年収が300万円前後だと「自分に不動産投資は無理では」と感じる方が多いようです。しかし、実際には融資の組み立て方と物件選定を工夫すれば、小さく始めて収益を積み上げることは十分可能です。本記事では低年収でも収益物件を購入・運営できる手順を基礎から解説します。読むことで、自分に合った物件タイプの見極め方や金融機関との交渉術、2025年度の最新税制優遇の使い方まで一通り理解できるはずです。
年収300万でも融資を通すポイント

まず押さえておきたいのは、融資審査で重視されるのは年収額そのものではなく返済負担率です。金融庁の監督指針では個人向けアパートローンの年間返済額が年収の40%を超えないよう求めています。つまり家賃収入と合わせて計画を立てれば、年収300万円でも承認は可能です。
次に重要なのは自己資金の比率です。地方銀行や信用金庫は自己資金10%から相談に乗るケースが増えており、さらに頭金を20%にすれば金利優遇が得られる場合もあります。過去一年の家計収支をアプリで記録し、毎月3万円の貯蓄実績を示せると信用度は大きく上がります。
最後に、勤務先の安定度と副収入の有無も評価されます。正社員でなくても、パートと副業を合わせた三年平均所得が安定していればプラス材料になります。金融機関面談では、修繕積立や空室期間を見込んだシミュレーション表を示し、返済余力を丁寧に説明すると通過率は高まります。
初期費用を抑える物件選び

ポイントは築古小規模アパートか区分マンションの二択に絞ることです。国土交通省の「住宅市場動向調査2025」によると、築25年以上の木造アパートは表面利回りが平均11%と高く、購入価格も抑えやすい傾向があります。一方、区分マンションは管理費がかかるものの立地が良ければ流動性が高いのが魅力です。
実は、購入時の修繕履歴こそリスクを左右します。外壁塗装や屋上防水が直近10年以内に済んでいる物件を選べば、大規模修繕を当面避けられキャッシュフローが安定します。また耐用年数を超えた木造でも、金融機関によっては残存年数15年以上を認めるケースがあり、築30年でも融資期間20年で組める可能性があります。
さらに、売主が個人か法人かで諸費用が変わります。個人間売買では消費税がかからず、登記費用も低めで済むため総投資額を抑えられます。物件探しではレインズ公開前に地場仲介へ足を運び、未公開情報に早めにアクセスすることが費用削減に直結します。
キャッシュフロー計算の基本
重要なのは家賃収入から単純にローン返済を引くだけでは不十分という点です。管理費、固定資産税、火災保険、原状回復費を年額で合算し、さらに想定家賃の10%を空室損失として差し引くと現実に近い数値になります。総務省「家計調査2024」では、単身世帯の平均引越し周期は4.2年と報告され、空室期間は常に発生します。
キャッシュフローを保守的に見るなら、金利上昇シナリオを加えるべきです。2025年12月時点で長期プライムレートは1.45%ですが、2%まで上がる前提で返済額を計算し、手取り月収が赤字にならないか確認します。これにより不測の事態でも自己資金を取り崩さず運営できます。
つまり、投資判断は購入時点の利回りではなく、最悪ケースでも手元資金を守れるかどうかで下すべきです。月1万円でもプラスを確保できるシミュレーションなら、複利効果で次の物件購入資金を無理なく蓄えられます。
空室リスクを減らす運営術
まず、入居者ターゲットを具体的に定めることが空室対策の出発点です。都心から40分圏の郊外アパートであれば、単身社会人よりも新婚カップル向けに設備を寄せる方が成約率が高いとのデータがあります。国土交通省「賃貸住宅実態調査2025」でも、30平米前後の1LDKは入居期間が平均6.1年と長いことが示されています。
次に、オンライン内見への対応が必須です。2024年以降、主要ポータルサイトの問い合わせの約35%が動画視聴経由になりました。スマートロックと360度カメラを導入し、仲介会社がいつでも撮影できる環境を整えるだけで、競合物件との差別化が図れます。
最後に、退去時の原状回復費を抑えるスキームが長期的な収益を底上げします。壁紙は全面張り替えではなくアクセントクロスで再利用率を上げ、床材はフロアタイルを使うと材料費が半減します。こうした小さな工夫が年間家賃の2〜3%にあたるコスト削減につながり、安定経営を後押しします。
2025年度の税制優遇と活用法
基本的に、2025年度も不動産所得は総合課税ですが、青色申告特別控除65万円を活用すれば課税所得を大幅に圧縮できます。国税庁の公表資料によると、控除満額を受けた場合の平均税負担軽減額は年15万円前後です。会計ソフトとクラウドバンク連携により、簿記知識がなくても仕訳入力がほぼ自動化できるようになっています。
住宅ローン減税は自宅用制度のため収益物件には直接適用できませんが、登録免許税と不動産取得税の軽減措置は築年数要件を満たす中古住宅に限り2026年3月31日まで延長されています。適用条件を調査し、併用住宅を購入して一部を賃貸に回すスキームも選択肢になります。
さらに、固定資産税の新築住宅軽減は2026年度課税分まで延長され、賃貸用小規模住宅も対象です。建築会社と共同で木造アパートを建てる場合、完成後三年間は税額が半額となり、初期キャッシュフローを大きく改善できます。税制を把握し、投資開始時期を調整するだけで実質利回りが1%以上変わる点を意識しましょう。
まとめ
結論として、年収300万円でも収益物件投資は融資審査、物件選び、運営管理、税制活用の四つを押さえれば実現可能です。まずは返済負担率を意識したキャッシュフロー表を作り、自己資金を計画的に増やすところから始めてください。小さな一棟や区分を着実に運営する経験が、二棟目以降の規模拡大を支える土台になります。行動を先送りせず、今月中に金融機関へ事前相談を申し込むことが、将来の安定収入への第一歩です。
参考文献・出典
- 国土交通省 住宅市場動向調査2025年度版 – https://www.mlit.go.jp
- 国土交通省 賃貸住宅実態調査2025 – https://www.mlit.go.jp
- 金融庁 監督指針(個人向け不動産融資)2025年改訂 – https://www.fsa.go.jp
- 総務省 家計調査2024年報 – https://www.stat.go.jp
- 国税庁 青色申告特別控除に関するFAQ 2025年版 – https://www.nta.go.jp