不動産の税金

年収1500万以上でも陥るマンション投資失敗の落とし穴

年収が1,500万円を超えると、金融機関の審査が通りやすく、節税目的でマンション投資を提案される機会が一気に増えます。しかし「高収入だから大丈夫」と安易に契約した結果、予定していたキャッシュフローが確保できず、家計を圧迫するケースが後を絶ちません。本記事では、年収1500万以上 マンション投資 失敗というキーワードに悩む方へ、典型的な落とし穴と回避策を詳しく解説します。読めば、自分に合った投資判断の基準が明確になり、後悔のない一歩を踏み出せるはずです。

高所得者ほど陥りやすい“節税バイアス”に注意

高所得者ほど陥りやすい“節税バイアス”に注意のイメージ

重要なのは、高額所得者ほど節税効果を過大評価しがちな心理を理解することです。まず、不動産所得は給与所得と損益通算できるため、減価償却を活用すれば数年間は所得税・住民税を抑えられます。一方で、減価償却費はいずれ尽きるため、その後はフルに税負担が戻り、ローン返済と重なると手残りが急減します。国税庁の統計によると、2024年に不動産所得で赤字申告した個人の約35%が年収1,200万円超の層でした。つまり、数字上の節税メリットだけで判断すると、キャッシュフローの悪化という“遅れてくるコスト”を見落としやすいのです。

さらに、税理士へ相談せず営業担当の試算だけで納得する点も失敗の原因となります。節税額は家族構成や医療費控除の有無で変動し、個別シミュレーションが不可欠です。所得税の超過累進課税が適用されるゾーンでは、控除額のインパクトが大きい半面、控除が切れた際の負担増も急激になります。したがって、投資を始める前に“控除が終わった翌年の税額”を必ず確認し、最悪ケースでも家計が回るかをチェックしましょう。

金利上昇フェーズでの長期ローンはリスクが拡大

金利上昇フェーズでの長期ローンはリスクが拡大のイメージ

ポイントは、2025年以降の金利動向がこれまでと様変わりしていることです。日銀は2024年春にマイナス金利を解除し、2025年10月時点の変動金利は平均1.65%前後まで上昇しました。住宅金融支援機構のデータでは、金利が1%上がると、35年ローン3,000万円の場合の総返済額は約600万円増える試算となります。高所得者向けの投資ローンは金利優遇幅が大きいものの、変動金利が中心である点に変わりはありません。

また、家賃水準は金利とは連動しにくく、短期での賃料引き上げは難しい現状です。不動産経済研究所の調査では、東京23区の平均賃料上昇率は年1%程度にとどまっており、金利上昇ペースを下回ります。言い換えると、返済額が増えても賃料収入は増えにくい構造なのです。高収入ゆえに審査が通りやすいからといって、フルローンやオーバーローンを組むと、わずかな金利変動で赤字転落する危険性が高まります。固定金利へ切り替える選択肢も検討し、総返済額の上限をあらかじめ決めておくことが安全策です。

新築ブランド信仰が収益性を弱める

実は、年収1500万円以上の層ほど“資産は新築で持ちたい”というブランド志向が強く、それ自体が利回り低下の要因になります。2025年の東京23区における新築マンション平均価格は7,580万円で、同じエリアの築15年中古物件と比べて約2,000万円高いケースが一般的です。それにもかかわらず、家賃差は月1〜2万円にとどまるため、表面利回りでは中古の方が有利となります。

さらに、新築は購入直後から資産価値が10%前後下落しやすい“新築プレミアム”の剝落があります。国土交通省の不動産価格指数でも、築5年で指数が平均9.4ポイント下がるデータが示されています。高収入を背景に高値掴みすると、初期投資の回収期間が長期化し、売却時の含み損リスクが高まるのです。新築を選ぶ場合でも、駅徒歩5分以内や人口増加エリアに限定し、出口戦略としてのリセールバリューを厳格に検討する必要があります。

空室リスクを軽視したシミュレーションの落とし穴

まず押さえておきたいのは、空室率の前提設定です。不動産会社が提示する試算の多くは“空室率5%以下”の楽観的シナリオで作成されています。しかし、東京都都市整備局の2025年住宅市場報告によると、ワンルームの実質空室率は都心三区でも平均9.1%、郊外では15%を超えるエリアが珍しくありません。高い年収を盾に複数戸を一度に購入し、空室が重なっても耐えられるという誤った安心感を持つと、家賃収入が一気に減少した際のインパクトが大きくなります。

しかも、高所得者層は生活コストも高い傾向があり、キャッシュフローが数十万円単位で目減りすると、教育費や住宅ローンとの両立が難しくなります。空室リスクは“発生頻度と期間”の二軸で捉え、例えば「年1回、1か月空室」と「3年に1回、6か月空室」は収支への影響が同じではない点に注意しましょう。管理会社のリーシング力や周辺の供給計画を調べ、保守的なシナリオで収支計算を行うことが失敗回避の鍵です。

失敗を回避するための戦略的チェックポイント

ポイントは、投資前に“数字と意思決定プロセス”を可視化することです。第一に、物件価格の30%を自己資金として用意し、残債リスクを低減させます。自己資金が潤沢なら利回りの高い中古区分を複数戸に分散し、地域や築年数をバラすことで空室や修繕の偏りを抑えられます。次に、家賃下落率を年2%、空室率を10%とする悲観シナリオでキャッシュフローを試算し、税引き後でも年間20万円以上の黒字が残る案件のみを選ぶ姿勢が重要です。

さらに、税理士と金融機関の担当者、物件管理会社を交えた三者面談を行い、長期的なシミュレーションを共有することで、リスク認識のずれを最小化できます。2025年度の登録免許税軽減や住宅ローン控除は自宅購入が対象であり、投資用には適用されない点を理解し、補助金ありきの計画を立てないことも忘れてはなりません。最後に、出口戦略として5年後・10年後の売却想定価格を不動産流通機構の成約事例から逆算し、含み損ラインを事前に把握することで、損切りの判断が遅れにくくなります。

まとめ

結論として、高収入を武器に短期間でマンションを増やすより、税負担、金利、空室の三つの変動要素を保守的に読み込んだ上で、一戸一戸の収益性を見極める姿勢が成功への近道です。年収1500万以上の方でも、節税メリットの期限切れや金利上昇を軽視すれば、家計を圧迫する赤字投資に転落します。この記事で紹介したチェックポイントを実践し、専門家と連携しながら長期シミュレーションを定期的に更新すれば、安定したキャッシュフローを維持しやすくなるでしょう。焦らず慎重に、しかし着実に行動することで、マンション投資は心強い資産形成の柱となります。

参考文献・出典

  • 不動産経済研究所 – https://www.fudousankeizai.co.jp
  • 国税庁「統計年報」 – https://www.nta.go.jp
  • 住宅金融支援機構「住宅ローン金利推移」 – https://www.jhf.go.jp
  • 国土交通省「不動産価格指数」 – https://www.mlit.go.jp
  • 東京都都市整備局「住宅市場動向報告2025」 – https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp

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