年収1500万円を超えると、所得税と住民税の合計実効税率が約50%に達します。「これだけ稼いでも手取りが思ったほど伸びない」と感じている方は少なくないでしょう。そんな高収入層にとって、節税と資産形成を同時に実現できる手段がアパート経営です。
本記事では、年収1500万円以上のビジネスパーソン向けに、アパート経営の具体的なメリットと注意点をわかりやすく解説します。税務効果から融資戦略、運営のコツ、そして2025年度に実際に使える支援制度まで網羅していますので、ぜひ最後までご覧ください。
アパート経営が高年収層に向いている理由

アパート経営の最大の特徴は、「収益」と「資産」を同時に生み出せる点にあります。家賃収入は毎月のキャッシュフローとして手元に入り、建物と土地はバランスシート上の資産として残ります。高年収層は金融機関からの与信が高いため、自己資金を抑えながら借入を活用し、大きな物件にチャレンジしやすいのが強みです。
特に注目したいのがレバレッジ効果の高さです。たとえば、自己資金3000万円で1億5000万円のアパートを購入した場合、純資産比率は20%になります。年間家賃収入が1300万円で、経費と返済後の手残りが300万円だとすると、自己資本利益率(ROI)は10%に達します。これは株式配当や債券利回りを上回る水準であり、物件価値が上昇すればさらなるリターンも期待できます。
一方で、運営には空室リスクが伴うことも忘れてはいけません。国土交通省の住宅統計によると、2025年10月時点の全国アパート空室率は21.2%で、前年より0.3ポイント改善しています。ただし、エリアによる格差は依然として大きく、立地選びが成功の鍵を握ります。高年収層は資金的な余裕があるため、一時的な空室期間を乗り越えられる点も参入障壁を下げる要因となっています。
高年収層が享受できる5つの税務メリット

アパート経営で得られる税務メリットは、年収が高いほど大きくなります。ここでは、高年収層が特に恩恵を受けやすい5つのポイントを順番に見ていきましょう。
1. 損益通算による所得税の圧縮
アパート経営で生じた赤字は、給与所得と合算して計算できます。最大45%の所得税率が適用されるゾーンにいる方ほど、この損益通算による節税効果は絶大です。実際にはキャッシュが出ていないにもかかわらず、帳簿上の赤字で課税所得を減らせるため、手取りを実質的に増やすことが可能になります。
2. 減価償却費の活用
建物価格8000万円の木造アパートを耐用年数22年で購入し、定額法で減価償却を行うと、年間償却費は約360万円になります。この減価償却費は実際の支出を伴わない「非現金費用」でありながら、経費として計上できます。運営経費と合わせて500万円の損失が出た場合、給与所得3000万円の方なら所得税と住民税で約250万円の節税効果が期待できるのです。
3. 青色申告特別控除
青色申告を採用すると、最大65万円の特別控除が受けられます。帳簿付けを税理士に委託しても年間10万円前後の費用で済むため、控除額を考えれば十分に元が取れる計算です。高年収層にとってはコストパフォーマンスの高い選択肢といえます。
4. 専従者給与による所得分散
配偶者や家族がアパート経営に従事している場合、給与として支払った金額を経費に計上できます。これにより所得を分散させ、世帯全体での税負担を軽減することが可能です。ただし、実際に業務に従事している実態が必要ですので、形だけの給与支払いは認められません。
5. 相続税対策としての効果
不動産は現金と比べて相続税評価額が低くなる傾向があります。特にアパートとして賃貸中の物件は「貸家建付地」として評価減が適用されるため、将来の相続を見据えた資産形成にも効果的です。
ただし、節税目的で赤字を出し続けると、金融機関からの評価が下がる恐れがあります。節税と黒字化のバランスを取りながら、建物の償却が進む前に次の物件へ買い替えてスケールメリットを維持する戦略が有効です。
融資条件とレバレッジ効果を最大化する方法
年収1500万円以上の方は、金融機関から見ると「事業者」に近い評価を受けやすく、融資枠を大きく取れる傾向があります。都市銀行でも年収の10倍、地方銀行や信用金庫では15倍までの融資が出るケースも珍しくありません。2025年現在も低金利環境が続いており、変動金利は1%前後、固定金利でも1.7%程度で借りられる状況です。
自己資金比率を抑える交渉術
金融機関は通常、物件価格の20%程度の自己資金を求めます。しかし、高属性の方であれば10%まで圧縮できることがあります。自己資金を抑えれば複数棟を同時に取得でき、ポートフォリオを早期に拡大できるメリットがあります。ただし、返済比率は家賃収入の70%以内に留め、手元のキャッシュフローを確保するのが安全圏です。
金利上昇リスクへの備え
低金利が続いているとはいえ、金利上昇リスクへの備えは欠かせません。金利が2%上昇すると、返済額は約1.2倍に膨らみます。シミュレーション時には空室率25%、金利3%といった厳しめの前提を設定し、収支の耐性をチェックしておくことをおすすめします。融資期間は法定耐用年数を超えて設定できる金融機関もありますが、長期化すると総支払利息が膨らむため、返済期間とキャッシュフローのバランスを慎重に検討してください。
担保評価の重要性
都心部の駅近物件は土地評価が高いため、追加担保なしで融資が伸びるメリットがあります。逆に地方物件は表面利回りが高くても、土地評価が低いと頭金が多く必要になる場合があります。融資を有利に進めるためには、物件の収益性だけでなく担保評価も事前に確認しておくことが大切です。
空室リスクを抑える運営戦略
アパート経営で安定した収益を上げるためには、「選ばれる物件」に育てる視点が欠かせません。全国平均空室率21.2%という数字はあくまで平均であり、駅徒歩10分以内で築浅、設備が充実している物件では空室率が10%を切るケースもあります。
立地とスペックの見極め
立地選びは空室対策の基本中の基本です。最寄り駅からの距離、周辺の商業施設や学校、病院へのアクセスなど、入居者目線で物件の魅力を評価しましょう。建物のスペックについても、築年数だけでなく設備の充実度や間取りの使いやすさを確認することが重要です。
効果的なリノベーション投資
競争力を維持するためには、入居者ニーズに合ったリノベーションが有効です。たとえば、単身者向けからファミリー向けへの間取り変更は、家賃単価を落とさずに賃料総額を上げる手法として注目されています。一室あたり100万円前後のコストがかかりますが、月額家賃が2万円上がれば5年で回収できる計算です。IoT設備や太陽光パネルの導入も入居者満足度を高め、退去率の低下に寄与します。
データに基づく賃料設定
賃料設定でもデータ活用が鍵を握ります。不動産情報サービス各社の成約データを参考に、直近3カ月の平均値から上下5%以内で賃料を調整すると、空室期間を短縮しやすい傾向があります。入居者募集ではSNS広告や動画内見を組み合わせ、遠方からの転勤者を取り込む工夫も効果的です。
長期修繕計画の策定
修繕計画は長期的な視点で立てることが重要です。屋根や外壁の大規模修繕は12〜15年周期で必要になり、1棟で1000万円規模の費用がかかることもあります。毎月の家賃収入から10%程度を修繕積立に回し、急な出費に備えることが安定運営につながります。
2025年度に活用できる支援制度
アパート経営を始める際には、国や自治体の支援制度を積極的に活用しましょう。2025年度も複数の有力な制度が継続しています。
固定資産税の新築住宅軽減措置
一定要件を満たす新築アパートは、3年間にわたって固定資産税が2分の1に減額されます。都市部で土地価格が高い場合でも、初期のランニングコストを大幅に抑えられるため、キャッシュフローの改善に直結します。
賃貸住宅耐震化支援事業
国土交通省の「賃貸住宅耐震化支援事業」は2025年度予算でも継続が決定しました。耐震改修費用の3分の1、上限100万円が戸単位で補助されます。築古物件を取得してバリューアップを図る投資家にとっては有力な選択肢です。補助を受けるには長期入居促進計画の提出が必要ですので、事前に専門家と相談して計画書を整えておくとスムーズに申請できます。
省エネ賃貸促進事業(ZEH-M支援)
環境省が実施する「2025年度 省エネ賃貸促進事業」では、ZEH(ゼッチ)化賃貸住宅を対象に、断熱性能向上や高効率給湯設備の導入に対して戸当たり最大85万円の補助が受けられます。省エネ性能の高い物件は入居者の光熱費負担を抑えられるため、競争力の向上と空室対策の両面で効果を発揮します。
これらの制度は申請期間や予算枠が限られており、年度途中で終了する可能性があります。情報を早めに収集し、工事内容とスケジュールを合わせて計画的に進めることが成功の鍵です。
まとめ
年収1500万円以上のビジネスパーソンにとって、アパート経営は税務メリットとレバレッジ効果を同時に享受できる魅力的な投資手段です。高い与信力を活かして有利な条件で融資を受けられる点も、高年収層ならではの強みといえます。
一方で、空室リスクや金利変動に備えた保守的なシミュレーションと、長期的な修繕計画は欠かせません。本記事で紹介した2025年度の支援制度を活用しながら、データと専門家の力を借りて計画的に進めれば、安定したキャッシュフローと資産形成を実現できるはずです。
まずは自己資金と融資条件を整理し、信頼できる物件情報を集めるところから始めてみてはいかがでしょうか。
参考文献・出典
- 国土交通省 住宅統計調査 2025年10月速報 – https://www.mlit.go.jp/
- 財務省 税制調査会資料 所得税率表 2025年度版 – https://www.mof.go.jp/
- 総務省 固定資産税減額措置の概要 2025年度 – https://www.soumu.go.jp/
- 国土交通省 賃貸住宅耐震化支援事業 2025年度募集要領 – https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/
- 環境省 省エネ賃貸促進事業(ZEH-M支援)2025年度 – https://www.env.go.jp/