不動産の税金

SRC造 相続対策で税負担を抑えつつ資産を守る方法

親から受け継ぐ賃貸マンションの評価額が高く、相続税が心配という声をよく耳にします。一方で資産を手放してしまえば、家賃収入という安定的なキャッシュフローを失う可能性も否めません。そこで注目されるのが、耐震性と収益性を兼ね備え、相続税評価額を抑えやすい「SRC造 相続対策」です。本記事では、初心者でも分かりやすいように仕組みから2025年度の最新税制、実務的なポイントまでを整理しました。読み終えるころには、ご自身やご家族に合った具体的な行動イメージが描けるはずです。

SRC造とは何かと相続対策の関係

SRC造とは何かと相続対策の関係のイメージ

まず押さえておきたいのは、SRC造が鉄骨(Steel)と鉄筋コンクリート(Reinforced Concrete)を組み合わせた構造で、耐震性と耐火性に優れる点です。この頑強さにより長期修繕サイクルが伸びやすく、安定した賃貸運営を目指せます。また建物の耐用年数が47年と長いため、減価償却を計画的に取れることも見逃せません。

耐用年数が長いと帳簿価額の滞留期間が延び、保有期間中の税負担を平準化できます。相続時点での簿価が残っていても、賃料収入で十分にカバーできるケースが多いのが実情です。つまり、SRC造は資産運用と相続対策を同時に進める器として適しているのです。

一方で、木造や鉄骨造(S造)に比べて建築コストは高めです。しかし耐用年数が短い構造では、相続までに建て替え費用が再び発生するリスクを抱えがちです。長期視点で考えると、SRC造の「丈夫さ」が相続対策と運営効率の両面でメリットを生みます。

相続税評価額を抑える仕組み

相続税評価額を抑える仕組みのイメージ

ポイントは、建物を賃貸に供すると「貸家建付地」として路線価が減額される点にあります。国税庁の評価基準では、土地はおおむね20%前後、建物は30%前後の評価減が見込めます。SRC造で大型の賃貸マンションを建てると、相続税評価額を大幅に下げつつ資産全体の時価を維持できるわけです。

さらに、建築費に伴う借入金を組み合わせると、債務控除により純資産は圧縮されます。毎月の家賃収入から返済を行う仕組みで、実質的な負担感を抑えやすいのが特徴です。実はこの「レバレッジ効果」と評価減のダブル活用が、SRC造 相続対策の核心と言えます。

ここで気をつけたいのは過度な借入です。家賃下落や空室の局面でキャッシュフローが赤字化すれば、本末転倒になりかねません。返済比率は家賃収入の50〜60%以内に抑え、金利上昇シナリオでも耐えられる試算を行うことが重要です。

安定キャッシュフローが家族を守る

実は、相続税を抑えるだけでは長期の安心は得られません。残された家族が継続して物件を運営し、生活費や修繕費をまかなえるかが鍵です。SRC造は遮音性や耐震性が高いため、長期入居につながりやすく、毎月のキャッシュフローが安定しやすい傾向があります。

総務省の住宅・土地統計調査(2023年)によると、SRC造集合住宅の平均入居期間は鉄骨造より約1.4年長い結果でした。この差は管理空室コストの削減効果を生み、家族の生活資金に余裕をもたらします。言い換えると、相続後の運営ハードルを下げる働きが期待できるわけです。

また、金融機関は耐用年数が長い物件ほど長期融資に前向きです。融資期間が延びると月々の返済額が下がり、家族の手取りを安定化させます。加えて、修繕積立金を毎年家賃収入の5〜7%で積み立てる計画を立てておけば、将来の大規模修繕も慌てずに済みます。

節税だけでなくリスク管理も忘れずに

重要なのは、税制メリットに気を取られすぎないことです。SRC造は頑丈ですが、修繕費はRC造よりやや高めに推移します。長期修繕計画を立て、資金繰りを可視化しておくことで、「建てっぱなし」のリスクを避けられます。

火災保険・地震保険の加入内容も見直しましょう。保険料は木造より割安ですが、補償範囲が狭い契約では意味がありません。特に地震保険は建物評価額の50%が上限になるため、自己資金での復旧準備金を併せて確保する姿勢が欠かせません。

さらに、遺言書や家族信託のスキームを組み合わせると、管理権限の移転がスムーズになります。管理会社や税理士と連携し、相続発生後の運営フローを事前に共有しておくと安心です。結論として、節税とリスク管理は車の両輪であり、どちらか一方でも欠ければ戦略は成り立ちません。

2025年度に活用できる税制と支援策

まず押さえておきたいのは「小規模宅地等の特例」が2025年度も存続し、自宅敷地等は80%、賃貸用地は50%の評価減が認められている点です。SRC造マンションの敷地でも、一定の要件を満たせば適用できます。期限は現時点で2027年3月まで延長予定と発表されていますが、法改正リスクもあるため定期的な確認が必要です。

また、令和6年度税制改正で始まった「相続時精算課税の基礎控除110万円創設」は2025年度も有効です。生前贈与とSRC造建築資金を組み合わせると、贈与税負担を軽減しながら資産移転を前倒しできます。

さらに、国土交通省の「住宅エコリフォーム支援事業(2025年度)」では、耐震補強や省エネ改修に対して最大150万円の補助が予定されています。築20年以上のSRC造マンションでも対象になるケースがあり、資産価値の維持と節税を同時に図れます。

まとめ

ここまで見てきたように、SRC造 相続対策は評価額の圧縮効果と長期的な安定収入という二つの大きな利点があります。借入と評価減を上手に組み合わせれば、税負担を抑えつつ家族の生活基盤を守ることが可能です。ただし、修繕計画や保険、法的手続きを怠ればメリットは半減します。まずは収支シミュレーションを作成し、専門家と連携して自分に合ったプランを具体化しましょう。

参考文献・出典

  • 国税庁「財産評価基本通達」 – https://www.nta.go.jp
  • 国土交通省「住宅エコリフォーム支援事業 2025」 – https://www.mlit.go.jp
  • 総務省統計局「住宅・土地統計調査 2023」 – https://www.stat.go.jp
  • 住宅金融支援機構「マンション修繕積立金に関する調査」 – https://www.jhf.go.jp
  • 日本不動産研究所「不動産投資家調査 2025年上期」 – https://www.reinet.or.jp

関連記事

TOP