マンション投資が話題になっているものの、実際は何から手を付ければよいのか迷う人が多いはずです。自己資金はいくら必要か、空室リスクはどれほどか、インターネット上の情報が多すぎて整理しづらいのが現状でしょう。この記事では「不動産投資 始める前に知っておくべきこと」を体系的にまとめ、市場環境から資金計画、リスク管理まで具体例を交えながら解説します。読み終えたときには、自分に合った投資イメージが描ける状態を目指します。
2025年の不動産市場を正しく読む

まず押さえておきたいのは、2025年時点での市場環境です。不動産経済研究所によると、2024年の首都圏新築マンション供給は約3万1000戸で前年より4%増えましたが、価格は平均7600万円と過去最高を更新しています。つまり都心部は供給が上向く一方で価格も高止まりしており、利回りは圧縮傾向にあります。
都市圏と地方都市では需給バランスが大きく異なります。東京23区は人口流入が続くものの、2040年には横ばいに転じるという国立社会保障・人口問題研究所の推計があります。一方、名古屋や福岡は雇用拡大を背景に緩やかな上昇が続いており、家賃相場の上げ幅も堅調です。この違いを理解することで、物件の長期価値を見極めやすくなります。
加えて、金利動向も忘れてはいけません。日本銀行は2024年3月にマイナス金利政策を解除し、政策金利を0.1%に引き上げました。2025年12月現在の住宅ローン固定金利は1.5%前後で推移していますが、米欧のインフレ動向次第ではさらなる上昇も想定されます。投資用ローンは住宅ローンより0.3〜0.6%高い水準にあるため、金利上昇リスクを織り込んだ資金計画が必要です。
さらに、賃貸ニーズの質的変化も注目点です。総務省の家計調査では、単身世帯のうち在宅ワークを週3日以上行う人が2023年比で12%増加しました。結果として、インターネット回線と共用ワークスペースを備えた物件の成約速度が平均より1.4倍速いというデータがあります。設備仕様が家賃に直結する傾向が強まっているため、築古物件のリノベーション投資には追い風と言えます。
キャッシュフローと利回りの基本を理解する

ポイントは、表面利回りだけで判断しないことです。表面利回りとは年間家賃収入を物件価格で割ったものですが、実際の手残りを示す指標ではありません。そこで重要なのが「ネット利回り」と「キャッシュフロー」です。
ネット利回りを計算する際は、管理費や修繕積立金、固定資産税を差し引きます。たとえば、価格3000万円の区分マンションで年間家賃が180万円でも、年間諸経費が35万円ならネット利回りは約4.8%に下がります。ここにローン返済を加味すると、毎月のキャッシュフローはプラス1万円しか残らないケースも珍しくありません。数字を具体的に試算することで、物件の収益力を正しく把握できます。
実は、キャッシュフローがプラスでも自己資金を回収できるスピードは物件ごとに大きく違います。自己資金200万円を投入し、年間手残りが12万円なら投資回収期間は約17年です。これを短縮するには、家賃を上げるか初期費用を抑えるしかありません。初心者の場合、諸費用をローンに組み込める「オーバーローン」を選ぶと表面利回りが1%下がっても投資回収期間が5年短くなるケースがあります。ただし返済比率が高まり審査が厳しくなるため、リスクとのバランスを考える必要があります。
また、確定申告による節税効果もキャッシュフローに影響します。給与所得と損益通算できる青色申告を選べば、最大65万円の控除が適用されますが、適切な帳簿と届出が前提です。税務の知識が浅い段階では、記帳代行サービスを年額10万円程度で利用するほうが安全と言えるでしょう。
物件選びで押さえる立地と築年数
重要なのは、一つの指標に依存せず総合的に判断することです。駅距離、築年数、設備仕様、管理体制という四つの要素がバランスしてこそ、長期的な競争力を保てます。
まず立地について、国交省の「土地総合情報システム」によると、駅徒歩5分圏の中古マンションは徒歩10分圏より平均平米単価が18%高いものの、賃料差は10%程度にとどまります。利回りだけを考えれば徒歩7〜10分圏に割安な掘り出し物が潜む理由はここにあります。ただし、将来的に賃貸ニーズが縮小した際、真っ先に選ばれなくなるのは駅から遠い物件です。人口減少リスクを踏まえ、安全域を確保するなら徒歩10分以内が一つの目安となります。
築年数も慎重に確認してください。新耐震基準が適用された1981年6月以降の物件なら金融機関の評価が比較的高く、融資期間を長く設定できます。築30年超の区分マンションでも、共用部の修繕履歴と長期修繕計画がしっかりしていれば、銀行によっては25年ローンが可能です。逆に、修繕積立金が不足している物件は将来の一時金徴収や資産価値の下落につながるため、管理組合の議事録を必ず確認しましょう。
設備仕様は、前述の在宅ワーク需要を意識した高速インターネットと宅配ボックスが鍵になります。野村不動産ソリューションズのデータでは、この二つを備えた築20年前後の物件は平均入居期間が1.8年延びています。小規模な投資でも、10万円前後の宅配ボックス設置で空室期間が短縮されれば十分ペイする計算です。
資金計画と融資を組み立てるコツ
まず押さえておきたいのは、自己資金と借入のバランスです。金融庁の融資統計では、投資用ローンの平均自己資金比率は22%ですが、初心者が30%前後を用意すると金利交渉がしやすくなります。さらに、返済比率を年間家賃収入の50%以下に抑えると、空室が発生してもキャッシュフローが赤字になりにくくなります。
借入金利は変動か固定かで悩む人が多いでしょう。変動金利は短期プライムレートに連動し、2025年12月現在おおむね2.2%ですが、固定は2.7%程度です。仮に3000万円を25年返済で借りた場合、金利差0.5%は総返済額で約200万円の違いになります。金利上昇時のリスクヘッジとして、最初の5〜10年だけ固定し、その後変動に切り替えるミックス型も検討できます。
2025年度の住宅ローン減税は居住用住宅が対象で、投資用物件には適用されません。ただし、登録免許税と不動産取得税の軽減措置は一定の耐震基準を満たす中古住宅にも拡充されました。投資家が個人名義で取得する場合でも、耐震適合証明書を取得すれば登録免許税は本則2.0%から1.5%に軽減されます。取得コストを抑えたいなら、証明書取得費用と税額軽減分を比較し、実質負担の下がる物件を選ぶとよいでしょう。
融資審査では、物件の収益性だけでなく借り手の属性が重視されます。会社員で勤続年数3年以上、年収500万円以上であれば、地銀や信金の融資対象になりやすい傾向があります。フリーランスの場合、課税所得の安定が求められるため、開業3期目以降で黒字申告を続けていれば審査通過率が上がります。属性の弱みを補うために、共同担保や共同名義を活用するケースも増えています。
リスク管理と出口戦略を考える
実は、不動産投資の成否は購入時よりも運用中と売却時に左右されます。空室、家賃下落、修繕費高騰という三大リスクに対して、事前にシミュレーションと対策を練る必要があります。
空室リスクは物件選びと管理会社の体制で大きく変わります。管理委託契約の中でも、集金代行型とサブリース型では責任分担が異なります。サブリースは家賃保証が魅力ですが、途中で賃料改定条項が発動し、収益が想定より下がる事例が報告されています。契約書の更新タイミングと減額幅の上限を確認することが肝要です。
家賃下落リスクに対しては、短期と長期で戦略を分けると効果的です。短期的には募集賃料を周辺相場の-3%以内に設定し、空室期間を最小にします。長期的には、10年ごとにキッチンや浴室を部分リフォームし、資産価値を維持する方法が有効です。国交省の「賃貸住宅市場調査2024」では、水回りを改装した築25年超の物件は、改装しない物件に比べ賃料下落幅が年0.4ポイント小さいと報告されています。
出口戦略としては、売却益狙いと長期保有の二択だけではありません。築浅区分を5年程度運用し、減価償却メリットが薄れる前に売却する「キャピタルゲイン+家賃」型もあります。逆に、築古を安く仕入れてフルリノベーション後に売却する手法は、工事コストと相場の見極めが難易度を上げます。どの戦略を選ぶにしても、購入時点で売却価格の想定レンジとタイミングを決めておくことで、判断がブレにくくなります。
まとめ
本記事では、不動産投資を始める前に押さえるべき市場環境、収益計算、物件選び、資金計画、リスク管理のポイントを整理しました。自分の投資目的とリスク許容度を定義し、数字でシミュレーションしてから物件を探す流れが成功の近道です。次のステップとして、周辺相場を実地調査し、複数の金融機関に事前審査を申し込むことをおすすめします。着実に準備を進めれば、資産形成の選択肢として不動産投資を安心して取り入れられるでしょう。
参考文献・出典
- 不動産経済研究所 – https://www.fudousankeizai.co.jp
- 国立社会保障・人口問題研究所 – https://www.ipss.go.jp
- 日本銀行 統計データ – https://www.boj.or.jp/statistics
- 国土交通省 土地総合情報システム – https://www.land.mlit.go.jp
- 野村不動産ソリューションズ 市場動向レポート – https://www.nomura-solutions.co.jp