マンション投資に興味はあるものの、「実際に何年で元が取れるのか分からない」と感じていませんか。初期費用やローン返済が重くのしかかる一方で、家賃収入が想定より伸びなければ回収は遠のきます。本記事では、初心者がつまずきやすい回収期間の考え方を基礎から解説し、2025年時点で使える最新データと制度を織り交ぜながら、元本回収を早める具体策を提示します。読み終えるころには、自分の投資プランを何年で黒字化できるか概算できるようになるはずです。
元が取れる年数を測る三つの指標

重要なのは、投資の回収期間を「利回り」「キャッシュフロー」「ROI(投下資本利益率)」という三つの角度から同時に捉えることです。これらを組み合わせることで、数字の裏に隠れたリスクまで見抜けるようになります。
まず表面利回りは、年間家賃収入を物件価格で割ったシンプルな指標です。東京23区の新築マンション平均価格が7,580万円(不動産経済研究所)となった2025年では、表面利回り4%前後が一つの目安とされています。しかし管理費や固定資産税を差し引いた実質利回りは2%台に落ち着くことが多く、この差を把握しなければ回収年数を誤算します。
次にキャッシュフローは、家賃収入からローン返済と経費を引いた手残り金額です。たとえば自己資金2,000万円・借入5,500万円で金利1.5%・35年返済の場合、月々の返済は約17万円です。管理費や修繕積立金を含めると、家賃が25万円あっても手元に残るのは5万円程度にとどまる可能性があります。つまりキャッシュフローを基に算出した回収期間は、表面利回りより長くなりやすいのです。
最後にROIは、自己資金だけでなく諸費用、税効果まで加味した指標で、投資効率を総合的に示します。減価償却による節税が生じれば、実質回収期間が短くなる点が特徴です。この三つを並べて比較することで、表面上は魅力的でも実質的には回収が遅い物件を避けられます。
家賃収入と空室率が与える影響

まず押さえておきたいのは、家賃収入は年々一定ではないという事実です。住宅・土地統計調査によれば、築10年までの賃料下落率は平均で年1%前後、築20年を超えると下落幅が拡大します。初年度の家賃で利回り計算を固定すると、後年ほど回収期間が延びる原因になるわけです。
一方で空室率はエリアによって大きく異なります。東京都心5区の空室率は2025年時点で平均4%と低水準ですが、郊外では8%を超えるエリアもあります。空室1カ月は年間家賃の8.3%に相当し、利回りへ直接打撃を与えます。この影響をシミュレーションに織り込まないと、元本が思ったより長く寝かされる事態を招きかねません。
さらにサブリース契約で空室リスクを下げる手法もありますが、契約更新時の家賃減額や中途解約ペナルティが想定以上のコストになるケースが増えています。国土交通省が2025年度に示した指針では、家賃下落リスクをオーナーと業者で適切に分担するよう求めていますが、実務上はオーナー負担が大きい事例が少なくありません。
つまり、家賃下落率と空室率を保守的に見積もり、10年後・20年後のキャッシュフローも確認しておくことが、実際の回収年数を早期に把握する近道になります。
実際のシミュレーションで理解する
ポイントは、具体的な数字を当てはめて回収年数を算出し、その結果を複数シナリオで比較することです。以下では新築と中古を例に、投資効率の違いを浮き彫りにします。
新築マンションを7,500万円で購入し、家賃25万円を想定したケースを考えます。初期費用は物件価格の7%とし、自己資金2,000万円を投入、残りを金利1.5%の35年ローンとします。表面利回りは4%ですが、管理費・修繕積立金・税金を差し引くと実質利回りは2.2%に低下します。キャッシュフローは年間60万円、つまり自己資金を回収するには約34年かかる計算です。家賃が年1%下落し、空室が年1カ月発生するシナリオでは、回収期間は40年を超えてしまいます。
一方で築15年の中古マンションを4,000万円で購入し、家賃16万円を想定した場合を見てみましょう。こちらは表面利回り4.8%ですが、建物価格比率が高い分、減価償却による節税効果が大きく、実質利回りは3.5%前後に上がります。自己資金1,000万円・残りを金利1.8%の25年ローンで組むと、年間キャッシュフローは80万円となり、13年で元が取れる試算です。もちろん築古ゆえの修繕リスクがありますが、それでも新築より短期回収が可能な点が魅力と言えます。
このように「マンション投資 何年で元が取れるか」は、物件種別や融資条件で大きく変わります。複数のシナリオを作り、一番悪いケースでも許容できる回収期間に収まるか確認することが、後悔しない投資への道標です。
節税・制度活用で回収を早める方法
実は、税制と補助制度を上手に組み合わせることで、キャッシュフローを押し上げ、回収期間を短縮できます。2025年度も有効な代表例が「減価償却」「損益通算」「ZEH水準省エネ改修補助金」の三つです。
減価償却は建物価格を耐用年数に応じて費用計上できる制度で、所得税・住民税を圧縮します。特に中古は耐用年数が短く速いスピードで償却できるため、実質的に手残りが増えます。国税庁の耐用年数表によると、鉄筋コンクリート造は47年ですが、築20年の物件なら残存27年で償却可能です。
損益通算は、不動産所得が赤字になった場合、給与などの他所得と相殺できる仕組みです。医療従事者やITエンジニアなど高所得層ほど、節税効果で実質利回りが底上げされ、回収期間が短くなります。ただし赤字計上には客観的な修繕見積書や領収書を残し、税務調査に耐えられるよう備える必要があります。
さらに2025年度は、既存マンションをZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)水準へ改修する際、最大150万円を補助する事業が継続しています。断熱改修や高効率給湯器の導入を行えば、光熱費が下がり入居者満足度も上がるため、家賃維持や空室抑制に直結します。補助金の公募は年度ごとに締め切りがあるため、スケジュールを逆算して工事計画を立てることが肝心です。
こうした合法的な仕組みを駆使すれば、表面利回りが平凡でも実質回収期間を大幅に短くできる点を理解しておきましょう。
リスク管理と売却益まで見据えた戦略
ポイントは、回収期間だけでなく出口戦略まで設計し、想定外の損失を防ぐことです。ローン返済が進む10年後に売却益が期待できれば、回収期間を机上より短縮できる可能性があります。
不動産流通推進センターの2025年データによると、東京都心部の築10年マンション平米単価は過去5年で平均年2.8%上昇しています。このトレンドが続けば、キャピタルゲイン(売却益)を得ることで短期間で元を取れる計算が成り立ちます。しかし将来の市場は読めないため、賃料だけでローン支払いが可能な安全圏を確保したうえで、売却はあくまでプラスアルファと位置づけるのが賢明です。
また災害リスクへの備えも欠かせません。地震保険や水災補償を適切に付帯することで、大規模修繕や資産価値棄損を避けられます。保険料は年間数万円ですが、万が一の際に回収期間がリセットされる事態を防いでくれるため、費用対効果は高いと言えます。
万全を期すなら、定期的にポートフォリオを見直し、物件間で資本を入れ替えるリバランス戦略も有効です。含み益が出た物件を売却し、利回りの良い新規物件へ乗り換えれば、全体として回収期間を短く保ちながら資産拡大を図れます。
まとめ
ここまで、マンション投資で元が取れる年数を左右する指標、家賃と空室の変動、具体的なシミュレーション、節税策、そして出口戦略まで幅広く解説しました。要するに、表面利回りだけで判断せず、実質キャッシュフローと税効果を加えたROIで回収年数を見積もることが成功への鍵です。さらに空室率を保守的に想定し、制度や補助金を活用すれば、回収期間を10年台に縮めることも十分可能です。まずは手持ちの資金と目標年数を明確にし、複数シナリオでシミュレーションを組み立ててみてください。
参考文献・出典
- 不動産経済研究所 – https://www.fudousankeizai.co.jp
- 国土交通省「住宅市場動向調査2025」 – https://www.mlit.go.jp
- 総務省「住宅・土地統計調査」 – https://www.stat.go.jp
- 国税庁「耐用年数表」 – https://www.nta.go.jp
- 不動産流通推進センター「不動産流通統計2025」 – https://www.retpc.jp