不動産投資に興味はあるものの、「ローンを組んでまで本当に儲かるのか」と不安を抱く人は少なくありません。物件価格の高騰や金利上昇のニュースを目にすると、失敗したときの損失ばかり想像してしまうでしょう。しかし正しい知識を身につけ、数字で判断すれば、不動産ローンは堅実に資産を増やす手段になり得ます。本記事ではキャッシュフローの考え方からリスク管理、2025年度時点の最新金利まで、初心者でもわかりやすく解説します。読み終えるころには、ご自身の目的に合わせて「借りるか・借りないか」を冷静に決められるようになるはずです。
不動産ローンで得られる三つの収益源

まず押さえておきたいのは、不動産ローンを活用すると収益が三方向から生まれる点です。その仕組みを理解すると、借り入れのメリットが数字で見えてきます。
最初の収益は家賃収入です。ローン返済より高い家賃を受け取れれば、毎月のキャッシュフローがプラスになります。つまりテナントが払う家賃で元金と利息をまかなうイメージです。全国銀行協会の2025年12月時点データによれば、投資用変動金利は年1.5〜2.0%で推移しています。金利が低いほど返済額が下がり、家賃との差が広がるため利益を確保しやすくなります。
二つ目は元金の返済そのものが資産形成になる点です。返済が進むと自己資本比率が上がり、純資産が増えます。言い換えると、テナントが払った家賃であなたの資産が自動的に積み上がるのです。例えば3,000万円を金利1.8%、期間25年で借りた場合、10年後にはおよそ1,000万円の元金が減っています。売却すれば返済残高より高く売れるケースも多く、ここに含み益が生まれます。
最後は減価償却による節税効果です。建物価格を法定耐用年数で割り、毎年経費計上できます。実際の支出を伴わずに課税所得を圧縮できるため、手取りを増やす効果が大きいのです。青色申告を行えば2025年度も65万円の特別控除が受けられ、さらに節税メリットが高まります。この三つの収益が合わさることで、ローンを組んでも手元資金を守りつつ資産拡大を目指せるわけです。
住宅ローンとの違いと融資条件

ポイントは、投資用ローンと自宅購入用ローンでは審査基準も金利も異なることです。誤解したまま金融機関に相談すると、思わぬ落とし穴にはまります。
投資用ローンは事業性融資に分類され、金融機関は賃料収入や空室リスクを詳細にチェックします。一方の住宅ローンは居住目的が前提で、借り手個人の給与収入が主な審査材料です。したがって投資用ローンは金利が住宅ローンより0.5〜1.0ポイントほど高く、頭金も物件価格の1〜2割を求められることが一般的です。
また、金融機関ごとに「貸付限度額=年収の〇倍」といった独自基準があります。たとえば年収600万円なら5倍の3,000万円までという具合です。しかし家賃収入を加味する「収益還元評価」を採用する銀行も増えており、物件の収益性が高ければ年収倍率を超える融資が出るケースもあります。複数行を比較し、「金利・融資額・自己資金率」の三要素を総合判断する姿勢が欠かせません。
さらに2025年度から金融庁ガイドラインに従い、ストレステスト金利(3%程度)で返済比率を試算する銀行が増えました。表面上の金利だけでなく、将来の金利上昇シナリオでも返済が滞らないか確認するのが審査の新常識です。申込前に自分でも同様のシミュレーションを行い、余裕を持った計画を立てましょう。
キャッシュフロー計算の具体例
重要なのは、表面利回りだけでなく、実質利回りとキャッシュフローを詳しく把握することです。ここでは具体的な数字を使い、ローンがキャッシュをどう動かすかを示します。
横浜市郊外で築15年のワンルームマンションを2,000万円で購入すると仮定します。家賃は月8万円、年間96万円です。変動金利1.7%、期間25年、元利均等返済の場合、月返済額は約8万円弱となります。一見すると家賃と同じなので収支ゼロに感じるかもしれません。しかし管理費・修繕積立金・空室率10%を考慮すると、年間支出はおよそ20万円です。この時点で年間24万円の赤字に見えます。
ところが減価償却費が年間40万円計上できると仮定すると、課税所得はマイナスになり、所得税と住民税が合わせて10万円減るケースもあります。さらに年間元金返済額は約40万円なので、キャッシュは軽微なマイナスでも資産は着実に増加します。つまり見かけの損益と実際の財布事情は異なるため、キャッシュフロー表と損益計算書の二つを並べて判断する癖をつけましょう。
また将来の出口として売却益を考える場合、築25年時点の想定価格を事前にリサーチすることが欠かせません。不動産テック会社のAI査定では、同エリアの築25年マンションが平均1,600万円で取引されています。この価格と残債を比較し、売却時にいくら手元に残るか逆算しておくと長期の収益設計が明確になります。
リスク管理と失敗しないポイント
実は利益を最大化するより、損失を最小化する視点が長期投資では重要です。リスクを定量化し、備えるほど安定収益に近づきます。
まず空室リスクは立地と物件競争力で大きく変わります。人口減少が続く地方圏でも、大学や工業団地が集積するエリアなら需要は底堅いものです。統計的には、最寄り駅から徒歩10分圏と15分圏では平均入居期間が1.3倍違うという国交省の調査があります。駅距離は家賃に直結するため、多少価格が高くても駅近を選ぶ方が安全です。
次に金利上昇リスクです。2025年時点で変動金利は歴史的低水準ですが、日本銀行がマイナス金利を解除した場合、金利が1%上がれば毎月返済額は試算例で約1.1万円増えます。この負担増に耐えられるよう、繰上返済用のプール資金を家賃の半年分ほど確保しておくと安心でしょう。さらに固定と変動を組み合わせるミックスローンも選択肢です。
短期的な修繕費や長期修繕計画も見逃せません。築20年を超える物件では外壁補修が必要になるケースが多く、100万円単位の出費が発生します。区分マンションであれば修繕積立金の残高と計画を確認し、積立不足がないか必ずチェックしましょう。逆に積立金が潤沢な管理組合は、物件全体の資産価値維持に積極的で、長期的な空室リスクを抑えられます。
2025年度の制度と市場動向
まず2025年度の税制面では、投資用不動産の減価償却や青色申告による65万円控除が引き続き有効です。制度変更はなく、経費計上による節税戦略はこれまで通り活用できます。また固定資産税についても、賃貸用住宅に関する特例は現行のまま継続見込みと国税庁が公表しています。
金融面では、全国銀行協会が公表する平均金利によると、投資用ローンの変動金利は1.5〜2.0%、固定10年は2.5〜3.0%で推移しています。日本銀行は2025年11月の会合で大規模な金融緩和を維持する方針を示しており、急激な金利上昇は短期的に考えにくい状況です。そのため、変動金利を選ぶ投資家が増えていますが、物価上昇率も連動しているため長期保有の場合は固定金利でリスクを抑える選択も合理的です。
不動産価格は、総務省の不動産価格指数によると2025年第3四半期まで全国平均で前年同期比3.2%上昇しました。インフレヘッジの観点から現物資産への需要は根強く、賃貸需要も大都市中心に堅調です。ただし地方圏では二極化が進み、空室率が20%を超えるエリアもあります。投資判断では全国データではなく、ピンポイントの地域統計を確認する習慣を持ちましょう。
このように制度と市場を総合的に把握すると、ローンを活用しても致命的なリスクは限定的だとわかります。むしろ低金利を味方につけ、インフレ局面で元本を目減りさせる戦略が功を奏するタイミングと言えるでしょう。
まとめ
本記事では、不動産ローンが本当に儲かるのかを家賃収入・元金返済・減価償却の三本柱から検証し、キャッシュフロー計算の具体例で数字を示しました。重要なのは利回りの表面だけでなく、空室や金利上昇といったリスクも数値化し、複数の金融機関を比較したうえで余裕ある返済計画を立てることです。自分の目的とリスク許容度を明確にし、制度や市場動向を定期的にアップデートすれば、不動産ローンは資産形成の強力な味方になります。まずは小規模でもいいので試算表を作り、具体的な数字と向き合うことから始めてみてください。
参考文献・出典
- 全国銀行協会 – https://www.zenginkyo.or.jp
- 国土交通省 不動産価格指数 – https://www.mlit.go.jp
- 総務省統計局 人口推計 – https://www.stat.go.jp
- 国税庁 タックスアンサー – https://www.nta.go.jp
- 日本銀行 金融政策決定会合資料 – https://www.boj.or.jp