年収400万円前後でアパート経営を始めたいけれど、「貯金も少ないし銀行に相手にされるだろうか」と不安に感じる人は多いものです。しかし実は、年収水準が平均的でも計画さえ正しければ融資を受けて不動産オーナーになることは十分に可能です。本記事では、資金調達から物件選び、2025年度に活用できる制度まで一つずつ丁寧に解説します。読み終えるころには、自分に合った進め方がイメージでき、次の一歩を踏み出す自信が持てるはずです。
年収400万円でアパート経営は可能か

まず押さえておきたいのは、金融機関が重視するのは年収の多寡だけではなく返済負担率です。日本政策金融公庫の住宅ローン類似融資では、年間返済額が年収の35%以内に収まる計画であれば審査通過の余地があるとされています。つまり家賃収入を加味すれば、年収400万円でも5,000万〜6,000万円規模の融資を受けた実例は珍しくありません。
一方で、融資額だけを追い求めると返済圧迫に陥りやすくなります。重要なのは、想定家賃収入から空室期間や修繕費を差し引いた純収益(キャッシュフロー)で毎月の返済が無理なく賄えるかどうかという視点です。国土交通省の2025年10月データでは全国アパート空室率は21.2%ですが、都市部に絞れば15%前後まで下がります。自分が投資するエリアの実勢を把握し、慎重にシミュレーションすることが成功への第一歩になります。
なお、個人信用情報や既存借入の状況も審査に影響します。クレジットカードの延滞があると融資枠が縮む可能性が高いので、アパート経営を考え始めた時点で家計を整理し、固定費削減と遅延ゼロの実績づくりを進めておくと効果的です。
資金計画と融資戦略の基本

ポイントは自己資金と融資条件のバランスを取ることです。一般に、物件価格の20%を自己資金として用意できれば、金利優遇や長期返済を引き出しやすくなります。たとえば3,000万円の中古アパートなら600万円の頭金が理想ですが、年収400万円層ではハードルが高い場合もあります。その際はフルローンに近い形で借りる代わりに、物件価格を抑える、金利上昇リスクを織り込む、といった調整が必要です。
融資先の選択肢としては、日本政策金融公庫、地方銀行、信用金庫、そしてノンバンクがあります。公庫は固定金利1%台後半(2025年12月時点)と低金利が魅力ですが、耐用年数が残っている物件に限定される点に注意しましょう。地方銀行は物件所在地や顧客属性に応じて柔軟な審査を行うため、一次折衝では担当者に投資プランを数値で示すことが説得材料になります。
また、シミュレーションでは「空室率15%」「金利+1%」といった厳しめの条件で収支を確認しておくとリスクに耐えやすくなります。金融機関からの信頼を得るためにも、表計算ソフトで10年間のキャッシュフロー表を作り、修繕積立の具体的な計画まで示すと交渉がスムーズです。
物件選びで失敗しない視点
重要なのは、利回りの高さと実質的な収益性を混同しないことです。表面利回り10%超の郊外物件でも、実際には空室リスクや修繕費がかさみ手取りが低くなるケースが少なくありません。言い換えると、数字だけで判断せず、需要の強さと建物の健全性を丁寧に確認する姿勢が求められます。
立地については、駅徒歩10分以内かバス便含め交通利便性が高いエリアが安定経営につながります。22時以降の終電本数や周辺の生活インフラもチェックしましょう。さらに少子高齢化が続く中、大学近隣のワンルーム需要よりもファミリー向け2DK 〜 2LDKが堅調という地域もあります。自治体の人口統計を閲覧し、5年先の世帯数予測を確認すると投資判断がクリアになります。
建物状態の把握も欠かせません。築25年を超える木造アパートでも、配管更新や外壁塗装が済んでいれば長期保有に耐えます。一方、修繕履歴が曖昧だと突然の大規模修繕でキャッシュフローが赤字化する恐れがあります。内見時は専門家同行の上、屋根や基礎、給排水ラインまで確認し、見積書を取得して数字に反映させましょう。
運営コストと空室リスクを抑える方法
まず押さえておきたいのは、運営コストの中でも変動費である募集手数料と修繕費をどう平準化するかです。管理会社に一任する場合でも、退去時の原状回復を定額制にしたり、広告料(AD)の上限を設定したりするだけで年間支出は大きく変わります。複数社に見積もりを取り、料金体系を比較する姿勢が結果的に純収益を押し上げます。
一方で、空室リスクはマクロとミクロの両面から対策が必要です。国土交通省のデータでは2025年の全国平均空室率はわずかに改善傾向にありますが、地方中枢以外ではむしろ上昇しているエリアもあります。そこで、ターゲット入居者のニーズを正確に把握し、Wi-Fi無料や宅配ボックス設置など初期コストが小さく効果が高い付加価値を導入すると差別化が進みます。
さらに、入居者募集のスピードは管理会社任せにしないことが肝心です。オーナー自ら物件写真を更新し、空室情報をSNSやウェブサイトで告知すると、問い合わせが倍増した事例があります。大家会などコミュニティに参加して成功事例を共有し、自身の運営に応用することで長期的な空室対策が可能になります。
2025年度の制度と税制を活用する
ポイントは、使える制度を確実に把握し、キャッシュフローや節税に組み込むことです。2025年度も継続する「長期優良住宅化リフォーム推進事業」は、一定の耐震・省エネ改修を行うと上限250万円の補助を受けられます。築古アパートを取得して改修する場合、工事費の負担を抑えつつ価値向上が図れるため、年収400万円層でも高利回りを実現しやすくなります。
税制面では、不動産所得と給与所得を損益通算できる点が大きな魅力です。減価償却費を適切に計上すれば、所得税と住民税の圧縮が可能になります。国税庁のガイドラインに沿い、建物価格を低めに見積もり過ぎないよう注意しながら、耐用年数に応じて計算しましょう。また、一定の省エネ性能を満たす住宅は固定資産税が3年間2分の1になる特例が続いており、対象地域での新築計画ならさらなる優遇が受けられます。
最後に、インボイス制度への対応も押さえましょう。課税売上1,000万円以下のオーナーは免税事業者を選択できますが、管理会社が仕入税額控除を求めるケースが増えています。登録の要否を早期に判断し、税理士と相談の上で最適な形を決定すると、将来のトラブルを防げます。
まとめ
ここまで、年収400万 アパート経営 始め方の核心を資金計画、物件選び、運営、制度活用の四つの視点で整理してきました。まず返済負担率を意識したシミュレーションを行い、自分に合った融資戦略を組み立てることが出発点です。次に、利回りだけに惑わされず需要と建物状態を見極めれば、空室率21.2%の市場でも安定収益は狙えます。さらに、運営コストの見える化と補助金・税制の併用でキャッシュフローを底上げできます。実行プランを描いたら、気になる物件の現地調査を予約し、小さな行動を重ねていきましょう。行動こそが、不動産オーナーへの最短ルートです。
参考文献・出典
- 国土交通省 住宅・土地統計調査 2025年版 – https://www.mlit.go.jp
- 総務省 家計調査 年報 2024 – https://www.stat.go.jp
- 日本政策金融公庫 融資制度ご案内 2025 – https://www.jfc.go.jp
- 国税庁 タックスアンサー 不動産所得編 2025 – https://www.nta.go.jp
- 住宅金融支援機構 2025年度 金利動向と住宅ローン統計 – https://www.jhf.go.jp