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名古屋 収益物件で失敗しない投資術

名古屋で初めて収益物件を探すとき、多くの人が「賃料は取れるのか」「将来も価値が下がらないか」と不安になります。東海エリアの中心都市とはいえ、エリアごとの差や物件タイプの違いを知らなければ収益計画は立ちません。本記事では、名古屋市の市場動向からエリア別リスク、2025年度に活用できる融資制度までを体系的に解説します。読み終えたころには、自分に合った投資戦略を描き、行動へ移すための具体的な視点が手に入るはずです。

名古屋市場の基本動向

名古屋市場の基本動向のイメージ

重要なのは、名古屋市全体の需要と供給を数字で把握することです。総務省の住民基本台帳によれば、2024年までの5年間で市の人口は微増を続け、2025年1月時点で約233万人となりました。人口が横ばいの都市と比べ、賃貸需要が安定している点は投資家にとって大きな安心材料になります。

金融機関が参考にする国土交通省の公示地価では、2021年から2025年までの平均上昇率が年1.8%と緩やかな上昇です。ただし都心3区(中村・中区・東区)は年3%前後で伸びており、郊外との差が拡大しています。つまり、エリアによってキャピタルゲインの期待値が大きく変わるので、一律に判断するのは危険です。

また、不動産テック企業のレントウェイ調査では、2025年上期の市内平均空室率は7.2%でした。全国平均9.4%と比べて低めですが、築30年以上のワンルームに限ると12%を超えます。築古物件を検討する場合は修繕計画と合わせて慎重に試算すべきです。

名古屋は第二次産業の比率が高いため、景気変動で転勤者数が上下しやすい一面もあります。景気後退期に急な退去が発生するリスクを織り込み、短期空室でも耐えられる余裕資金を組み込むことが不可欠です。

収益物件の選び方と評価指標

収益物件の選び方と評価指標のイメージ

まず押さえておきたいのは、表面利回りと実質利回りの違いです。表面利回りは年間賃料を物件価格で割っただけの数字ですが、実質利回りは管理費・固定資産税・修繕費を差し引いた後の手残りを基に計算します。名古屋市内の区分マンションでは、表面利回り7%でも実質は5%前後に下がるケースが多いので注意が必要です。

次に、銀行が重視するDSCR(債務返済余裕率)も確認しましょう。家賃収入が返済額の1.2倍を下回ると融資審査は厳しくなります。自己資金を2割以上入れれば金利優遇を受けやすく、長期的なキャッシュフローが安定しやすくなります。

物件評価では、築年数だけでなく耐震基準を見逃せません。1981年以前の旧耐震基準の建物は、金融機関が評価額を抑える傾向にあり、将来の出口戦略に影響します。改修コストを試算し、取得後に新耐震へ適合させる計画があるかどうかで収益性は大きく変わります。

最後に、レントロール(賃料明細)の読み取り方です。直近6か月の入退去履歴を確認し、家賃改定の有無や滞納率をチェックします。数字に違和感があれば現地調査で周辺相場と照合し、販促費やリフォーム費を見積もることで、購入後の利回り低下を防げます。

エリア別のリスクとリターン

ポイントは、地下鉄沿線か郊外駅かで投資戦略を変えることです。まず、名古屋駅と栄駅を結ぶ東山線エリアは、単身世帯の流入が続き、ワンルームでも実質利回り5%前後を確保しやすい一方、物件価格は坪単価200万円を超えます。初期投資が大きい分、空室率が3%以下に抑えられる強みがあります。

一方で、港区や守山区など車移動が主流の郊外エリアでは、一棟アパートの取得価格が都心の6〜7割に抑えられます。家賃も低めですが、土地値が下支えとなるため、長期保有で土地価格の下落リスクを軽減できます。ただし、ファミリー向けメゾネットは入居期間が長いものの、退去時のリフォーム費が高額になりやすい点に注意しましょう。

金山駅周辺の再開発エリアは、2027年開業予定の新ビジネスセンター計画があり、将来的な賃料上昇が見込まれています。ただ、期待が先行して現時点の利回りは4%台まで低下しています。収益よりも値上がり益を狙うポジション取りとなり、短期キャッシュフロー重視の投資家には向きません。

名古屋大学や南山大学周辺は、学生需要が底堅く、築浅のシェアハウスでも高稼働を維持しています。もっとも、大学の学部統合やオンライン授業の進展で将来の需要が変化する可能性もあるため、ターゲット層の動向を年次で確認する姿勢が求められます。

2025年度の融資環境と制度活用

実は、2025年度は金融機関の不動産向け融資姿勢がやや緩和傾向にあります。日本銀行の短観では、地方銀行の貸出態度判断DIがプラス3と、3年ぶりにプラスへ転じました。自己資金3割を用意すれば、変動金利1.0%前後の融資を引き出せるケースが増えています。

制度面では、国土交通省が2025年度も継続する「賃貸住宅省エネ改修支援事業」が注目です。一定の断熱改修を行うと、1戸当たり最大50万円の補助が受けられます(申請は2026年3月末まで)。空室対策と光熱費削減を同時に狙えるため、築古アパートのバリューアップに活用すると実質利回りを押し上げられます。

また、住宅金融支援機構の「フラット35(リノベ)」は、賃貸併用住宅の自己居住部分が1/2以上であれば、固定金利を活用できます。名古屋の中心部で自宅兼賃貸を検討する場合、長期金利リスクを抑えながらキャッシュフローを確定させる手段として有効です。

融資交渉のコツは、事業計画書に市の人口動態や空室率データを盛り込み、保守的なシナリオを示すことです。家賃下落率2%、空室率10%でも赤字にならない計画を提示すれば、金融機関は安心し、金利や融資期間で優遇を受けやすくなります。

長期運用を成功させる管理戦略

まず、家賃下落を抑えるには差別化された内装と迅速な修繕が欠かせません。名古屋では、駅徒歩10分以内でも内装が旧式のままだと家賃が1割以上下がる例が珍しくありません。入居者の退去連絡を受けた時点でリフォームプランを決定し、空室期間を最短化する体制を整えましょう。

さらに、賃貸管理会社の選定基準を明確にすることが大切です。管理戸数が多い会社は募集力が高い半面、細かな修繕提案が後回しになることもあります。月次レポートの質や提案スピードを3か月ほど試し、合わなければ早めに委託先を見直す判断が収益を守ります。

近年はIoT設備の導入で競争力を高める手法が広がっています。スマートロックやネット無料化は、導入コストを家賃で回収しやすく、若年層の長期入居を促します。初期費用は戸当たり5万円程度ですが、家賃を月1000円上げられれば4年で回収でき、それ以降は純粋な収益増となります。

最後に、出口戦略として5年ごとの価格査定を実施しましょう。名古屋の不動産市況は緩やかな右肩上がりですが、再開発による急騰期と調整期が交互に訪れます。売却益と賃料収入のどちらを優先するかを定期的に見直し、市場が高値のときに一部を売却することでポートフォリオ全体の安定性が向上します。

まとめ

本稿では名古屋の収益物件を取り巻く市場動向、物件選定、エリア別リスク、2025年度の制度活用、管理戦略までを網羅しました。安定した人口と緩やかな地価上昇を背景に、名古屋は盤石な賃貸需要が期待できます。一方で区ごとの特性や築年数による差を見極めなければ、利回り低下を招く恐れがあります。行動に移す前に、実質利回りと空室リスクをシミュレーションし、補助金や低金利融資を活用して長期の収益基盤を築くことが成功への近道です。

参考文献・出典

  • 総務省 住民基本台帳人口移動報告 – https://www.soumu.go.jp
  • 国土交通省 公示地価データベース – https://www.mlit.go.jp
  • 日本銀行 短観(全国企業短期経済観測調査) – https://www.boj.or.jp
  • 国土交通省 賃貸住宅省エネ改修支援事業 2025年度概要 – https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku
  • 住宅金融支援機構 フラット35商品概要 – https://www.flat35.com
  • レントウェイ 空室率調査2025上期 – https://www.rentway.co.jp

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