はじめてのマンション投資ほど悩ましいものはありません。頭金はいくら必要なのか、どこで物件を探すのか、毎月の家賃収入は本当に入るのか。情報があふれるいま、要点を絞って学ばなければ時間もお金も無駄になります。本記事では「マンション投資 何から始める」という疑問に寄り添い、資金計画から制度活用まで流れに沿って解説します。読み終えるころには、最初の一歩を自信をもって踏み出せるはずです。
マンション投資の全体像をつかむ

まず押さえておきたいのは、投資の流れを俯瞰することです。購入から運用、売却までの各段階には関係者も費用も異なり、順序を誤ると利回りが大きくぶれます。一般的なステップは次のとおりです。
- 目標設定
- 物件選定
- 資金調達
- 購入契約
- 運用管理
- 売却判断
この六つの流れを頭に入れると、どの段階で何を学ぶべきかが明確になります。たとえば運用管理の前に賃貸需要を調べておかなければ、空室リスクを後から補うのは難しいのです。
実は、最初に決めるべきはゴールの金額と期間です。月五万円の手取りを十年続けたいのか、それとも十五年後に売却益を狙うのかで、選ぶエリアも間取りも変わります。目的が定まれば、インターネット上の膨大な物件情報も必要な条件で絞り込めるようになります。
最新の市場動向にも目を向けましょう。不動産経済研究所の調査では、二〇二五年十二月時点の東京二十三区新築マンション平均価格は七千五百八十万円で前年比三・二%上昇しています。価格が伸びる局面では利回りが下がりがちなため、物件価格と家賃相場のバランスを丁寧に比べる姿勢が重要になります。
自己資金と融資の基本をおさえる

ポイントは、自己資金と融資の割合を意識的に決めることです。自己資金を二割以上入れれば返済負担は軽くなりますが、その分レバレッジ効果は薄まります。逆に自己資金一割以下で融資比率を高めれば、手持ち資金を温存しながら複数物件へ広げられる一方、金利上昇への耐性が下がります。
金融機関は物件評価と本人の属性で融資条件を決めます。会社員であれば勤続年数三年以上、年収四百万円以上が一つの目安とされていますが、近年は副業収入や投資実績も評価に含まれるケースがあります。融資審査前に確定申告書や源泉徴収票を整理し、提出書類の不備をなくすだけで金利が〇・一%下がることもあります。
金利タイプは固定か変動かで迷う人が多いでしょう。二〇二五年十二月時点で大手銀行の変動金利は〇・三七%前後、十年固定は一・〇%前後が一般的です。変動は低金利の恩恵を受けやすい一方、長期金利の上昇局面では返済額が跳ね上がります。シミュレーションでは、金利が二%上がってもキャッシュフローが黒字か確認しておくと安心です。
さらに、諸費用の準備も忘れないようにしましょう。登記費用、仲介手数料、金融機関事務手数料、火災保険料などで物件価格の七〜一〇%が目安です。十分な貯蓄がないまま購入すると、突発的な修繕で資金繰りが詰まります。つまり、自己資金と諸費用、さらに運転資金の三層構造で資金計画を立てることが、長く安定して保有するコツなのです。
立地と物件タイプの選び方
重要なのは、賃貸需要が落ちにくい立地を見極める視点です。都心ターミナル駅まで三〇分以内の駅徒歩七分圏は、転勤族や単身者の安定需要があります。郊外でも大学や工業団地が集まる地域なら、学生や法人契約が期待できます。人口推移や開発計画を自治体の公式サイトで確認し、将来の入居者像を具体的に描くとイメージがブレません。
物件タイプは、新築と中古、ワンルームとファミリーの大きく四通りに分けられます。新築は設備が最新で入居募集がしやすい半面、価格が高く利回りは低めです。中古は利回りが高いかわりに修繕が発生しやすく、リフォーム費用を見込む必要があります。ワンルームは空室リスクが低いものの家賃上昇が限定的で、ファミリータイプは賃料が高い一方、入居期間が長く安定します。
具体例として、築八年の都内ワンルーム三千万円を年利〇・四%で三十五年ローン利用すると、年間返済は約百三十万円です。家賃が月八万円なら年間九十六万円、管理費や固定資産税を差し引くと赤字になります。この赤字を避けるには、価格を二千五百万円以下に抑えるか、家賃を九万円以上取れる駅近物件を選ぶ必要があります。数字で確認すると、立地と価格の妥当性が見えてきます。
また、管理会社の選定も立地と同じくらい大切です。管理が悪いと共用部の清掃が行き届かず、募集時に内見者が離れます。管理委託料は家賃の三〜五%が一般的ですが、家賃回収率やクレーム対応時間などの実績を事前に聞いておくと安心です。物件そのものだけでなく、管理体制を含めた総合力で入居率を高める発想が欠かせません。
キャッシュフローを読むコツ
実は、キャッシュフローが黒字でも手元に現金が残らないことがあります。原因は税金と修繕費のタイムラグです。決算上は減価償却で赤字でも、現金収支はプラスという逆の現象も起こります。このズレを理解するには、損益計算書と資金移動表を同時に確認する習慣が役立ちます。
家賃収入から管理費、修繕積立金、ローン返済、固定資産税、火災保険料を引いた残りが年間キャッシュフローです。たとえば年間家賃百二十万円、経費二十万円、返済七十万円、税金五万円なら、残りは二十五万円になります。ここに突発的な給排水トラブルが来れば、一度に三十万円が飛ぶことも珍しくありません。
そのため、家賃収入の一〇〜一五%を「修繕予備費」として別口座に積み立てておくと安全です。預金利率が低い現状でも、流動性を優先して普通預金に置く方がトラブル時の対応はスムーズです。また、家賃送金日とローン引き落とし日のタイミングを合わせ、資金ショートを防ぐのも基本ですが軽視されがちです。
加えて、売却時のキャピタルゲインも早めにシミュレーションしましょう。日本のマンション価格はエリアにより方向感が分かれ、人口減少エリアでは築二十年を超えると価格が下落しやすい傾向があります。一方、都心再開発エリアでは築年数が経っても地価上昇が下落分を補う場合があります。つまり、保有期間をシナリオ別に分け、五年・十年・十五年後の売却想定価格を複数用意しておくと、出口戦略が格段に描きやすくなります。
2025年度に使える税制と制度
まず押さえておきたいのは、二〇二五年度の住宅ローン控除です。自ら居住する住宅向けの制度ですが、将来の住み替えを視野に自宅を投資用に転用するケースでは影響が出ます。控除期間は最長一三年、借入残高の一%が所得税から控除され、住民税からも一部控除される仕組みです。住居用として取得後、賃貸へ切り替える際は控除が打ち切られるため、タイミングが重要になります。
投資用マンションの取得に直接使える補助金は限定的ですが、減価償却や修繕費の経費計上は大きな節税手段です。国税庁の通達では鉄筋コンクリート造の耐用年数は四十七年とされ、新築なら四十七年、築二十年なら残り二十七年で償却します。減価償却を活用すれば、賃料収入を圧縮し、結果として所得税と住民税を抑えられます。
二〇二五年度税制改正では、青色申告特別控除六十五万円の適用要件として、電子帳簿保存と電子申告が必須となりました。投資家がこの控除をフルに受けるには、会計ソフトで帳簿をつけ、電子で確定申告を行う必要があります。導入コストは一万円程度のクラウド会計で十分ですから、早期に整備すると節税効果が確実に得られます。
なお、法人設立による節税も視野に入れる読者がいるかもしれません。法人税率は所得八百万円以下で一五%前後、個人の高所得税率と比べて低い水準です。ただし設立費用や社会保険加入など固定費が増えるため、年間所得が七百万円を超えた頃から検討するとバランスが取りやすいでしょう。税理士に事前相談し、個人と法人のシミュレーションを比較する姿勢が不可欠です。
まとめ
ここまで、マンション投資 何から始めるかを資金計画、立地選び、キャッシュフロー管理、税制の四つの視点で整理しました。最初にゴールを決め、自己資金と融資の割合を固め、需要が落ちにくいエリアで数字が合う物件を選ぶ。この流れを守れば、二〇年先まで家賃が途切れない資産を築けます。次の休みには住宅地図を片手に街を歩き、家賃相場と利回りを自分の目で確かめてみてください。その行動が、将来の不安を小さくし、経済的自由への扉を開く第一歩になるはずです。
参考文献・出典
- 不動産経済研究所 – https://www.fudousankeizai.co.jp
- 国税庁 – https://www.nta.go.jp
- 国土交通省 不動産価格指数 – https://www.mlit.go.jp
- 住宅金融支援機構 住宅ローン金利情報 – https://www.jhf.go.jp
- 総務省 統計局 人口推計 – https://www.stat.go.jp