不動産の税金

マンション投資 月々の収入はいくら?手取りを左右する5つの視点

マンション経営に興味はあるものの、「実際の手取りはいくら残るのか」が分からず一歩を踏み出せない方は多いものです。ローン返済や修繕費がかかると聞くと、不安ばかりが先に立つのは自然な感情でしょう。本記事では、家賃収入から諸経費を差し引いた“本当の月々の収入”を計算する方法を、初心者でも理解できるように順序立てて解説します。読むことで、数字の根拠を持って物件を比較できるようになり、投資判断に自信が持てるようになります。

購入価格とローン返済から逆算する手取りの基本

購入価格とローン返済から逆算する手取りの基本のイメージ

まず押さえておきたいのは、毎月の家賃収入からローン返済額を差し引いた残りが、手取りのスタートラインになるという点です。日本政策金融公庫の2025年12月調査によると、投資用マンションの平均借入金利は変動型で年1.8%前後となっています。仮に4,000万円を35年返済で借りると、毎月の返済額はおよそ12万円です。

次に、同価格帯の物件で得られる家賃を考えます。東京都心の単身者向け新築で月15万円、郊外で月10万円程度が目安です。都心物件の場合、家賃15万円から返済12万円を引けば3万円が残りますが、これはあくまで表面上の数字にすぎません。ここから管理費・修繕積立金・共用部電気代などが差し引かれるため、後述するコストを必ず計算に含める必要があります。

つまり、マンション投資で「月々いくら残るか」を知るには、ローン返済だけでなく、次項以降で解説する家賃変動と経費を合わせてシミュレーションすることが欠かせません。

家賃相場と空室率をどう見積もるか

家賃相場と空室率をどう見積もるかのイメージ

ポイントは、家賃という収入が固定給ではなく変動給であるという認識を持つことです。不動産経済研究所の2025年レポートによれば、東京23区の新築ワンルーム平均家賃は16.2万円で前年比1.5%上昇しています。一方、総務省統計局の住宅・土地統計調査では、単身者向け物件の平均空室率は全国で14%、都心部でも8%前後です。

都心の空室率8%を月ベースに置き換えると、年間12カ月のうち約1カ月は空室になる計算になります。家賃15万円の物件なら、年間家賃収入は180万円ではなく約165万円となり、月平均に直すと13.7万円です。つまり、空室リスクを加味しないとシミュレーションが甘くなり、計画倒れを招きかねません。

また、家賃は築年数に応じて緩やかに下落します。都心ワンルームの場合、築10年で新築時より約10%下がるのが一般的な推移です。長期保有を前提にするなら、将来の家賃下落もセットで見込み、慎重にキャッシュフローを組み立てる必要があります。

ランニングコストが収益を左右する

重要なのは、家賃収入の約20〜30%が経費として消えるという現実です。経費の代表格は管理費と修繕積立金で、国土交通省の「マンション総合調査」によれば、平均的な専有面積30㎡前後の区分所有で月1.3万円が相場となっています。加えて、賃貸管理会社へ支払う管理委託手数料が家賃の3〜5%です。

火災保険料と地震保険料も忘れてはいけません。都心区分マンションの場合、保険料は年間1万2,000円ほどで、月換算1,000円程度となります。さらに、入居者退去時には原状回復費が発生し、国土交通省ガイドラインでは6年償却が目安ですが、実際には5〜10万円の負担が生じるケースも多いです。

こうしたコストを合計すると、家賃15万円のうち3〜4万円が経費に消える計算になります。先ほどの返済後残額3万円と合わせると、手取りは月0〜1万円台にまで圧縮されることも珍しくありません。数字を具体的に積み上げることで、マンション投資 月々の収入はいくらかが現実的に見えてきます。

税金と2025年度の優遇制度で変わる手取り

実は、税引後にいくら残るかを見ないと正確な手取りにはなりません。家賃収入は不動産所得として総合課税され、給与と合算して課税されます。個人投資家の場合、所得税と住民税を合わせた税率は15〜33%が中心帯です。経費計上できる減価償却費を活用すれば課税所得を抑えられるため、築浅よりも築10年前後の中古を狙い、償却費を多く取る戦略が有効な場面もあります。

2025年度も引き続き利用できる制度として、「住宅取得等資金に係る贈与税非課税措置(投資用は対象外)」はありますが、投資家が直接使える優遇は限定的です。一方で、固定資産税は新築住宅に限り3年間2分の1に軽減される制度が継続しています。賃貸併用を含む投資用区分でも要件を満たせば適用されるため、最初の3年は年間数万円の節税効果が期待できます。

加えて、法人化して投資する場合は所得を分散でき、実効税率を20%台に抑えられるケースもあります。ただし、設立費用や会計コストが上乗せされるため、年間家賃収入が1,000万円を超える規模かどうかが判断の分岐点になります。税金戦略は長期のシミュレーションを作成し、専門家と二人三脚で検討することが大切です。

具体例で学ぶシミュレーション

基本的に、シミュレーションは「年間家賃-空室損-経費-ローン返済-税金」という順番で計算します。ここでは東京都心のワンルームを想定し、実際の数字を当てはめてみましょう。家賃15万円、空室1カ月分を想定すると年間家賃は165万円です。管理費・修繕積立金18万円、管理委託手数料8万円、保険・雑費2万円を引くと経費は28万円となり、ネット賃料は137万円です。

ローンは4,000万円を1.8%で35年返済した場合、年間約144万円の返済が必要です。ネット賃料137万円から返済144万円を差し引くとマイナス7万円になりますが、減価償却費として建物価格1,800万円を47年で計算すると年間約38万円が経費化されるため、課税所得は▲45万円となります。所得が赤字になることで税金は0円、むしろ給与所得と損益通算して税還付が発生する可能性もあります。

このシミュレーションから分かるのは、キャッシュフローがわずかにマイナスでも、減価償却を含めた総合的な収益はプラスに転じる場合があるという事実です。ただし、将来の大規模修繕や金利上昇リスクを踏まえ、年間10万円程度の積立を別途行うと安心でしょう。

まとめ

本記事では、購入価格とローン返済、家賃相場と空室率、ランニングコスト、税金、そして具体例の五つの視点から月々の手取りを検証しました。重要なのは、家賃収入だけで判断せず、経費と税金を差し引いた後の数字で物件を比較することです。これらを丁寧に計算すれば、マンション投資の月々の収入はいくらかを具体的に把握でき、将来の資産形成をより確かなものにできます。まずは気になる物件の家賃と経費を一覧表にまとめ、今日紹介した手順でシミュレーションを作成してみてください。数字が見える化されれば、不安はチャンスへと変わるはずです。

参考文献・出典

  • 不動産経済研究所 – https://www.fudousankeizai.co.jp
  • 日本政策金融公庫「住宅ローン利用者調査 2025年」 – https://www.jfc.go.jp
  • 国土交通省「令和5年度マンション総合調査」 – https://www.mlit.go.jp
  • 総務省統計局「住宅・土地統計調査」 – https://www.stat.go.jp
  • 国税庁「令和5年分所得税の手引き」 – https://www.nta.go.jp

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