不動産投資に興味はあるものの、「年収700万 不動産投資 リスク」という検索ワードにたどり着いた方は多いでしょう。共働きや管理職として年収が安定してきた一方、住宅ローンや教育費も重なり、投資で失敗する余裕はありません。この記事では、同じ年収帯の投資家を15年以上支援してきた立場から、ありがちな落とし穴と具体的なリスク軽減策を丁寧に解説します。読み終えるころには、自分に合った投資規模や資金計画のイメージが描けるはずです。
なぜ年収700万円層が注目されるのか

重要なのは、この年収帯が金融機関から「堅実だが余裕は限定的」という評価を受ける点です。国税庁の民間給与実態統計(2024年分)によると、給与所得者の平均年収は約458万円で、700万円は上位20%に入ります。つまり、投資に回せるキャッシュフローは一定ある一方、失敗したときのリカバリーは簡単ではありません。
まず金融機関の審査では、本人の年収に対し年間返済負担率35%が上限目安です。年収700万円なら約245万円、月20万円までが安全圏とされます。しかし、自宅ローンや車のローンがある場合、この枠を圧迫します。言い換えると、物件価格よりも先に「返済枠」を確認しておくことが、無理のない投資への第一歩です。
一方で、住宅ローン控除を使い切った層は、所得税・住民税を圧縮できる不動産所得の損益通算に魅力を感じます。ただし、赤字計上を前提にするスキームは2025年度税制改正で厳格化されました。税メリットだけを目的にすると想定外の追徴課税リスクが残るため、純粋なキャッシュフローで黒字を出せる物件に絞る姿勢が求められます。
想定すべき3つの代表的なリスク

ポイントは、リスクを「見える化」し、発生確率と損失規模の両面で評価する作業です。代表的なものは入居率低下、金利上昇、突発的な修繕費の三つに集約できます。
入居率低下は即収入に直結します。総務省の住宅・土地統計調査では、2023年時点の全国平均空室率は13.6%ですが、地方の築古アパートに限れば20%を超えるエリアも珍しくありません。賃貸需要は駅距離や築年数が1〜2割変わるだけで急落するため、物件選びの段階で将来の賃料下落余地を試算することが重要です。
次に金利上昇リスクです。2024年に日銀がマイナス金利を解除し、2025年11月時点で長期プライムレートは2.0%台前半を推移しています。変動金利で1%上がると、3000万円の融資(元利均等・30年)で月返済額は約1.5万円増えます。つまり、利回り7%の物件でも金利上昇で実質利回りが目減りする可能性を頭に入れておくべきです。
最後は突発修繕です。国土交通省「マンション大規模修繕実態調査」によると、築20年超のマンションでは10年あたり平均250万円の修繕が必要です。戸数が少ないと1室あたりの負担が大きくなるため、1棟物であれば修繕積立金の残高と過去の工事履歴を必ず確認しましょう。修繕積立不足の物件は想定外の追加入金を迫られることがあります。
リスクを下げる資金計画と融資戦略
まず押さえておきたいのは、自己資金と借入比率のバランスです。一般的に自己資金2割を入れると金利が0.3〜0.5%低くなるケースが多く、借入総額が同じでも総返済額は数百万円単位で変わります。年収700万円層では、生活防衛資金を差し引いて手元に300万円ほど残す形で、自己資金400〜600万円を目標にすると無理がありません。
融資先はメガバンクよりも地元地銀や信用金庫のほうが、本人属性と物件評価を総合的に見てくれる傾向があります。さらに、2025年度から始まった「住宅エネルギー性能向上ローン減税」は居住用限定のため、投資物件には適用されません。したがって、投資家向け融資は金利交渉がすべてです。物件の積算評価(再調達原価×路線価倍率)と収益還元評価(NOI÷還元利回り)の両面で説得材料を用意し、金利と融資期間を同時に引き下げましょう。
また、キャッシュフローは「空室率15%、金利+1%、修繕費年1%上振れ」の厳しめシナリオで試算するクセをつけます。このラインで月5万円の黒字を確保できれば、実績はほぼプラスに収束します。逆に、このシナリオで赤字になる物件は最初から除外する勇気がリスク管理そのものです。
物件選びで押さえるべき視点
実は、同じ利回り表記でも立地と築年数の組み合わせで安全度は大きく異なります。まず立地ですが、国交省の地価LOOKレポートでは2025年第3四半期時点で三大都市圏の地価が前年比+2.1%、地方中核都市で+1.4%でした。都心6区や駅徒歩5分圏内は価格が高くても賃料も底堅く、空室リスクを抑えやすいです。
一方、築古アパートは高利回りに見えますが、耐用年数を超えた木造物件は融資期間が短くなるため、毎月の返済負担が重くなります。年収700万円層が最初に選ぶなら、築10〜20年のRC(鉄筋コンクリート)マンション区分が検討しやすいでしょう。理由は、残耐用年数が十分あり、金融機関が25年程度の長期融資を組みやすいからです。
さらに、家賃相場の将来性を見極める指標として「人口移動報告」の転入超過数が役立ちます。例えば、2024年の総務省データではさいたま市が東京都区部を除く自治体で転入超過トップでした。人口が増えるエリアは賃貸需要が底堅く、空室対策費も抑えられるため、数字以上のリターンが見込めます。
中長期で資産を守る運営術
ポイントは、購入後の運営管理がリスクを最小化するという視点です。まず管理会社の選定ですが、管理戸数と同時に「担当者1人あたりの受け持ち戸数」を確認してください。目安として50戸以下であれば、空室対策のレスポンスが速く、退去から次の入居までのロスを短縮できます。
次に、家賃改定は小刻みに行うほうが総収入を守りやすいです。日本賃貸住宅管理協会の調査では、3年以上据え置いた家賃を一気に下げるより、毎年1〜2%調整したほうが入居期間が長くなる傾向があります。言い換えると、賃料は固定ではなく「調整可能な経営パラメータ」と捉えることが大切です。
保険も抜け落ちやすい項目です。2025年度時点で火災保険料は全国平均で前年より8%上昇しました。補償を削るのではなく、事故率の低いオール電化物件や高台立地を選ぶことで保険料を抑えられます。さらに、区分マンションなら管理組合の保険内容も確認し、被る補償を避けることでランニングコストを最適化できます。
まとめ
ここまで、年収700万円層が不動産投資で直面しやすいリスクと具体的な対策を解説しました。入居率低下、金利上昇、修繕費という三つのリスクを数値でシミュレーションし、自己資金と融資期間の設計でバッファを持たせることが最も堅実な方法です。物件は立地と築年数のバランスを取り、購入後は管理会社と家賃改定を活用して収益性を維持しましょう。行動を起こす際は、本記事で紹介した「厳しめシナリオで黒字を確保できるか」を必ず検証し、自分の生活と将来設計を守る投資を実践してください。
参考文献・出典
- 国税庁「民間給与実態統計調査」2024年分 – https://www.nta.go.jp
- 総務省「住宅・土地統計調査」2023年 – https://www.stat.go.jp
- 国土交通省「地価LOOKレポート」2025年第3四半期 – https://www.mlit.go.jp
- 日本賃貸住宅管理協会「日管協短観」2025年上期 – https://www.jpm.jp
- 国土交通省「マンション大規模修繕実態調査」2024年 – https://www.mlit.go.jp