年収はそこそこ高いものの、家計に余裕があるわけでもなく、将来の不安を感じている方は多いです。特に「年収700万なら銀行からいくら借りられるのか」「どんな収益物件を選べば失敗しないのか」という疑問は切実でしょう。本記事では、そんな悩みを抱える会社員や共働き世帯の方向けに、2025年12月時点で有効なデータと制度を踏まえて、物件選定から融資、税制優遇までを網羅的に解説します。読み終えた頃には、ご自身の年収帯で実現可能な投資プランが具体的に描けるはずです。
年収700万で組める融資枠を把握する

まず押さえておきたいのは、金融機関がどのように融資上限を決めるかです。多くの地方銀行や信用金庫では、返済負担率を年収の35%前後に設定しています。国土交通省の「民間住宅ローンの実態調査」によれば、2025年時点の平均返済負担率は33.9%です。
続いて計算例を示します。年収700万円の場合、年間返済限度額は約240万円、期間を30年とすると金利2.0%でおおよそ5,300万円が借入目安となります。ただし、住宅ローンと異なり投資ローンは金利が0.5〜1.0%高い点に注意が必要です。また、自己資金を1割でも投入すれば、金利を下げられるケースが多く、総返済額を数百万円単位で圧縮できます。
最後に、金融機関ごとの審査スタンスに触れます。メガバンクは物件評価に厳しい一方、地銀やノンバンクは収益還元評価で6〜7倍の融資を出すこともあります。つまり、同じ年収でも金融機関選びで借入可能額が大きく変わるため、最低でも三行は比較することが重要です。
物件タイプ別のメリットと落とし穴

ポイントは、年収700万層が狙いやすい物件規模を選ぶことです。区分マンション、木造アパート、一棟RC(鉄筋コンクリート)の順に初期投資が上がりますが、リスクとリターンのバランスも変わります。
区分マンションは2,000万円前後から始められ、空室リスクが低い反面、管理費や修繕積立金で手残りが圧迫されがちです。木造アパートは土地値が含まれるため、減価償却による節税効果が高く、家賃下落にも比較的強いといえます。ただし、築古物件では耐震補強や屋根防水など突発的な修繕費が発生しやすい点を忘れてはいけません。
一棟RCは長寿命で金融機関の評価も高いですが、価格帯が1億円を超えるケースが多く、年収700万では自己資金2,000万円以上が目安になります。実は、自己資金を潤沢に用意できない場合は、RCよりも築浅の木造アパートを検討したほうがキャッシュフローは安定しやすいです。物件タイプごとの特徴を見極め、自分のリスク許容度に合った選択をしましょう。
投資効率を高める資金計画
重要なのは、購入後のキャッシュフローを黒字に保つ仕組みです。日本政策金融公庫のシミュレーションによると、利回り6%の物件でも空室率10%と修繕積立を考慮すると、実質利回りは4%台に下がります。そこで、頭金を1〜2割入れてローン残高を圧縮し、金利上昇リスクを軽減する戦略が有効です。
次に、運転資金の確保が欠かせません。総投資額の5%を目安に、修繕や突発的空室の備えとして現金をプールしておくと、家賃収入が途切れても返済遅延を防げます。さらに、青色申告による65万円控除を活用すれば、課税所得の圧縮効果が得られ、実質利回りを1%程度引き上げることも可能です。
もう一つの視点は、繰り上げ返済と再投資のバランスです。金利2%以下の長期ローンなら、手元資金を自己資本比率の向上に回し、二棟目取得を狙う方が総合リターンは高くなる傾向があります。つまり、利回りがローン金利を3%以上上回るなら繰り上げより再投資を優先すると効率的です。
エリア選定と人口動態の読み方
まず押さえておきたいのは、人口動態と雇用インフラの関係です。総務省「住民基本台帳人口移動報告」によると、2025年は転入超過が続くのは関東・中部の政令市と福岡市です。一方、地方郊外は人口流出が加速しており、賃貸需要が縮小しています。
そこで、駅徒歩10分圏内かつ大学・工業団地・病院などの雇用施設が2km以内にあるエリアを選ぶと、空室期間が平均より30%短いという民間調査結果もあります。また、再開発が進む郊外駅では、坪単価が上昇しても家賃が追い付かない場合があり、利回り低下を招きやすい点に注意が必要です。
最後に、市区町村の都市計画マスタープランを確認しましょう。用途地域の変更や道路拡幅計画があれば、将来的な資産価値上昇が見込めます。情報は自治体ホームページで公開されており、閲覧は無料です。つまり、単に現在の家賃水準を見るのではなく、10年後の街の姿をイメージすることが収益安定の鍵となります。
2025年度に使える制度と税制優遇
実は、賃貸住宅にも使える国の支援策は少なくありません。2025年度も継続している「不動産取得税の減額措置」は、土地評価額が4,500万円以下なら税率が4%から3%へ軽減されます。また、「登録免許税の軽減措置」も2026年3月31日まで延長され、移転登記は税率1.0%が0.3%に下がります。
さらに、築20年以上の木造物件を取得して省エネ改修を行う場合、国土交通省の「賃貸住宅エネルギー性能向上補助金(2025年度)」を利用すれば、工事費の1/3・上限200万円が補助されます。期限は2026年2月末までの工事完了が条件です。補助金を活用し断熱性能を上げれば、入居者満足度が高まり、家賃下落を抑える効果も期待できます。
加えて、個人で不動産所得を申告する場合でも、設備や建物部分の減価償却が認められます。法定耐用年数を超えた築古物件では、4年で償却できるケースもあり、初年度の課税所得を大幅に圧縮できます。結論として、制度と税制の両面を戦略的に組み合わせることで、実質利回りを大きく引き上げられるのです。
まとめ
ここまで、年収700万の投資家が収益物件を選ぶ際のポイントを解説しました。融資枠は約5,000万円が目安ですが、自己資金を1割以上用意して金利を引き下げると安全度が増します。物件タイプは区分より築浅木造アパートが狙い目で、エリアは人口流入と雇用施設の両方が揃う場所を選ぶと空室リスクを抑えられます。さらに、2025年度の税制・補助金を活用すれば、手残りを年間数十万円単位で増やすことも可能です。まずは金融機関に事前相談し、具体的な借入枠を確認したうえで、自分に合った物件を絞り込んでいきましょう。
参考文献・出典
- 国土交通省「民間住宅ローンの実態調査」 – https://www.mlit.go.jp
- 総務省「住民基本台帳人口移動報告」 – https://www.soumu.go.jp
- 国税庁「青色申告制度の概要」 – https://www.nta.go.jp
- 地方税法附則(不動産取得税の軽減) – https://elaws.e-gov.go.jp
- 国土交通省「賃貸住宅エネルギー性能向上補助金」2025年度概要 – https://www.mlit.go.jp/housing