不動産の税金

マンション投資 失敗する人の特徴と回避策

多くの人が「家賃収入で将来の不安を減らしたい」と考え、マンション投資に関心を寄せています。しかし実際には、期待したほど収益が伸びず途中で売却を余儀なくされるケースも少なくありません。初めての投資でもポイントを押さえれば安定運用は十分可能です。本記事では、失敗事例に共通する思考パターンと行動を整理し、初心者でも納得できる改善策を具体的に提示します。読み終えるころには、自分がつまずきやすい点を事前に把握し、リスクを抑えた計画を立てる力が身につくはずです。

市場を理解しないまま動く危うさ

市場を理解しないまま動く危うさのイメージ

重要なのは、市場全体の流れをつかまずに購入を決めると、大きな失敗を招きやすいという点です。

まず、2025年12月時点で東京23区の新築マンション平均価格は7,580万円と、不動産経済研究所の発表で過去最高を更新しました。価格上昇局面では「早く買わないとさらに高くなる」という心理が働きやすく、焦りが判断を鈍らせます。しかし、価格が高いほど表面利回りは低下し、ローン返済額と家賃収入のバランスが崩れやすいのが現実です。

さらに、人口動態と賃貸需要を無視すると危険度は一段と高まります。総務省「住民基本台帳人口移動報告」によれば、2024年度以降も東京圏への転入超過は続いているものの、若年単身世帯の中心は隣接県へ広がる傾向が強まっています。言い換えると、都心プレミアムが永遠に続くわけではなく、将来的な賃料下落リスクを組み込んだシミュレーションが不可欠です。

また、投資家向けセミナーやSNSの体験談だけを頼りにすると、偏った情報に引きずられる恐れがあります。公的データや複数の不動産調査機関のレポートを組み合わせ、複眼的に市場を検証する姿勢が求められます。

立地選びを軽視する人が抱えるリスク

立地選びを軽視する人が抱えるリスクのイメージ

ポイントは、「物件そのもの」より「場所」のほうが収益に与える影響が大きいという事実を理解することです。

都心部の駅近物件は購入価格が高くても空室期間が短く、平均賃料も高水準で推移します。一方、郊外の築浅物件は手頃な価格で手に入る反面、数年後に競合する新築が大量供給されると、家賃の下落スピードが急激に速まることがあります。つまり、単純な利回り計算だけで判断すると、将来の収益変動を読み違えやすいのです。

また、大学キャンパスや大規模工場の移転計画が決まると、周辺の賃貸需要は短期間で激減するケースがあります。自治体の長期計画や企業のIR情報など、公開資料を確認すれば多くのリスクを事前に察知できますが、失敗する人ほど「今は満室だから大丈夫」と安心してしまいます。

加えて、近隣の再開発が進むエリアでは、建設期間中の騒音や交通規制で住環境が一時的に悪化することもあります。工事完了後に資産価値が上がる可能性もありますが、途中で退去が相次げばキャッシュフローが悪化します。進行中プロジェクトのスケジュールと影響範囲を詳しく調べ、家賃設定や入居募集の時期を柔軟に調整することが不可欠です。

数字に弱いとキャッシュフローが崩壊する

実は、家賃収入の額面ばかり見て実質利回りを計算しない人が、マンション投資で最も失敗しやすい層にあたります。

まず押さえておきたいのは、購入時にかかる諸費用が物件価格の6〜8%に達する点です。登録免許税や司法書士報酬、銀行の融資手数料を合計すると数百万円規模になることも珍しくありません。この費用を自己資金で賄えず、フルローンを選択すると、毎月の返済負担が増え、空室期間を耐えにくくなります。

さらに、築10年を過ぎると給排水管やエレベーターといった共用部分の大規模修繕が控えています。国土交通省のガイドラインによると、30年間に必要な修繕積立金は延床面積あたり月300円前後が目安ですが、多くの管理組合は積立不足が指摘されています。投資家は追加徴収リスクを織り込んだ上でキャッシュフロー表を作成しなければなりません。

また、2025年度の所得税制では、不動産所得の赤字を給与所得と損益通算できる制度が継続していますが、過度な節税シミュレーションを鵜呑みにすると本末転倒です。家賃下落や金利上昇に耐えうるシナリオを複数用意し、最悪ケースでも自己資金で半年以上のローン返済と管理費を賄えるよう準備することが安全策となります。

管理を任せきりにするオーナーの盲点

まず、管理会社へ完全依存すると、小さなトラブルが大きな損失につながりやすい点を知ってください。

管理委託契約では、入居者募集や清掃は代行してもらえますが、家賃の設定やリフォーム仕様の最終判断はオーナーが行います。しかし、失敗する人は「プロに任せたから安心」と考え、見積書の中身を確認しません。その結果、相場より高いリフォーム費用を支払い、利回りを著しく下げてしまいます。

さらに、入居者対応の質は管理会社によって大きく異なります。国土交通省「賃貸住宅管理業法」に基づく登録制度が2024年に完全施行され、一定の品質基準は確保されましたが、顧客満足度調査までは義務化されていません。自分の物件のクレーム対応履歴や入居者アンケートを定期的に確認し、サービス水準を可視化する姿勢が肝要です。

一方で、過度なDIY精神も要注意です。軽微な修繕を自分でこなすのは費用削減に見えますが、専門資格が必要な工事を無断で行えば、保険適用外となり損害が拡大します。重要なのは、管理会社との役割分担を明確にし、コストと品質のバランスを最適化することです。

2025年度の制度を誤解する落とし穴

ポイントは、制度の一部だけを切り取って判断すると、資金計画が狂いやすいという点です。

たとえば、2025年度税制改正では「住宅ローン控除」の適用要件に大きな変更はなく、一定の省エネ性能を満たす新築や中古の取得で控除期間13年が継続します。しかし、控除額は年末ローン残高の0.7%が上限であるため、高額物件を購入しても控除しきれないケースが発生します。つまり、控除額ではなくキャッシュフロー全体で判断すべきなのです。

また、2025年度「賃貸住宅の省エネ改修補助金」は、既存ストックの断熱性能向上を支援する制度として続いています。補助率は工事費の3分の1(上限150万円)ですが、対象となる基準が年々厳格化しています。申請スケジュールも予算枠に達し次第締め切られるため、工事内容と時期を綿密に計画しないと恩恵を受けられません。

さらに、2025年4月から始まった「相続土地国庫帰属制度」の影響で、相続放棄物件が市場に流れ込む可能性があります。市場価格が一時的に下がる局面が生じると、賃料水準にも波及することが想定されます。制度の概要だけでなく、市場参加者の行動変化まで視野に入れ、長期的な収支を見通す必要があります。

まとめ

マンション投資で失敗する人の特徴は、市場調査を怠る、立地の将来性を読み違える、数字に弱い、管理を丸投げする、そして制度を誤解するという五つに集約できます。これらはすべて事前準備と学習で回避可能です。まずは公的データを基にした収支シミュレーションを作成し、複数の専門家に意見を求めてください。そのうえで、自分のリスク許容度に合った物件と融資条件を選び、管理会社と対話を重ねながら運用を続けることが成功への近道となります。

参考文献・出典

  • 不動産経済研究所 – https://www.fudousankeizai.co.jp
  • 総務省統計局 住民基本台帳人口移動報告 – https://www.stat.go.jp
  • 国土交通省 賃貸住宅管理業法関連情報 – https://www.mlit.go.jp
  • 国土交通省 既存住宅ストック活用・省エネ改修支援事業 – https://www.mlit.go.jp
  • 財務省 2025年度税制改正大綱 – https://www.mof.go.jp
  • 法務省 相続土地国庫帰属制度 – https://www.moj.go.jp

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