収益物件に興味はあるものの、実際に手を出して失敗したらどうしようと不安に感じる人は多いものです。ネットには「高利回りで楽に稼げる」という声と、「持った瞬間から赤字だった」という体験談が混在し、初心者ほど判断に迷います。本記事では、収益物件 本当に儲かるのかという疑問に正面から向き合い、利益が生まれる仕組みから最新の税制優遇まで、基礎から丁寧に解説します。読めば、自分に合った投資判断を下すための具体的な視点が手に入るはずです。
収益物件が利益を生む仕組み

まず押さえておきたいのは、収益物件の利益がどこから生まれるのかという根本部分です。収益源は大きく「インカムゲイン」と「キャピタルゲイン」に分かれます。インカムゲインは家賃収入に代表され、毎月のキャッシュフローを安定させる役割を持ちます。キャピタルゲインは物件売却時の値上がり益で、短期よりも長期保有で狙いやすい傾向があります。
一方で、家賃がそのまま手元に残るわけではありません。実は管理費や修繕費を差し引いた手残りを「実質利回り」と呼び、ここが黒字化の鍵となります。国土交通省の「賃貸住宅市場動向調査」(2024年度)によれば、築10年未満の都心ワンルームでも平均実質利回りは4〜5%に落ち着いています。つまり、表面利回りだけでなく経費を加味した数字で判断する姿勢が欠かせません。
さらに、キャピタルゲインは景気変動の影響を強く受けます。日本不動産研究所の指数では2020年比で2025年の都心マンション価格はおおむね15%上昇しましたが、地方都市では横ばいの地域もあります。立地と需給を読み解く力が、売却益を得るための条件になるわけです。
実際の利回りを左右する三つの費用

ポイントは、収益を押し下げるランニングコストを正しく見積もることです。第一に固定資産税があります。総務省のデータでは東京都心の区分マンションで年間10〜15万円が平均的で、課税標準の見直しがあるごとに増減します。購入前に自治体の税率と評価額を必ず確認しましょう。
次に修繕積立金や共用部のメンテナンス費です。築年数が進むほどエレベーターや配管の大規模修繕が避けられないため、国交省の「長期修繕計画ガイドライン」では築30年時点で新築時の約3倍の積立が必要と示されています。つまり、古い物件ほど修繕費が利回りを圧迫しやすいのです。
最後に空室損失が隠れたコストとなります。レインズの統計によれば、2025年現在、首都圏の平均空室期間は約1.5か月ですが、郊外では3か月を超えるケースもあります。空室が続くと家賃ゼロに加えて広告費も発生するため、利回りが一気にマイナスになる恐れがあります。この三つを念入りにシミュレーションすることが、黒字経営の第一歩と言えるでしょう。
立地選びと賃貸需要の見抜き方
重要なのは、賃貸需要の高さを裏付けるデータを集めるプロセスです。人口動態は総務省の住民基本台帳に基づく転入出数を見ると、23区のうち千代田区や港区では転入超過が続き、賃貸需要が底堅いことがわかります。一方で、郊外でも大学キャンパス移転や大規模工場の新設がある地域は賃貸ニーズが急増することがあります。
また、鉄道の利便性は家賃に直結します。国交省の「鉄道オフピーク乗車調査」では、駅徒歩5分以内の物件は10分超の物件より平均家賃が約15%高いという結果でした。ただし、バス便エリアでも再開発で駅までのアクセスが改善されると賃料差が縮まるので、将来計画を読むことが欠かせません。
図書館や医療機関など生活インフラの充実度も空室リスクを左右します。実際に現地へ足を運び、夜間の街灯や治安もチェックすると、数字だけでは見えないリスクを減らせます。こうした多面的な視点で立地を評価すれば、長期にわたり安定した賃貸需要を確保できるでしょう。
融資戦略とキャッシュフロー管理
まず押さえておきたいのは、融資条件が投資成績に与えるインパクトです。日本銀行の「貸出約定平均金利」(2025年10月公表)によると、アパートローンの変動金利は平均1.6%前後で推移しています。わずか0.3%の金利差でも、3000万円を20年で借入れると総返済額は約100万円変わる計算です。
また、自己資金比率を上げると金融機関の金利優遇が受けやすくなります。実は、自己資金2割以上を用意すると金利が0.2%下がるケースが多く、月々のキャッシュフローを大きく改善します。さらに、返済期間は融通が利く反面、長くしすぎると利息負担が増えるため、将来の出口戦略とセットで決めることが重要です。
キャッシュフロー表を作成する際は、家賃下落や金利上昇といったストレスシナリオを入れるとリスク耐性が把握できます。例えば、家賃が年間2%下落し、金利が1%上昇しても手残りがプラスであれば、比較的安全な投資計画といえます。こうしたシミュレーションを購入前に行うことで、「思ったより儲からない」という失敗を防げます。
2025年度の税制優遇とリスク対策
実は、2025年度も不動産投資家を支援する税制がいくつか継続しています。代表例が「住宅借入金等特別控除(投資用区分を除く自宅転用時)」と「固定資産税の軽減措置(新築賃貸住宅の特例)」です。新築の賃貸住宅を建設すると、固定資産税が3年間半額になる自治体が多く、キャッシュフローを支える効果が期待できます。ただし、適用には延床面積や用途地域の条件があるため、設計段階から税理士と確認することが欠かせません。
また、所得税では不動産所得と給与所得の損益通算が可能です。国税庁の「タックスアンサー」では、減価償却費を活用した赤字計上が認められるものの、2024年以降は過度な節税目的の物件取得に対し税務調査が厳しくなったと指摘しています。適正な見積もりと帳簿付けでリスクを抑えましょう。
一方で、災害リスクへの備えも忘れてはいけません。気象庁のデータでは、近年の線状降水帯発生頻度が増加傾向にあり、水害ハザードマップの確認は必須です。火災保険に水災補償を付帯すると保険料は約1.2倍になりますが、被害時の修繕費を考えると合理的な選択と言えます。こうした制度とリスク管理を組み合わせることで、収益物件 本当に儲かるのかという問いに対し、現実的なプラスを目指せる体制が整います。
まとめ
ここまで、収益物件が利益を生む仕組み、費用の落とし穴、立地選びのコツ、融資戦略、そして2025年度の税制優遇とリスク対策を順に見てきました。重要なのは、表面利回りや広告の甘い言葉に流されず、実質利回りと長期的な需要をデータで確かめる姿勢です。そのうえで、金利交渉や税制活用を積極的に行い、ストレスシナリオにも耐えるキャッシュフローを確保しましょう。行動に移す際は、必ず複数の専門家に相談し、自身のリスク許容度に合った物件を選ぶことが成功への近道です。
参考文献・出典
- 国土交通省 賃貸住宅市場動向調査 2024年度版 – https://www.mlit.go.jp/
- 日本不動産研究所 不動産価格指数 2025年9月公表 – https://www.reinet.or.jp/
- 総務省 住民基本台帳人口移動報告 2025年版 – https://www.soumu.go.jp/
- 日本銀行 貸出約定平均金利 2025年10月 – https://www.boj.or.jp/
- 国税庁 タックスアンサー(不動産所得) 2025年更新 – https://www.nta.go.jp/