投資用マンションに興味はあるものの、「実際にいくらあればスタートできるのか分からない」「住宅ローンとは違うのだろうか」と悩む人は多いはずです。自己資金をいくら用意すれば安心か、融資はどの程度受けられるのか、そして毎月の返済は本当に黒字になるのか。この記事では、最新データと具体例を交えながら初心者が抱えやすい疑問を順序立てて解消していきます。読了後には、あなた自身の資金計画を描けるようになるはずです。
マンション投資の初期費用を分解する

まず押さえておきたいのは、物件価格だけでは投資総額を判断できない点です。新築・中古を問わず、購入時には仲介手数料や登録免許税などの諸費用が発生します。一般に諸費用は物件価格の6〜8%が目安とされ、7,000万円の物件なら420万〜560万円が別途必要になります。
さらに、登記後すぐに固定資産税の精算金が求められるケースも珍しくありません。管理組合への修繕積立金一時金を設定する新築物件もあり、これが20万〜50万円程度かかる場合があります。つまり、表面上の価格に上乗せされるコストを具体的に知ることが、資金計画の第一歩です。
一方で、家具・家電を備え付ける「セットアップ賃貸」を選ぶと初期設備費が増えますが、家賃を1〜2割上乗せできる可能性があります。投資スタイルに合わせて、追加コストとリターンを天秤にかける視点が欠かせません。
自己資金はいくら用意すべきか

重要なのは、自己資金と融資のバランスをどう設計するかです。住宅金融支援機構の2025年民間住宅ローン調査によると、投資用ローンの自己資金比率は平均23.1%でした。7,580万円の東京23区平均価格を例にすると、自己資金目安は約1,740万円となります。
しかし、全員が2割超を即座に用意できるわけではありません。都市銀行や信託銀行はフルローンに消極的ですが、ノンバンクや信用金庫は物件評価が高ければ90%超の融資を提示することもあります。ただし金利は年2.5%前後とやや高めで、返済比率が厳しくなる点に注意が必要です。
自己資金を抑えたい場合は、中古区分マンションを検討すると良いでしょう。価格帯1,500万〜3,000万円の築浅物件なら、自己資金300万円前後でもスタート可能です。もちろん、利回りと修繕リスクのバランスを見極める力が不可欠になります。
融資条件が投資規模を決める
ポイントは、どの金融機関がどの金利水準で何割まで貸してくれるかを比較することです。2025年12月時点で、変動金利型の投資用ローンは年1.5%〜2.0%が一般的で、固定型は年2.3%〜2.8%が主流です。金利差0.5%は30年返済で数百万円の差になるため、事前交渉が将来のキャッシュフローを大きく左右します。
また、融資審査では「個人の年収」「勤務先の安定性」「既存借入の有無」が重視されます。年収700万円の会社員で他ローンがなければ、年間返済比率35%以内を条件におおむね5,000万〜6,000万円の融資枠が出るケースが多いです。家賃収入を審査に算入してくれる銀行もありますが、実績がない初回投資では過度な期待は禁物です。
物件評価が不足する場合は、頭金を増やすか共同担保を差し入れる方法があります。ただし共同担保には流動性低下というデメリットがあるため、最初の一棟目はシンプルな区分マンションで経験を積む戦略が無難です。
物件価格別シミュレーション
実は、同じ自己資金でも物件価格帯によって毎月の手残りは大きく変わります。ここでは金利1.7%、融資期間30年、表面利回り4.2%で試算したモデルケースを示します。
- 新築区分7,500万円(自己資金1,800万円)
– 月家賃:25万円 – 月返済:18万9,000円 – 管理費・修繕積立金:1万7,000円 – 月手残り:4万4,000円
- 築10年区分3,000万円(自己資金600万円)
– 月家賃:11万円 – 月返済:7万6,000円 – 管理費・修繕積立金:1万2,000円 – 月手残り:2万2,000円
- 築20年区分1,500万円(自己資金300万円)
– 月家賃:7万円 – 月返済:3万8,000円 – 管理費・修繕積立金:9,000円 – 月手残り:2万3,000円
上記から分かるように、自己資金比率が高いほど手残りは増えますが、利回りが良い中古物件でも修繕リスクが潜在します。つまり、初期費用の大小だけでなく、将来の大規模修繕と賃料下落をどう織り込むかが収益安定の鍵となります。
2025年度の支援制度と税制優遇
さらなるポイントは、現行制度を味方につけることです。2025年度税制では、賃貸住宅の固定資産税減額措置が継続しています。新築マンションは最初の3年間、税額が2分の1に軽減されるため、毎年10万〜15万円の支出削減につながります。
また、住宅金融支援機構の「フラット35投資用」は存在しませんが、同機構が実施する技術基準を満たした賃貸併用住宅向けの長期固定ローンを利用すれば、金利1.8%台で35年返済が可能です。自宅と賃貸を兼ねるプランに興味がある人は検討の価値があります。
さらに、2025年度の国交省「賃貸住宅管理業法」改正により、登録事業者による管理委託で家賃保証がより透明化されました。管理会社選びでトラブルを避ければ、空室期間の家賃補填サービスを安定的に受けられ、キャッシュフローのブレを抑えられます。
まとめ
最後におさえておきたいのは、マンション投資は「手元にいくらあるか」ではなく、「いくらまでリスクを取れるか」の把握から始まるという点です。物件価格の6〜8%に及ぶ諸費用、自己資金の理想比率2割前後、そして金利0.5%の差が総返済額を大きく動かす現実を理解すれば、過度な楽観を避けつつも前向きに物件選定が進められるでしょう。まずは自身の年収と生活費から安全な返済上限を算出し、その範囲でシミュレーションを重ねることが第一歩です。資金計画を固めたうえで内覧と金融機関の事前審査を同時並行で進めれば、思わぬ好条件に巡り合える可能性も高まります。
参考文献・出典
- 不動産経済研究所 – https://www.fudousankeizai.co.jp
- 国土交通省 不動産価格指数 – https://www.mlit.go.jp
- 住宅金融支援機構「民間住宅ローン利用者調査2025」 – https://www.jhf.go.jp
- 国税庁「令和7年度税制改正のポイント」 – https://www.nta.go.jp
- 総務省統計局「住宅・土地統計調査」 – https://www.stat.go.jp