年収1500万円を超えると、手元に残る可処分所得も増え、資産形成の選択肢が一気に広がります。しかし、株式や投資信託だけではポートフォリオが偏り、税負担も抑えにくいと感じる場面も少なくありません。そこで注目されるのがアパート経営です。家賃収入という安定キャッシュフローを得ながら、節税や相続対策まで視野に入れられる点が魅力になります。本記事では、高所得者がアパート経営で押さえておくべき最新情報と実践ポイントを丁寧に解説していきます。
高所得者がアパート経営を選ぶべき理由

ポイントは、年収1500万円以上の立場だからこそ享受できる“金融・税務・資産保全”の相乗効果が大きいことです。ここでは三つの視点から具体的に見ていきます。
まず資金調達面を考えると、安定した高年収は金融機関の評価が高く、低金利かつ高額融資を引き出しやすくなります。2025年10月時点で都市銀行のアパートローン金利は1.3%前後が主流ですが、属性が良いと0.9%台の提示を受ける事例も珍しくありません。金利差0.4%は30年返済で数百万円の差に直結するため、高所得者の信用力は強力な武器になります。
次に所得税・住民税の軽減効果です。不動産所得は収入から減価償却費や経費を差し引けるため、給与と損益通算して課税所得を圧縮できます。特に木造アパートでは償却期間が22年と短く、初期数年は大きな非課税メリットが出やすい点が魅力です。
さらに相続対策としての効力も見逃せません。建物の相続税評価額は固定資産税評価額をもとに決まるため、実勢価格の3〜5割程度に下がることが一般的です。高額な金融資産を現金で持つよりも、アパートに組み替えるだけで評価額が圧縮され、将来の相続税負担を大幅に抑えられます。
まず押さえておきたいリスクとその対策

実は、収益性の高さだけに目を奪われると落とし穴にはまります。アパート経営には空室、資金繰り、災害という三大リスクが存在し、それぞれに対策を講じることが欠かせません。
空室リスクについては、国土交通省住宅統計によると2025年10月の全国アパート空室率は21.2%(前年比-0.3%)でした。数字だけを見ると依然として高いものの、地域差は大きく、都心部では10%を切るエリアもあります。つまり、立地選定と入居ニーズの調査を徹底することでリスクを大幅に縮小できます。
資金繰りリスクへの備えとして、初年度の家賃収入の6か月分を運営予備資金として確保しておくと安心です。また、固定金利と変動金利を組み合わせるミックスローンを選択すれば、金利上昇局面にも柔軟に対応できます。
最後に災害リスクです。火災保険・地震保険はコストを惜しまず補償内容を拡充し、併せてハザードマップを確認してから物件を選ぶことが肝要です。保険料は経費計上できるため、支払負担よりも保障範囲を優先したほうが長期的には安全度が高まります。
成功に直結する物件選びの視点
まず押さえておきたいのは、表面利回りだけではなく“実質利回り”で判断する姿勢です。経費や税金を差し引いた手残りキャッシュこそが投資成果を決めます。
立地面では、駅徒歩10分以内かつ20〜40㎡程度の単身者向け間取りが堅実です。人口動態をみると2025年も単身世帯は増加傾向にあり、とりわけ中核都市の駅近物件は長期にわたり需要が底堅いといえます。一方で郊外の大型ファミリータイプは初期投資こそ割安ですが、将来的な空室リスクが高まる可能性があるため慎重に検討しましょう。
建物構造では、木造と鉄骨で償却期間が異なります。木造は短期で大きな減価償却が取れますが修繕サイクルも早い点がデメリットです。鉄骨造は建物寿命と賃料安定性に優れるものの、初期費用が高く利回りが下がりやすい傾向があります。つまり、節税重視か長期安定重視かで最適解が変わるため、自身の投資目的を明確にしておく必要があります。
加えて管理会社の選定も無視できません。入居募集、家賃回収、原状回復の質は運営成績を左右します。管理委託手数料は家賃の3〜5%が相場ですが、単に安さで選ぶとサービス品質が伴わず、結果的に高くつくケースが多いので注意が必要です。
2025年度の税制と融資を活用するコツ
ポイントは、現行制度を正しく理解し、“制度×資金”の両輪で収益を底上げすることです。2025年度も個人不動産所得に対する青色申告特別控除(最大65万円)は継続しており、複式簿記による帳簿付けとe-Tax申告を行えばフルに活用できます。
さらに損益通算ルールは2025年度も大きな変更がなく、給与所得と不動産所得の赤字を相殺できます。ただし、赤字幅が大きすぎると税務調査リスクが高まるため、修繕費の計上タイミングや減価償却方法を税理士と相談し、適切な帳簿管理を徹底しましょう。
融資面では、日銀が長期金利の誘導目標を0.5%前後に維持している影響で、2025年12月時点でもアパートローン金利は歴史的低水準が続いています。高所得者は個人名義か資産管理会社名義かを選べる点が強みです。個人名義は損益通算の効果が大きく、法人名義は累進課税の影響を抑えられるため、税率シミュレーションを行い最適なスキームを選択すると良いでしょう。
なお、固定資産税の新築住宅軽減措置は賃貸用アパートでも2〜5年間適用されるため、完成後のキャッシュフローが向上します。適用条件は床面積40〜280㎡など細かな規定があるので、設計段階で行政窓口に確認しておくと安心です。
長期安定運営を実現する管理戦略
重要なのは、購入後の運営フェーズに時間と資金をしっかり投入する姿勢です。購入時の利回りが高くても、管理が疎かになれば利回りは簡単に低下します。
入居者満足度を高める小規模リフォームは費用対効果が高い施策です。例えば、Wi-Fi無料設備やスマートロックを導入すると、家賃を3000円上げても即日で満室になった事例が多く報告されています。年間3万6000円の家賃増は利回り向上に直結し、設備費用も数年で回収可能です。
また、家賃改定は定期的な市場調査が肝心です。近隣の募集賃料を半年ごとに確認し、1%でも強気の設定を続ければ複利効果で収益が伸びます。逆に空室が長引けば期間限定でフリーレントを付与するなど、攻めと守りのバランスを保つことが長期運営の鍵になります。
最後にデジタル活用です。クラウド会計ソフトとオンライン管理システムを連携させれば、家賃入金から帳簿作成まで自動化できます。書類整理の手間が減るぶん、物件の改善策や次の投資機会の検討に時間を割けるようになります。
まとめ
この記事では、年収1500万以上の方がアパート経営を検討する際に知っておきたいメリット、リスク、物件選定、税制・融資、そして管理戦略まで一気に整理しました。高年収の信用力を生かして低金利融資を引き出し、損益通算や青色申告特別控除で税負担を抑えることで、キャッシュフローは大きく改善します。さらに、空室対策や積極的な設備投資を継続すれば、長期的に資産価値と収益を同時に高められます。まずは自分の投資目的とリスク許容度を明確にし、専門家と相談しながら一歩を踏み出してみてください。安定収入と資産形成の両立が見えてくるはずです。
参考文献・出典
- 国土交通省 住宅統計調査 2025年10月速報版 – https://www.mlit.go.jp
- 国税庁 タックスアンサー No.2074 青色申告特別控除 – https://www.nta.go.jp
- 日本銀行 金融システムレポート 2025年10月 – https://www.boj.or.jp
- 総務省 人口推計 2025年7月確定値 – https://www.stat.go.jp
- 全国銀行協会 アパートローン金利動向 2025年12月 – https://www.zenginkyo.or.jp