不動産の税金

築古 相続対策に強い不動産投資のすすめ

不動産を相続するとき、評価額の高さや管理の手間に頭を抱える人は少なくありません。特に都心の新築マンションは固定資産税や相続税の負担が重く、家族に残す資産として本当に最適なのか不安になるでしょう。そこで注目したいのが「築古 相続対策」です。築年数が経過した物件は評価額が下がりやすく、活用方法によって税負担を抑えながら安定収益も狙えます。本記事では築古物件が相続対策に向く理由から、具体的な税制の仕組み、リノベーション戦略、2025年度に利用できる制度までを丁寧に解説します。

築古物件が相続対策に向く理由

築古物件が相続対策に向く理由のイメージ

まず押さえておきたいのは、築古物件は路線価や固定資産税評価額が低くなりやすい点です。建物の評価は経年によって減価償却が進むため、同じ立地の新築に比べ相続税の課税標準が圧縮されます。国税庁の統計でも築30年以上の木造住宅は建物評価額が取得価格の2割以下になる例が多く、現金で持つより大幅な節税効果が期待できます。

さらに、築古物件は取得価格自体が抑えられる傾向にあります。初期投資額が小さい分、複数棟へ分散投資しやすくなるため、空室リスクの低減に役立つのです。一方で家賃収入が伸びにくいという課題もありますが、相続対策では「評価額の引き下げ」と「家賃による現金化」の二つを両立できれば十分に機能します。

重要なのは、築古物件と言っても立地や構造にこだわることです。交通利便性が高い駅徒歩圏や、鉄骨造・RC造のしっかりした躯体を選べば、長期保有での修繕コストを抑えつつ安定稼働が見込めます。また、周辺環境が成熟しているエリアは賃貸需要が底堅く、引き渡し後も家族が運営しやすい点でメリットが大きいです。

税負担を軽減する評価減の仕組み

税負担を軽減する評価減の仕組みのイメージ

ポイントは、建物と土地で評価方法が異なる点を理解することです。建物部分は固定資産税評価額が基準となり、新築から22年以上経過した木造は残存価値がほぼゼロに近づくケースもあります。土地は路線価方式で算定されますが、貸家建付地の評価減や小規模宅地等の特例を組み合わせることで、相続税評価額をさらに引き下げられます。

例えば、延床面積100平方メートル・築35年の木造アパート(固定資産税評価額200万円)を想定します。土地の路線価が5,000万円でも、貸付事業用宅地に該当すれば50%評価減が適用され、土地評価額は2,500万円になります。建物評価額と合算しても課税価格は2,700万円程度にとどまり、現金5,000万円をそのまま相続する場合と比べ、税負担は大きく軽減できるわけです。

また、相続発生前から賃貸経営を行うことで、家賃収入というキャッシュフローを確保できる点も見逃せません。収益を修繕積立やローン返済に回しつつ、評価額を抑えて家族に資産を渡すしくみは、保有資産を“生きたまま減らす”戦略といえます。ただし、評価減のルールは細かく改正されるため、税理士と連携しながらシミュレーションを行うことが欠かせません。

収益性とリノベーションの計画

実は、築古物件で最も気を付けるのは「収益の下支え」です。表面利回りが高く見えても、空室や修繕で収入が減れば家族の負担が増えてしまいます。そこで有効なのが、入居者ニーズに合わせたリノベーション計画です。70年代の3点ユニットバスを分離型に変更する、Wi-Fi環境を整備するなど、比較的少額で家賃を維持できる改善策が多数あります。

東京都住宅政策本部のデータによると、築30年以上でもリノベ後3年以内の平均入居率は90%を超えています。言い換えると、適切な改修を行えば新築同等の稼働を実現できるわけです。リフォーム費用を抑えるコツは、工事内容を「入居期間を伸ばす影響が大きい順」に優先することです。水回り・断熱・収納の改善は、若年層からシニアまで幅広い層の満足度を高めやすいとされています。

さらに、家族信託を併用し、将来の管理権限を次世代へスムーズに移す方法も検討したいところです。信託契約により、所有権と管理権を分けることで、認知症リスクなどによる運営停滞を回避できます。築古 相続対策では、物件の魅力向上とガバナンス整備をセットに考えることが、長期安定につながるのです。

リスク管理と出口戦略

まず押さえておきたいのは、築古物件には設備老朽化や賃料下落といった固有リスクがある点です。しかし、あらかじめ長期修繕計画を作成し、金融機関から工事資金をリフォームローンで確保しておけば、突発的な負担は軽減できます。日本政策金融公庫の調査でも、修繕計画書の提示は融資金利優遇につながるケースが増えており、資金繰り面でも有効です。

出口戦略としては、大きく「保有継続」「売却」「組み換え」の三つがあります。保有継続は家族に賃貸収入を残す方法で、相続人の収入補完に向きます。売却は評価減後のキャピタルゲインを確定でき、相続税納税資金を確保しやすい点がメリットです。組み換えは、築古の区分マンションを複数売却し、新耐震基準の一棟RCマンションへ乗り換えるなど、資産規模を保ちつつ耐用年数を延ばす手法となります。

重要なのは、相続開始後3年10か月以内に売却すると小規模宅地等の特例が取り消される場合があることです。したがって、遺産分割協議と税務申告のスケジュールを踏まえ、あらかじめ売却時期を家族で共有しておくと安心です。また、借地借家法の制約から賃借人への通知期間が生じるため、所有形態によっては年単位の計画が必要になります。

2025年度の制度活用と実務手順

2025年度に有効な制度のうち、築古 相続対策に直結するのが「空き家対策特別措置法」の改正と「住宅エコリフォーム減税」です。前者は管理不全空き家の固定資産税特例(住宅用地の評価減)が解除されるリスクを伴う一方、適切に管理した上で賃貸に供すれば除外対象になり、相続後の税負担増を回避できます。後者は一定の断熱改修や省エネ設備を行うと、最大45万円の所得税控除を受けられる仕組みで、築古マンションの性能向上と収支改善に役立ちます。

実務手順としては、相続開始3年前までに次の流れを踏むのが理想です。

  • 物件診断(インスペクション)で構造・設備の劣化度を把握
  • 税理士と連携し、評価減・特例適用の試算を作成
  • 省エネ改修の対象工事を決定し、補助金・減税申請を準備
  • 家族信託や遺言で管理・処分権限を明確化

この四つを順番に進めることで、制度変更によるリスクを抑えつつ、相続人が迷わない仕組みを構築できます。また、2025年度の住宅エコリフォーム減税は2026年12月31日着工分までが期限となっているため、工事スケジュールを後ろ倒しにしないことが重要です。金融機関の融資審査も省エネ性能評価書の提出で金利優遇を受けられるケースが増えており、節税と資金調達の両面でメリットが得られます。

まとめ

築古 相続対策では、減価償却が進んだ物件を活用して評価額を圧縮しつつ、リノベーションで収益力を高めることが鍵になります。建物と土地の評価方法の違いを理解し、貸家建付地や小規模宅地等の特例を組み合わせれば、現金保有よりも大幅な税負担軽減が可能です。さらに、2025年度の空き家法改正や住宅エコリフォーム減税を取り入れれば、老朽物件でも省エネ化とキャッシュフロー改善を両立できます。早期のインスペクションと専門家連携を徹底し、家族が安心して資産を引き継げる体制づくりに着手しましょう。

参考文献・出典

  • 国税庁「相続税評価基準書」 – https://www.nta.go.jp
  • 国土交通省 住宅局「令和5年度 空き家に関する実態調査」 – https://www.mlit.go.jp
  • 東京都住宅政策本部「民間賃貸住宅実態調査2024」 – https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp
  • 日本政策金融公庫「中小企業の設備投資動向調査 2025年版」 – https://www.jfc.go.jp
  • 財務省「租税特別措置等説明資料 2025年度版」 – https://www.mof.go.jp

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