立てましょう。それが満室経営への最短ルートです。

参考文献・出典

  • 国土交通省 住宅・土地統計調査 2023年速報値 – https://www.stat.go.jp
  • 国土交通省 不動産市場動向レポート 2025年版 – https://www.mlit.go.jp
  • 公益財団法人 日本賃貸住宅管理協会 賃貸住宅市場景況感調査 2024年春 – https://www.jpm.jp
  • 国立研究開発法人 建築研究所 住宅ストック長寿命化研究報告 2024 – https://www.kenken.go.jp
  • 環境省 既存住宅省エネ改修推進事業 公募要領2025年度版 – https://www.env.go.jp
  • 東京都 空家活用リフォーム補助金 2025年度案内 – https://www.metro.tokyo.lg.jp

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